止めといた方が良いよと薫殿はかく思う

実は私、幼少の頃から書道をしていた。
していた、と書いたように、もう何年も筆は握ってない。
学生の頃は結構な頻度で筆下ろししてた私だが、ここのところはとんとご無沙汰。
ヘチマのようにゴン太の筆から、ベビーコーンのような可愛い筆まで握り倒してた私だが、ここ最近はとんとご無沙汰。

 

で、その書を教えて頂いてた人。
師匠、と呼ぶべき人が居て、その人に書道を教えて貰ってたのだけど、この人が本当に恐ろしい人なのだ。
もう滅茶苦茶怖い。

何度か吐きそうな程に、三日程うなされる位に怒られた事が有るのだが、その最も古い記憶は足で筆を持って字を書いてた時の事。
なんでそんな事をするのかと、改めて聞かれても適切な返答はしかねるのだけど、人ってのは時々理解に苦しむ行動を取ってしまうものなんだよ。
ソフトクリームをコーンの先っちょから食べて、溶けたクリームでベタベタに成ったりとか、そんな訳の解らない事をしてしまう物なんだよ。
止めといた方が良いのにと、自分も含めて誰しも思うけれども、それでもついついやっちゃう事は時に有るもんだよ。
そこに論理なんて無い。
何処にも。

で、理由は不明ながら足で字を書いてたのだけど、アレって当たり前だけど非常に難しい。
10年間必死に修行したら見事な字が書けるように成るのかも知れないけれど、これから頑張って血が滲むような修行したらちゃんと書ける様に成るかも知れないけれど、まぁ止めておいた方が良いと思う。
ジビエート二期に製作チャレンジするくらい、止めておいた方が良いと思うな。
おてんばが過ぎるわ。

 

六甲に行って来た。
ちょろっと六甲山へ。
今回は車で。
4人乗ったインプレッサでウッフキャッキャ言いながら。
なんか大学生みたいな事してるけれど、みんなまぁまぁイイ歳してたりするのは、まぁアレとしておこう。
わざわざ平均年齢を晒すのは止めておいた方が良さそうだ。

 

この日、わざわざインプで出かけたのは、友人の一人の運転練習を兼ねて。
運転練習と言ってもこの人は普段から普通に車に乗ってるのだけど、何十年かぶりにフロアシフトのMT車を購入する事に成ったので、その前にインプでちょっと練習しようか、と言う事で。
免許取得以来、MTなんてハイエースくらいしか乗ってなかったから。

 

操作は手でやるか足でやるか、だけの事。
普段バイクに乗ってるので、別にマニュアルだからとあーだのこーだの騒ぎ立てる必要は無い。
クラッチって何?
なんて事は言ったりしない。
だから普通に乗れるのだけど、まぁ一応ちょろっと練習しようか、と言う事で。
私の車じゃ無いんだけど。

 

国道をテレテレ走って、いよいよ六甲へ。
さくら夙川駅からえっちらおっちらと登り、東六甲から六甲山頂方面へ。
車で走るにはあんまり広くない道路をひた走り、六甲山頂を抜けて特に何事も無くガーデンテラスへ。

まぁでも乗りなれてないと中々に難しいもんだ。
普通に国道を走る分には問題は無くても、スピードは出さないにしても、六甲をスポーツ走行(笑)するなら、慣れないと中々に難しい。

両手でハンドル操作しつつ左手はギアチェンジ。
パドルシフトなんて付いてない。
右足はスロットルとブレーキ、左足はクラッチ。
九頭龍閃を撃つ程では無いものの、同時にあれこれやらなきゃ成らないので中々大変。
特に自動車は足を器用に使わなきゃ成らないので、慣れないと中々大変だ。

 

ガーデンテラスに行ったものの、特にジンギスカンパレスで厳選生ラムランチ2,200円をご馳走される事も無く帰宅。
帰りは表六甲。

六甲で一番凶悪な道、表六甲。
この凶悪な下りを、キツい前傾のバイクで下るのはかなりの根性が居る。
996はやっぱ私には向いてないよね、って事をイヤって程に思い知らされた苦い思い出の有るコースだ。

前傾のキツいバイクなら、下手したら前転するんじゃないかって恐ろしいコースだけど、車ならただのキツい下り坂。
安全に下ったら特にどうこうって話でも無い。
流石にでんぐりがえりする事は無いしね。

 

まぁまぁ恐ろしい表六甲を無事に下り、何やかんやで昼下がり。
昼食にはちょい遅いけれど、夕食にはちょい早い、中途半端な時間。

この日は中華。
六甲山頂に行ったのに、ジンギスカンじゃ無くて街の中華。
今回、インプでMT教習してた人が長年一人で行ってるらしい中華屋。
ここのお勧めメニューは八宝菜、もしくは中華丼。
皿に乗ってるかご飯に乗ってるかの違いだけど。
ハロワに割と近い事も有って、流浪人時代、要するに無職の頃から良く行ってたのだとか。

今やリッターバイクに加えて、3.5Lのフルサイズミニバンに5速MTのスポーツカーを買えるくらいに立派な生活してるけれど、流浪人だった頃から良く通ってたこの店は、今も良く行ってるのだとか。
別にやさぐれた人生をこの中華屋の親父に救われた、なんて気の利いたエピソードなんて無いんだけどね。
残念ながら。

 

何時もは小さなカウンターに座り、一人っきりで八宝菜を食べてる人斬り抜刀斎なのだが、この日は4人で八宝菜。

第一話ではちょっとぎこちなかった涼風真世が、あっという間に流石の実力を発揮したように、最初はインプの操作にちょっとぎこちなかった抜刀斎も、程なく普通に乗れるように成った。
バイク乗ってるし、MT免許も持ってるし。
MTの車はハイエースくらいしか乗った事無いとしても。
だからまぁ何も問題なんて無いさ。
昔のアルファロメオは別として、普通の5速MTを普通に乗るには何の問題も無いさ。
普通に乗るには。

 

ヒール&トゥ

抜刀斎から、そんな物騒な台詞が飛び出したのは、ツルツルしたお箸でチュルチュルしたうずらたまごを掴もうと格闘してる、横に座った斎藤君(仮名)の苦闘を横目でぼんやり眺めてる時の事。
やっぱ六甲を走るならヒール&トゥ出来なきゃ成らないかもね、とそんな物騒な台詞。

ヒール&トゥとは、ご存知のように自動車でのシフトダウンのテクニック。
ツゥ(つま先)でブレーキを踏みながら、ヒール(かかと)でスロットルをボフンと軽く煽って回転数を合わせるテクニック。
使う箇所は正しくはつま先でもかかとでも無いんだけど、ともかく右足でスロットルとブレーキの両方を操作する、かなりの器用さが求められるテクニックだ。

しかも左足はクラッチを操作し、左手はシフトを操作し、右手はハンドルを操作する。
九頭龍閃に匹敵するくらい、あれこれしなきゃ成らない。
コーヒー飲んだり、スマホを操作したり、ましてや皿回ししてる余裕なんて皆無だ。
それ位にあれこれしなきゃ成らない。

 

まぁバイクで普通にシフトダウン出来てるので、車でも出来るとは思う。
手を器用に使うか足を器用に使うか、ってだけの話だしね。
ただ、足で字を書くのが難しいように、足で操作するってのはこれが中々に難しい。
足で八宝菜を食べる程に難しくは無いにしても、少なくとも表六甲の下りではやらない方が良いと思う。
下手したら大惨事だしね。
両足のタイミングをミスって、ブレーキ踏まなきゃ成らない時にスロットルを踏み込んだら大惨事だ。
ガードレールを突き破って龍槌閃しちゃう。
だから最初は登り、スピードを出さなきゃあんまりブレーキ使わなくても済む登りで練習するべきだろうと。
トゥは忘れて、ブリッピングだけでシフトダウン時の回転数合わせが普通に出来るように。

 

ああ、まぁ止めておいた方が良いと思うよ。
少なくとも表六甲の下りでは。

私は、八宝菜をチマチマ食べながら、抜刀斎にそう静かに言うのだった。
ツルツルチュルチュルして一向に箸で掴めない事に業を煮やし、今にもうずらたまごに牙突を撃とうとしてる斎藤君を横目で見ながら。

 

止めといた方がイイよ。
六甲の下りでヒール&トゥの練習するのも、うずらたまごに牙突を悪・即・斬するのも
やっぱそれはちょっと止めといた方がイイよと言わざるを得ない。

 

CAR

Posted by tommy