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俺の歌を聴け

 

何度か適当に書いた事は有るけれど、実は幼少の頃より書道をしていたのだ。

書道を教わってたのは、その筋では割と高名な先生。
俵越山先生とは、またちょっと違う、でも割と高名な先生。
幾ら先生が高名と言えど、教わってる人間が....なのはまぁともかくとして。
そう言えば最近は筆ペンすら握ってない。

そんな書道の先生の親類縁者に、三味線の先生が居たりする。

そう言う一族なんだろうと思う。
日々を汗水垂らしながら必死に生きてる身からしたら結構なご身分に映るけれど、本人はそれはそれで中々大変な訳だ。
三味線弾いて生きていくのは中々に大変だ。
副業で殺し屋をやってるかどうかは知らないけれど。

そんな三味線の先生。
特に深い意味は無いけど、おりくさんとしておく。

現在、ちょっと遠い所に住んでるこのおりくさん。
仕事で大阪に出てくるとの連絡を受けたのは、まだ御堂筋の銀杏が色づく秋の頃の事。

『久しぶりに食事でもしましょうか』

そんな話に成り、二つ返事で出向いた大阪、淀屋橋。
車で行こうか?等とも思いつつも、やっぱ大阪は電車の方が何かと安心。
流石にバイクで行く選択肢は無い。

 

私鉄から地下鉄に乗り換え、着いた所は淀屋橋。

駅から出て、秋模様の御堂筋へ。
すると、丁度そのタイミングで、北の方から真っ赤な車が一台やってきた。
見覚えの有る真っ赤な初期型ユーノスロードスター。
そして、その車を駆る見覚えの有る顔。
和服姿の女性。
おりくさん。

まだ乗ってたんですか?
って言うかロードスターで大阪まで来たの?
高速を何時間もの道のりを和服で??
相変わらず訳の分からない人だ。

とか思いきや、流石に運転中は洋服に着替えるらしい。
着替えるって言うか、普段は普通におばちゃんの格好してる。
この日は仕事上和服を着てただけで、これが日常な訳じゃ無い。
ああ、そりゃそうか。

小さなボディで二人乗りのロードスターだけど、意外と荷物が乗せれる優れたデザイン。
一人なら、少々の荷物でも全然大丈夫。
普通は。
三味線なんか車に積んでない、普通の人なら。

もうね、凄い荷物。
小さなロードスターに、三味線がなんか知らないけど3つ。
三挺って言うのが正解か。
ともかく、ロードスターに三味線が三挺。
ケースに入ってない、裸の三味線が三挺。

三味線を裸で大丈夫なんですか?
と尋ねたら、楽天で買った合皮の安物だから別にどうでもイイんだってさ。
.....
ああ、楽天ですか、そうですか。
三味線も楽天で買う時代ですか。

ちなみに自分の持ち物の楽天では売ってない三味線は、ケースに入れてホテルに置いてるとの事。
まぁ、この中古のロードスターよりも確実に高いから、流石に裸で持ち歩いたりはしないみたい。

 

『ちょっと狭いけど乗ってよ』

と、ちょっと所では無い、三味線だらけの車へと。

ほんの数分だから、ちょっと我慢してくれ
三味線を引き渡したら荷物は減るから。
と、おりくさん。

なんでも、この淀屋橋の駅からちょっと走った所へ、三味線を届けに行く途中なんだとか。
この楽天で買った三味線を。

三味線のデリバリーまでやってんの?
とか思ったりもしつつ、まぁ色々と有るんだろうね。
三味線は、弾くだけが全てじゃ無いのだ。
弾く人から売る人から犬猫をアレする人から、まぁ色々と有る訳だ。
一口に三味線業界と言った所で。
副業で殺し屋をやってるかどうかは知らないけれど。

ちなみに何の事かは詳しく述べないけど、一般にお稽古用が犬で本番用が猫。
それぞれケンとヨツって呼ばれる。
基本はケンを使う津軽三味線みたいに必ずしもそうでも無いみたいだけど、一般にはそんな使い分けがされるとか。
何の事かはともかくそう言う訳なのだが、最近は合皮も多くなってるみたいな。

何かとデリケートな思想の人からも、やっぱり犬や猫より合皮の方が受け入れられやすいので、価格云々は別にしてこれからも合皮が伸び続けるんだろうと思う。
だから合皮の三味線がダメな訳では無く、これからも増え続けるのだろう。
合皮には工業製品故のメリットは有るのだから。
三味線自体が増えるかどうかは知らないけれどね。
ちなみに、全く三味線に縁も縁も無い私には、大して関係無い世界の話だったりする。

ほんの数分だから、ちょっと我慢してくれ、三味線を引き渡したら荷物は減るから。

私はロードスターの助手席で三味線を抱えながら、秋の御堂筋を走った。
秋の御堂筋を満喫したいからとフルオープンで。
周囲からは、何か変な物を見るかのような熱い視線を時に浴びつつ、秋の御堂筋を走るのだった。

俺の歌を聴け!!!

と、叫びたい熱いソウルを胸に秘めながら。

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