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その美容師は、爽やかな笑顔を振りまきながら私の顔面を蹴り砕いた

 

その当時の馴染みの美容室は2軒。
一軒はトークはそこそこで腕は確かな男前な兄ちゃんの居る店。

もう一軒は割と馴染みの店。
昔からの知り合いで、手よりも口を動かす方が多い人の店。

この日行ったのは後者のお店
ちなみにこの日ってのは、何年も前の話だ。
何年も何年も前に書いた話の使いまわしなのだから。
ついでに書いておけば、もう両方ともその店自体は無かったりする。
事情?
まぁ色々有るんだよ、色々と。

ともかくこの日行ったのは後者のお店。
オーナーは結構昔からの馴染みの人で、その昔はイベントやら撮影やらでヘアメイクしてた人。
関東に住んでた学生時代の頃、その類のバイトしてた頃から付き合いが有ったりした人で、生まれ故郷で有る関西に店を出して以来時折顔を出してたのだ。

顔出してた理由は、その店のカットモデルをやってたから。
関西に店を出してから、まぁ随分長い事。

『今年も夏用のカットモデルしてよ』

とオーナー。
確かにカット代は無料だが、勿論モデル代は無料だ。
セコい、セコいよスレッガーさん。
まぁこのセコさが、小銭溜め込んで大きな店を開店させた屋台骨なんだろうと思う。
小銭をバカにしたらアカンで。

 

あーだこーだ喋りながら私がモデルしてた過去の何枚かの写真パネルをペラペラと。
今回はどんなスタイルにしようかとか言いつつ。
何も変わって無いから使いまわしでイイんじゃ無いのとか言いつつ。

ちなみに高校生の頃から髪型は何も変わってなかったりする。
だから夏用も冬用も、基本的に何も変わらなかったりする。
どうしようか?なんて話する必要も無い位に何も変わらない。
もうコピペですわ。

あーだこーだグダグダ喋りながら、オーナーは奥から引っ張り出して来た過去のパネルをペラペラと。

『ああ、もうこのパネルは要らんな...』

と、若手スタッフのお姉ちゃんに処分するように指示出すオーナー。

『はい☆』

と、若手スタッフは夢と希望に溢れた眩しい笑顔を浮かべ、パネルを膝でバキっとヘシ折るのだった。
....
ちょっと待て!
人の顔を折るんじゃ無い!!
本人の目の前で人の顔写真をヘシ折るんじゃ無ぇ!!

ん、まぁ悪気は無いんだと思う。
どうせゴミだし。
どうせ捨てるパネルだし。
ゴミをへし折ろうと、それは全然問題は無いんだと思う。

でも本人の目の前で本人の顔写真をヘシ折られたらちょっとカチンと来るので、接客業の人間としてはその辺りのデリケートな気持ちを学んで頂ければと、ちょっと願う。

就業後のオフィスで、私のマウスを舐めると言うド変態行為に及ぶ○○君に対しても平静を装い接する事の出来る割と精神力は強い方だと自負する私でも、顔を真空跳び膝蹴りされたらカチンと来るさ。
流石のガンジーでも、目の前で自分の蝋人形に尻に火を着けられたらカチンと来るだろう。
ちょっと待てよ!と、立ち上がるだろう。
伝説のガンジス・スープレックスが火を吹く事だろう。
それと同じだ。
木戸修の試合のように常に冷静沈着で、吉良吉影のように常に心の平穏を願ってる私でもカチンと来るのだよ。

 

まぁそんな事も有りつつ、カットとスタイリングをチャチャっと終えて、併設されてる撮影ブースで....って、そんな大袈裟な設備でも無いけど、ともかく撮影を済ませての帰り。
チャチャっと、とは言っても時間は掛かる物で、すっかり夜も遅く成り程なく迎えた閉店時間。

『んじゃぁまたね』

と、結局この日も1円もくれなかったケチなオーナーに適当に挨拶済ませて店を出て、駅の方へと歩みを進めた、とその時。

『あ、お疲れ様です!今日は有難うございましたぁ☆』

と、弾けるような笑顔で、ハキハキと挨拶する女の子の声。
ふと見ると、さっき私の顔面を真空跳び膝蹴りでヘシ折った人。

『またお越し下さーい☆』

彼女は、閉店時間にも関わらず、キラキラと輝くような笑顔で挨拶をしながら店の裏手のゴミ置き場に、何やら板状の物を蹴り入れて居たのだった。
何やら凄く見覚えのある顔がプリントされた写真パネルを。
ついさっき、膝で叩き割った写真パネルを。

小さなゴミ捨て場スペースだったので、パネルは足で押し込まないとハミ出して来るんだろうね。
ヘシ折った所でハミ出してくるから、ケリ入れてやらなきゃダメなんだろうね。
路上にゴミが散らばったら迷惑だから、ちゃんと奥まで押し込んでおかなきゃダメなんだろうね。

私はそんな事は全て理解した上で思う。
私はそんな事は重々承知した上で思うのだ。
蹴っ飛ばしたろかと。

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