ロトの勇者は赤い衣を身にまとい戦いへと赴く 第二話
バイト先の先輩に女の子紹介してくれ!
学生時代、友人よりそう依頼された私は、なんか適当な人を適当に見繕ったのだけども、急にバイト入ったらしく土壇場でキャンセル。
でも先輩には連絡つかない。
携帯くらい持ってようよ、先輩。
って思うけど、バイク乗ってたらどの道電話なんか取れないか。
ともかく仕方無いから私はそこへ向かったのだ。
なんか知らないけど私が行くハメに成ったのだ。
その先輩との待ち合わせ場所へと。
TZRに乗る先輩の元へと。
で、待ち合わせの約束してた喫茶店。
20分程前に行ってみると、入り口付近に男性の姿。
恐らく先輩だろう。
なんか張り切りまくってる先輩だろう。
実物見たのは初めてだけど断言出来る、アレは先輩だと。
小さなスナップ写真一枚しか見た事無いけど断言出来る、アレは先輩だと。
TZRはそこには無かったが、断言出来る、アレは先輩だと。
だって、真っ赤なタカイのブーツに、真っ赤なYAMAHAと描かれたジャケットに、タイラレプリカを携えた人なんて先輩しか居ないよ。
間違い無い、あれは先輩だ。
あんな真っ赤っかな人、そうそう居ないよ。
ウェンレイニーでもヤマハ時代のエディローソンでも、普段はあんなに真っ赤っかじゃ無いと思うよ。
真昼間の横浜で、そんな真っ赤な人は先輩くらいしか居ないよ。
ご覧の通り先輩だ。
ブランド物のジャケットを着てブランド物のレザーブーツを履く先輩。
文字に直すとお洒落さんな雰囲気にも思えなくも無いけど、ブランド物のジャケットと言ってもヤマハの真っ赤っかのジャケットだし、ブランド物のレザーブーツと言ってもタカイの真っ赤っかのブーツだし。
先輩なりにお洒落にキメて来たのかも知れないけれども、ハイスペックな割りにスッカラカンに女っ気が無いのも分かる気がした私なのだった。
うん、この場で真っ赤っかは無いと思うな。
初対面の女子大生とのデートでその真っ赤は無いと思うな。
幾らヤマハが好きな私でもそれは無いと思うな。
先輩なりにお洒落してきたんだろうなぁて思わないでも無いけどそれは無いな。
ん、先輩、それは無い。
先輩....赤いです。
日の光に照らされ、赤く輝く先輩の陰にふと考えた。
どうしよう....
こんな赤い人と二人っきりで小一時間お洒落な喫茶店でお話しろってのか。
どうしよう....
そんな先輩との赤い接近遭遇からかれこれ随分と時は流れた今。
あの日の先輩は、それっきり全く関わり無いので知らないけれども、多分きっと恐らく赤いパンツ履いてどこかできっと恐らく元気に多分楽しく暮らしてるんだろうなって思う。
知らんけど。
そんな私の元へ、ちょっと買い物に付き合ってくれないか?
って連絡が入った。
連絡してきたのは近所に住んでる友人の親戚の方。
彼女から見て甥っ子に当たるんだろうか。
実はこの人も書道してる関係で、私とはちょっとした縁の有る人だったりする。
二人っきりで温泉旅行行ったりはしないけど。
ちなみにこの甥っ子、年齢は友人や私と余り変わらなかったりする。
まぁ何だ、色々事情が有るんだよ、色々と。
なんでも、つきあってる彼女への贈り物を見繕って欲しいとか、なんかそんな用件。
お茶くらいならご馳走するから来てくれないかと。
そんな訳で、私の家で昼寝してた友人を叩き起こし、二人して待ち合わせ場所へと行ったのだ。
西宮の阪急へと。
まぁなんせ大人の買い物だ。
給与所得者で有りながら白色申告義務の有る所得の大人の買い物。
そんな高収入な大人が彼女への贈り物を買うならそりゃ阪急でしょう。
ヨーカドーで無いのは確かだろう。
勿論ジャスコでもライフでも無い。
ラ・ムーなんて有りえない。
私達は車に乗り込み、そして西宮阪急へと向かった。
途中、ミニストップで何か買い込んだりしながら。
もうそろそろ阪急?
そんな所を走ってると、前方にロードバイク=つまりロード用の自転車の姿が目に入った。
私は右側車線へと車線変更して追い抜こうとした、その時....
ん??
と思ったのだ。
あれ?
甥っ子??
同時に、横で何か食べてた友人も同じ事思ったのだ。
あれ?
甥っ子??
私)なんか自転車乗ってたなぁ
友)そう言えばちーちゃんに影響されたかで去年自転車買ったとか言ってたわ
私)でもなんか赤かったね
友)ん、なんかごっつい赤かった
私)ピッチピチやったなぁ
友)ん、なんかすっごいピッチピチやったわ
*ちなみにちーちゃんとは、友人の旦那さんの事だ。知らんか?知らんよね。
私達は困惑した。
ちょっと困った。
だって、真っ赤でピッチピチだったもの。
サイクリングコースなら良い。
六甲の上でも良い。
そして道路の上なら何も文句は無い。
でも阪急でソレは無いだろう?
ちょっと洒落たお店で彼女への気の効いた贈り物を買い物をするのに、そのピッチピチは無いだろう。
って言うかなんで自転車なのさ。
阪急のパーキングへと車を停め、待ち合わせ場所の屋上庭園で待ってるとやって来た。
真っ赤のピッチピチな甥っ子がやって来た。
ご覧の通り甥っ子だ。
用事を思い出した振りして帰ろうかなって思った私達だったのだった。
まだ続く