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実は見た目ほど怒ってない

 

ある冬の夜、ご近所でちょっとした事件が有った。
まぁちょっとした事件。

どうと言う事の無い、別にお巡りさんも眼鏡の少年も呼ぶまでも無い程度の出来事。
でもちょっとした事件。

でもご本人は結構怒ってるみたいな。
ちょっとプリプリ怒ってるみたいな。

と言う訳で、何が有ったかはさておき、そのちょっとした騒動の現場に特に関係無い私が呼ばれたのだ。
風呂上り、大体何時も一緒の事してる自動車レストア番組を見ながらボケーっとしてるとご近所さんから呼び出されたのだ。
何の為?
さぁ?
私に聞かれても困るわ。

 

共感したいとか、気持ちを解って欲しいとか、慰めて欲しいとか、まぁそのような心境なのだろうと思う。

『指切った』

と、血がダラダラ流れてる写真を撮ってツイッターにアップするのと、概ね似たような心境なのだろうと思う。
ん、まぁ概ね。

『指切った』で検索したら、生々しい写真が一杯出てくるが、実は私の知り合いの一人もそんな事をやってた過去が有ったりする。
止血もせずに、そこらを血まみれにしながら当時ミクシィだったかブログだったかにアップしてた人が。
お母さんにえらい怒られたらしいので、そんなご馳走チャンスに巡り会えたとしても、それはそれとしてさっさと止血して欲しいと思う。
言ってくれたら後で慰めたり、いいね!と言いながら傷口を押してあげるから取り合えず止血しよう。

と、話は戻って冬の夜にその事件現場へと集まったのだ。
ご近所の何名かでこの寒い中。

皆、一様に口にする憤りの言葉。
全然関係無いのだけど、皆一様に口にするのは憤りの言葉だ。
何が有ったかは伏せておくけど、ともかくご近所の皆様は一様に憤っておられる模様。

きっとそれが正しいリアクションなんだろうと思う。
何か不幸に見舞われた人に対して、かけるべき言葉は共感と慰めの言葉だろう。
この場でお説教なんて誰も求めてないのだから。
本人に過失が有ろうと無かろうと、そんな事は第三者には何の関係も無いのだから。
仮に余所見しててドブに落ちたとか、仮に鍵着けっぱなしにしててバイク盗まれたとか、そんな致命的過失が有ったとしても、第三者がそれをとやかく言うのはお門違いなのだ。

求めるのは共感と慰めの言葉だけ。
正論を振りかざしたお説教なんて求めていない。
だから掛けるべき言葉は共感と慰めの言葉だ。

それがまともな生き方してきたまともな人間の生き方だろう。
仮に余所見しててドブに落ちたと聞かされても、余所見してたお前が悪い、なんて事は言うべきではない。
ご本人はそんなつまらない話は聞きたく無いのだから。

自業自得、なんてのは当事者である自分が自分自身の愚かな行動を省みて思う事であり、何の関係も無い第三者が投げかけるような言葉ではないのだ。
少なくとも打ちひしがれてる人に頭の上から投げつける言葉ではない。

少なくとも私は、余所見しててドブに落ちて入院した人間に、鼻ほじりながらそりゃお前が悪いで、とは言わないし言えない。
この世の5人程は思った事を有る程度のレベルまでは平気な顔して言い合える仲の人間も居るが、少なくともご近所さん相手にそんな事は流石に言えないな。
ドブに落ちた人をさらに深い淵へと突き落とすような事は言えないわ。
って、別に誰もドブに落ちてないんだけど。
そもそもドブなんて無いし。

 

皆、一様に口にする憤りの言葉。
何が有ったかは重ね重ねともかくとして、皆一様に口にする憤りの言葉。
当事者を除いて誰も全然関係無いのだけど、皆一様に口にするのは憤りの言葉だ。
勿論私も、特に何の関係も無いんだけど、憤りの言葉を発してみるのだった。
特にそんなに怒っちゃいないんだけど。
何も関係無いし。

私は意外と空気を読む人間だったりする。
だから程ほどにその場の空気に馴染む発言をしてたのだが、ふと私のすぐ近くに停められた大きな車の大きなバックミラーに映る自分の姿を見て、ハッとした。

凄い湯気出てるの。
頭からもくもくと湯気が立ち上ってるの。
ライトに照らされながら、真っ白な湯気がモクモクと立ち上ってるの。
まるで何処かの火山のように。

なんせ呼ばれたのは風呂上り直後、コーヒー牛乳飲みながらホケーっとしてる最中。
頭はまだホッカホカな状態で寒い冬の夜に呼び出されたもんだから、そりゃ湯気も上がるわ。
トキワ荘時代の漫画に出てくる怒った人みたいに成るわ。

やだ!見ないで、アタシの湯気を見ないで!
アタシのボルケーノをいやらしい目で見ないで!

誤解を与えたかも知れない。
何も関係無いのに私が激怒してると、ご近所の方に誤解を与えたかも知れない。
頭から湯気をポッポポッポ噴き出す位に激怒してると思われたかもしれない。

だが私は言っておきたい。

実は別に何も怒ってないっすよ、って事を。
そして、仮に物凄く怒ったからと頭から湯気噴かないっすよ、って事を。
そんな藤子不二雄の漫画みたいに頭から湯気は噴かないっすよって事を。

ご近所さんにその点誤解しないようにキッチリ言っておきたいなと、そんな気持ちを抱えつつオツムが大噴火する私。
別に怒ってないけど。

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