白線上の営業部長

 

またもや近所に住んでる友人と、ちょっと出かけて来た。
と言うか、概ね何処か出かけるならこの人としか出かけてない気がする。
なんか他の人と出かけるのも面倒臭くて。

それはともかくちょっと出かけてた。

『あ、お金下ろしてくるの忘れてたわ』

と、言い出した友人は、近くに銀行ATMが有ったのでそこに立ち寄った。
私はちょい離れた所の木陰のベンチに座って一休み。
暑いから。

ぼんやりと座ってると、何やら近くからブツブツ言ってる男性の声が聞こえて来た。
何だろう?
と思い見回してみると、柱の陰のベンチに座る男性の声だと言う事が解った。
双方から死角となるので、身を乗り出して覗き込まないと見えないのだが、それが男性で有りその声の主で有る事は解った。

『オレはぁ!空だってぇ!飛べるんだぜぇ!ウェイウェイ』

とか、なんかそんな類の事をブツブツと言ってる、って言うか歌ってるのがその男性だって事は解った。

やばい、なんかラップ歌ってる。
一人だと思ってラップ歌ってる。
やばい。

全然知らない人なので、別に彼の心が砕け散ろうと知った事では無いのだけど、なんか気を使うので知らない振りしながら、そのベンチを静かに離れたのだった。

『貴様!聴いたなぁ!!!』
と叫びながら追いかけられたら困るし。

以前勤めてた時、帰り道に取引先の営業部長と良く一緒に成った。
年齢は50代後半って所な、その取引先の部長さん。
具体的に何処に住んでるかって話した事は無いので知らないけれども、お互い同じ沿線に住んでるんだろうって事は解る。
月に何度と無く姿を見かけてるんだから。

取引先と言うか、協力会社と言うか、平たく言えば下請け企業。
パワーバランス的には私の会社が上。
そりゃそうだ、その部長さんの会社の生殺与奪は私の勤める会社が握ってるのだから。
もっと言えば、年間の契約の半分以上を左右する権限を持つのが私。
パワーバランスなんて言うまでも無い。
ハート様と海のリハクくらいのパワーバランス。

もし私がマスコミ関係者ならば、今から飲みに行くから後で店まで車で迎えに来い。
と、特に何と思う事無く普通にそんな台詞が出てくるのだろうけど、私はいたって普通の善良な民間人なので、なんか気を使うから何時もちょっと離れたポジションを取ってたのだ。
見つかったら部長さんも気を使うだろうし、私も気を使う。
仕事が終わったんだから、お互い気付かない振りするのが一番だ。

ある日、その部長さんの少し後方、人ごみにまみれながら静かに知らん顔しながら歩いてると、ふと気付いた事が有ったのだ。
エッチな店に通ってるとか、そんな事は無くて、ちょっとした事に気付いたのだ。
それは、この部長さん、常に線の上を歩いてるって事を。
頑なに、ただただ頑なに線の上を歩いてるって事を。

路肩歩く時は路肩の白線を。
もしくは視覚障害者誘導用ブロックの上を。
タイルの敷かれた床ならその継ぎ目、或いはライン状に配置された色違いのタイルの上を。
駅のホームは勿論白線の上を。

白線上の営業部長

死ぬの?
落ちたら死ぬの?
落ちたら死ぬごっこしてるの?

と、ニヤニヤしながら聞きたかったけど止めておいた。
吉田戦車の漫画じゃ無いのだから、そんな事は実生活では中々に聞けない、そして聞いちゃいけないと思う。
本気で死にかねないなので、50代後半の営業部長にそんな事聞いちゃダメだと思う。

だからそんな人を見つけても聞かないであげて欲しいと思う。
そっとしてあげて欲しいなと。

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