ポルの行方

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かねてより噂の有ったロレンソのドゥカティ移籍。
もうかれこれ何年くらい言われてただろう。

ともかく、現在最強ライダーの移籍が遂に決まり、その居場所にはぽっかり穴が空いた訳だ。
つまり、早々に契約更新してたロッシの横の椅子がポッカリと。

本来、そこに入るべき男は決まっている筈だった。
スポンサー様にも心情穏やかなスペイン人ライダーが居た筈だった。

それはこの男。
エスパルガロ兄弟の弟、ポル・エスパルガロ。

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1ドルで楽しむべー

現在、黒いスーツ着て黒いYZR M1に乗るポルは、そもそもは青い方を乗ってる筈だった。
ブラッドリー・スミスとは少々事情が異なり、ポルの場合はヤマハと契約してテック3に乗ると言う立ち位置のややこしいライダーなのだ。

これがドゥーハン、岡田、クリビーレ時代のレプソルホンダみたいに、モビスターヤマハがレギュラーで3台のファクトリーマシンを出走させられる状況だったならば、何の問題も無く青い方に乗ってた事だろう。
何時の話してんだって位に前の話だけども。
現状としてはファクトリーのレギュラー参戦は2台と決まってるのでどうにも成らない。

ただ、そうは言っても、ロレンソの空きシートに最も近い位置に居た事は確かだろう。
がむしゃらに、朝の通勤ラッシュのようにがむしゃらに居場所を奪わなくても、さりげなくちょっと手を伸ばすだけで掴める位置に居たのは確かだろう。
なんせポルはヤマハのファクトリーライダー、と言っても大きな間違いでは無いライダーなのだから。
少なくとも、スズキやドカやホンダやその他サテライトライダーよりも近い位置に居た事は間違い無いのだ。

だがしかし。
だがしかしだ。

ロレンソの移籍が現実視されて以降、そしてドゥカティ移籍が決定されて以降、そこにポルの名前が挙がる事は無かった。
ただひたすらマーヴェリックマーヴェリックマーヴェリックマーヴェリック。
スズキ残留かも?
なんて心が揺れたら今度はペドロサ。
まさかのペドロサ。
さらにはイアンノーネなんて名前も出たり、アレックスリンスなんてルーキーの噂もメディアに流れたり。

結局、かねてより言われたとおりにマーヴェリック・ビニャーレスが来期はヤマハの青い方を乗る事と成った訳だが、結局の所は最後までその名前が挙がる事は無かったのだった。
ポル・エスパルガロの名前が挙がる事は。

ストーブリーグと言われる契約選手の移籍のお話。
他のモータースポーツにせよ野球やサッカーにせよ、次シーズンの契約話が持ち上がるのは、通常はシーズンを終えて自宅のストーブに火を着けた頃の事だ。

ただ、特に今年のMotoGPに関しては、開幕戦前にロッシの残留を発表した事がトリガーと成り、まだシーズン半分も終わってないのにバタバタと決定してしまったのだ。
さらにはアレックスロウズ、ジョナスフォルガーのMotoGP参戦決定と、スズキが唾つけたヨハン・ザルコ。
ブラッドリースミスを起用して参戦決定してるKTM。
非常に早く物事が推移している2016年の移籍市場。

そこにも名前が挙がる事は無かった。
ビニャーレスが移籍したら空いたスズキのシートにポルを
ペドロサが移籍したら空いたレプソルにポルを
ドゥカティは二人放出してロレンソとポルをコンビで

なんて話は一切、ホントに微塵も出てこなかったのだ。
もうね、さっぱり眼中に無いって感じ。

ヤマハとドゥカティは決定済み。
ホンダはペドロサ残留は決定してるが、マルケスの契約はまだ。
でも、マルケス放出してポルを入れようなんて血迷った事は考えないので、ほぼ間違いなく何のドラマも無く決まるだろう。
マルケスが電撃的にKTMに移ったらそれは超ビッグニュースに成るけど、幾らレッドブル成分が濃厚だと言ってもそれは無いだろう。
退職する中本さんと、パっとしない弟と、無職の親父と実家のお爺ちゃんまで丸ごと一切KTMが引き取るって条件なら心は揺れるかも知れないけど。
多分無いな。

ホンダは有り得ないとして残るファクトリーのシートは

最愛の兄との骨肉争いが必至なスズキ(1席)
バウティスタとブラドルが争うアプリリア(1席)
現チームメイトが移籍したKTM(1席)
残り3席。
ソールドアウト間近だ。

どれもこれも、あまり良い席では無いけど、残り物だから仕方無い。
少なくともMotoGPの空きシートの残り物に福なんて無いのだから。
その中ならスズキが一番良い席だけど、愛する兄貴との座席争いするのは気が引けるだろう。
おはようからおやすみまで、何ならベッドからトイレまで一緒にイチャイチャしてる兄貴とシートを奪い合うなんて出来ないだろう。
ってか、そもそもそのシートすら、アレックスリンスの名前が挙がってくる始末。
兄貴とて安泰ではない。

将来の為には3戦までにトップ3が必須だった。
カタール、アルゼンチン、アメリカと、序盤の3戦でほぼ移籍の流れが決まったと言って過言でない今年。

■開幕戦カタール■
FP3:7位
Q2 :9位
決勝:7位

■第二戦アルゼンチン■
FP3:12位
Q2 :10位
決勝:6位

■第三戦アメリカズ■
FP3:11位
Q2 :–
決勝:7位

序盤3戦のパっとしない成績が、ポルの現状を作ってると言って過言では無いだろう。
もっと言えば、開幕前のテストの段階から、キラリと光る物を魅せて居れば状況も変わったかもしれないが、この成績では如何ともし難い。
しかもマシンは、サテライトとは言っても昨年のチャンピオンマシン。
それでこの成績なら、青いのに乗ってもそれほど変わらんよなぁって意見が大勢を占めるだろう。

母国のスペインではFP3で3位を取り期待されたものの、その後の予選も決勝もパっとせず
続くルマンでは、FP3で3位、Q2では4位、そして決勝では5位と好成績を収めたものの、時既に遅し。
遅いよ、今更余りに遅すぎる。
開幕からこの成績なら、何なら序盤で表彰台に登ったりしたら話題にも挙がるだろうけど、YZR M1に乗ってQ1落ちしてるようじゃ如何ともし難い。

確かにインディペンデントライダー(ファクトリー以外のライダー)ではトップだけども、だから何?って感じ。
パっとしない事に大した違いは無い。

夏が終わり、シーズンの終焉が見えた頃に動き出す通常のストーブリーグなら、ロッシもロレンソもまだ契約のケの字も言って無い通常のストーブリーグならば、これから成績をガンガン上げていけばポルにもペトルッチにも大きなチャンスは有ったかも知れない。
イアンノーネにしてもドカに残る選択を取れたかも知れない。
バウティスタだってホンダ以外の何処かから来年も走れる確約が取れたかも知れない。

だが、残念ながら春には来年の事が決まってしまう気の早い今期のMotoGPの世界において、プレシーズンテスト~開幕3戦でパっとしなかったライダーは、その後どれだけ頑張ってもどうにも成らんのが現実。
この先全てのセッションにおいてビニャーレスを上回っても、もっと言えばこの先全てのレースにおいて優勝したとしても、今更ヤマハファクトリーに入れないのだ。
とても残念なお知らせ。

大きな可能性を魅せて存在感を如何なく発揮し、最大のチャンスをモノにしたビニャーレス。
良くも悪くも存在感を魅せつけ、ドゥカティからは出されたがスズキのファクトリーシートは手にしたイアンノーネ。

対照的に、プレシーズンテストでは大きく期待されたものの、肝心な所で怪我をして開幕数戦を棒に振った為、この先2年間をも棒に振ってしまったペトルッチ。
そして、チャンピオンマシン提供により期待されたが、最も大事な序盤がパっとしなかった為チャンスをモノに出来なかったポル・エスパルガロ。

ともかく最後のチャンスはこのムジェロ。
共にサテライトチームではトップクラスの両者。
念願のファクトリー入りは叶わなかったけれども、現状だけはどうにかこうにか死守出来るように、この最後のチャンスをモノにして欲しいと思う。
2年後のファクトリー入りを目指して。
2019年と、まだ随分先のファクトリー入りを目指して。

長い先の話だって?
そう、それだけ今期の序盤3戦は将来のキャリアに大きな大きな影響を及ぼす重要な3戦だったって事だ。

って言うかお兄ちゃんの首が心配だ。
とても心配だ。
どうする?スズキ?

MOTOR CYCLE

Posted by tommy