シンメトリー

”またもう一つ、これに似た遊戯を当時、自分は発明していました。それは、対義語アントニムの当てっこでした。黒のアント(対義語アントニムの略)は、白。けれども、白のアントは、赤。赤のアントは、黒。
「花のアントは?」
 と自分が問うと、堀木は口を曲げて考え、
「ええっと、花月という料理屋があったから、月だ」
「いや、それはアントになっていない。むしろ、同義語シノニムだ。星とすみれだって、シノニムじゃないか。アントでない」”

太宰治 人間失格より抜粋
https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/301_14912.html

 

synonym(同義語)
sympathy( 同情)
synchronize( 同時に)

このように、接頭辞=synが頭に着く単語は、同じ〇〇と言った意味を持つ。
synの異形で有るsy-,sym-, syl-,sys-,syr-も同じ。
そしてこれも。

symmetry
シンメトリー=左右対称、左右均整の意味。
symmetry=sym(同じ)+metry(寸法)がその成り立ち。

 

metryは、測るを意味する。

meter(メートル、メーター)
diameter(直径)
geometry(ジオメトリー)

等々。

 

シンメトリーな建物では、日本では10円玉でお馴染みの京都は宇治の平等院が有名だろう。
世界を見回しても数多く、タージマハルやホワイトハウスなど、世界各地にシンメトリーは採用される。
多くの人に取って、直感的に美しいと思えるデザインなんだろう。
左右対称、シンメトリーは。

だがシンメトリーは、一見そうに思えてもこれが思いのほか少ない。
例えば人間の顔。
左右対称に思えて、これが意外なほどに左右は対称では無い。
鏡に映る自分の顔と、写真に写る自分の顔とに本人が違和感を感じるのは、左右対称では無いのがその理由なのだとか。
つまり、普段は鏡映反転した自分の顔しか見ていないので、左右が正しい写真では違和感を感じるのだとか。
もっとも、やたらめったら自撮りしてる人はその限りじゃ無いかも知れないけれど。

 

バイクもシンメトリーでは無い。
左右対称で有って然るべきだとは思うのだけど、構造上それは不可能だ。
マフラーはまだしも、チェーンやシャフトがどうにも無理。
出来るとしたらハブレスかな。
トロンのバイクみたいなアレ。
でも、特に作る意味合いは無いので、少なくともメジャーメーカーは作らないだろうと思う。
ん、無いな。
見てくれさえ奇抜なら後は野と成れ...って、カスタム屋の領分で、ホンダが作る事は無いな。

でもバイクって、意外とシンメトリーじゃ無くても大丈夫だったりする。
RC30や45なんかは、スイングアームが左片持ちな上にサイレンサーまで左出し。
全部左出しなのに当時最強だったのだから、ちょっとくらいのバランスの偏りはどうって事は無いみたい。
バランス悪いから左にしか回れない、なんて事は聞いたこと無いしね。
とは言っても、サイドケースはやっぱり両方に着けるのが良いと思う。

以前、VFR800Xだったかに乗ってた人が、左にしかパニアを着けない事が多かった。
理由は、すり抜けする際に車に当たりそうだから、なんだって。
最初見たとき、盗まれたのか落としたのかと思った。

乗ってみると意外と大丈夫らしい。
お米やダンベルや生コンクリートを詰めたらきっとバランスは悪いだろうけど、カッパやお弁当くらいなら問題無いらしい。
ただ、見た目は凄くバランス悪いので、やっぱ左右に着けるか、トップケースにしておくのが良いと思うな。
やっぱり美しさに欠けるわ。

 

 

 

ジーンズのポケットが破れた。

前にもあっちやそっちで書いた事有るけれど、その昔は、どれだけズタボロのジーンズを履くか、と、そんな訳解らないファッション感覚を持ち合わせてた時期が私にも有った。
チェーンソウと添い寝でもしたのかと思われそうな、そんなズタボロを履いてる時期さえも。
だがそれは、横浜駅前で片足だけちょん切れると言う悲劇に見舞われ、以降はそんなみっともない恰好はする事は無くなった。
今でこそ、なんか良く分からないけど片足半ズボンの人は居るけど、あの頃の私はとても恥ずかしかった、とても困った、視線が熱かった、そしてちょっとスースーした。
身も、心も、左足も、ちょっとスースーした。

でも、片足だけ半ズボンの人って何なんだろうね。
森谷帝二に爆破されかねないので、注意頂きたいなと思う。

 

ともあれ、片足半ズボン事件の悲劇以来、破れたジーンズを履く事は無くなった。
だから今現在破れてたとしたら、それはわざとじゃ無くて自然だよ。
要するに劣化。
ただのボロ。
てか、買い替えろよって話。

な訳で、まぁまぁイイ歳した昨今は破れたジーンズなんぞを履く事は無いのだが、それでも長期間履いてるとどうしても破れてくるのは仕方ない。
それも右側の尻ポケット。
私のジーンズのウィークポントがここ。

 

私が高校生の頃、バイクに乗り始めた頃からの定位置。
それが、ジーンズの右尻ポケット。
そこが財布の定位置だ。
バイクに乗る際は、小さな二つ折財布を右尻ポッケに入れるのが、私のスタンダード。

だがお陰で、尻ポッケはダメージを負いやすい状態と成っているのは否めない。
常にそこには財布が入ってるのだから仕方ない。

でも、ジーンズは左にもポッケが有るんだよ。
決してシンメトリーでは無いけれど、それでも左右にポッケが着いているんだよ。

だから、右が破れたら、左に入れたらイイじゃない。
簡単な話。

だが、かつて何度となくジーンズの右ポッケを破り、そしてかつて何度となく試した事。
左尻ポッケに財布を入れる、ってスタイルは試した事。

でも、どうにも違和感が有るんだ。
右尻ポッケだと、バイクは勿論、歩くのも座るのも、何なら車の運転だって平気で出来るんだけど、左はどうにもダメだ。
どうにも違和感が有る。
どうにもこうにも違和感有りまくり。

 

シンメトリーは、思いのほか少ない。
例えば人間の顔。
左右対称に思えて、これが意外なほどに左右は対称では無い。

同様に、私も尻も決してシンメトリーでは無いのだろうと思う。
鏡の前で、牛さんの格好してまじまじと確認した訳じゃ無いけれど、きっとそうなんだろう。
左右対称じゃ無いんだろう。
森谷帝二が言う所の美しい尻じゃ無いんだろうと思う。

シンメトリーじゃ無い汚ぇケツでごめんね。
でも爆破しないで。

MOTOR CYCLE

Posted by tommy