苦言化系能力者 後編
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苦言化系能力
特に聞いてもない相手に苦言を呈して気持ちよくなる、と言う迷惑な能力。
レベルは何段階か存在し、苦言を呈するチャンスを見たら条件反射的に苦言を呈してしまうパブロフの犬レベルから、ふとした瞬間に思わず反射的に噛み付いてしまうリアクションバイトレベルから、常日頃から四六時中噛み付くべく苦言チャンスを血眼になって探し回るカミツキガメレベルから様々。
重症化したら、．．．（略）
このおじさんは、初対面の人間に対して自分のバイクは自分で整備しろよと言って来たこのおじさんはどのレベルの能力者なのかは定かではないけれど、回転系工具を手袋して使ってる動画を見つけたら『素手で作業しろよ』とコメント残さずには居れないレベルはとっくに超えてるとは思う。
出来ればお近づきに成りたくないタイプだ。
ともかく非常に面倒臭そうだ。
ちなみに当時、その連れ立ってるお兄さんのバイクを整備してたのは私だったりする。
お兄さんにバイク整備して貰ってた訳では無く、お兄さん達のバイク整備してたのは私だったりする。
と言うのも、結構本気でモトクロスを始めたのはまだ中学生の頃の事。
バイトも出来ない年齢なのでお小遣いでやりくりしなきゃ成らないのだが、どう考えても中学生のお小遣いでモトクロスやるなんて不可能な訳だ。
何処も壊さなくても、走れば2stオイルも要ればガソリンだって要る。
コースもタダでは走れない。
金掛かって仕方ない訳だ。
そこで提案されたのが、タイヤ交換したらお小遣いやるよ、と言うお話。
当時十数人のグループだったので、毎月数本～のタイヤを、いくらかのお駄賃で交換させて貰ってた。
モトクロス濃度はそれぞれだったけど、国際なんちゃら級なんて人も居たので、そんな濃密な人たちはタイヤを結構な頻度で交換してたのだ。
もっとも、これはお兄さん達の優しさ。
金の無い女子中学生の為にお小遣いやる為に仕事を作ってやろうって、そんなお兄さん達の優しさだ。
よその子供に理由も無く小遣いやる訳にもいかないし、かと言って1回1000円でパンツ見せろって訳にもいかないので、タイヤ交換したら小遣いやるよってシステムに成った訳。
そもそも、他所のガキにさせなくてもタイヤ交換なんて全員出来る。
それが次第に、ブレーキパッドからホイールベアリングまでも手を広げて、高校生の頃には足回り全般～腰上～クラッチやミッションまで手を出すように成ってて、どう考えてもお兄さんの優しさの領域は超えてるよなぁ、なんて思いながら1万円でエンジンをオーバーホールしてたもんだ。
いや、どう考えても安く使われてるわって思いながら。
こんな事を書いたら、整備士免許持ってない人間があーだこーだ！って、カミツキガメみたいな人に噛みつかれそうだけど、まぁクローズドコース用だからイイんじゃ無いっすか？って思う。
別にモグリで車検代行業やってる訳じゃないんだし。
ちなみに、随分前だけど車の中に自転車積み込むって話書いた時に
『素人が車輪を外したら危ないからプロに任せろよ』
と怒られた事が有るので、箸が転んでもブチ切れる人にご理解頂くのは中々難しいんだろうと思う。
見つからない事を祈るばかり。
あ、自転車のホイールについて、脱着はプロに任せろとの上記のようなとても有りがたいアドバイスを頂いたのだけど、現実的に自転車のホイールを外す度に自転車屋さんに現場まで出張頂くのは難しいので、素人が生意気な作業して申し訳ないけど、自分でホイールの脱着をさせて頂いてる。
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と、まぁそんな具合に『自分の乗るバイクくらい自分で整備しろよ』と、苦言を呈された私なのだけど、『自分が乗ってないバイクまで整備してるんですよ』なんてわざわざ答えるのも邪魔くさいので、『はぁ』とだけ答えておいたら、おじさんは満足気にどこかへ去ってったので良かったなと思う。
女子高生にマウンティング出来て満足そうに去って行った。
『きゃー、何するの痴漢！！』
と、号泣しながら管理事務所に逃げて行く手は止めておいた。
こんなオッサンの人生を叩き潰す事くらいいとも容易い事なんだって事を覚えておけよと、苦言を呈したい。
苦言を呈する人、苦言化系能力者ってこの世には一杯居る。
ココにも一人居る。
ココって何処？
それは焼肉屋。
そう、やっと前回のお話の冒頭へと戻る。
何の用事も無いのに250kmも自転車乗ってきた人2名と、息してるだけでお腹ペコペコに空かせる大巨人と私との4人。
何しようかとメニューをパラパラしてると、隣のテーブルのおじさんが、同席してるそのおじさんの職場の部下らしき若者に苦言を呈した。
『焼肉屋で飯なんか食うなよ！常識だろ、ジョーシキ』
と、なんか余計なお世話な苦言を若者に。
きっとそのおじさんからしたら、焼肉とは肉食ってビール飲む所で有って、そこに白米なんて付け入る隙なんて無いんだよ！って事なんだろうと思う。
飯食いたきゃザ・めし屋にでも行け！ってな物なのだろう。
ポプラのポプ弁ごはん山盛りでも食っとけって事なんだろう。
それぞれのスタイルは有ろうかと思う。
焼肉は肉を食べながらビールを飲む所で、飯食う所じゃねーって。
それを貫くのも周囲に強要するのも勝手にすれば結構かと思う。
何処の誰か知らない人の苦言化能力についてとやかく言うつもりは無い。
だが一つだけ解って欲しい。
『焼肉屋で白飯なんか食うなよ！常識だろ、ジョーシキ』
ととなりの席のおじさんが言うや否や『ライス3つ』を注文した私達のテーブルの非常識な人たちは、アナタに喧嘩売ってる訳じゃないんだよって事は解って欲しいなと思う。
250kｍも自転車乗ったのにうどん一杯とエネルギーゼリーと言うカブトムシに毛が生えた程度の食事しかしてない空腹の人と、指動かしただけで腹ペコに成ってしまう巨大な人なので、ご飯食べなきゃやってられないんだ、って事を解って欲しいなと。
だから、そんな白米に両親を殺されたかのように丼ご飯を睨み付けないで欲しいなと。
そう願うばかりなんだ。