上昇気流のジレンマ
まだこの世にレーサーレプリカってカテゴリーのバイクがどうにかこうにか存在してた時代の事。
随分昔の事。
21世紀に生まれた坊ちゃんお譲ちゃんには理解不能な時代。
当時、峠道を用事も無いのに深夜~早朝に掛けてグルグルと走り回る人たちが多く存在した。
そりゃもう沢山。
乗ってるバイクはステージによるが、50ccのスクーターからCBR400RRまで様々。
今やスーパープレミアムなNSR250Rなんてゴロゴロ走ってた。
アンダーカウルを外して、って言うか割れて外れて、そこらじゅうをガムテで補強されたNSRが。
彼らは大した理由も無く自らの命を弄んでたのだが、それでも命を守るべく装備を整えるパラドックス。
怪我したく無いなら制限速度で普通に走ってりゃイイんだけど、そうも行かないのが当時の若者の思考。
基本はフルフェイス。
命を粗末にする遊びをしてる少年達だが、それでも最低限の命を守る為の装備は欠かさない。
定番はアライのラパイド。
目玉デザインが至高。
シールドの上の方についてるベンチレーションにタイラップを結んで触覚を、そして後頭部に尻尾を生やすのが基本的スタイル。
だが顔丸出しの玩具のヘルメットなんて被らない。
それが峠を走る少年達の矜持。
中古のスクーターで走り回る赤貧少年は、ジーンズに空き缶、或いはプラスチックのまな板をノコギリで切ってガムテで固定するスタイル。
もうちょい金を掛けれる人は、ブーツに革パンなんて選択も有る。
当時はレーシングーツの下だけ、みたいな派手なデザインのバンクセンサーが着いた革パンが幾らでも有ったので、それを買うのが定番。
上にジャケットやトレーナーを着たらツナギ着てるみたいだし。
さらに金掛けれる人は普通に革ツナギを着る。
ゼニ持ってるならクシタニやナンカイ、もうちょいお安く挙げたいならセクレテールとか。
プリカーナは....まぁアレとして。
装備を整えて行けばサーキットを走る人と変わらないスタイルと成るのだが、尻尾や触覚の他の大きな違いはトレーナー。
そう、革ツナギの上にトレーナーを着る、と言うなんか良く解らないスタイルが定番だったのだ。
レーシングスーツの上に何か着るなんて、チャンピオン決めたGPライダーくらいなものだけど、峠ではそれが一つの正装。
チームでお揃いのトレーナーを着るのが正装。
バリバリマシンの後ろの方に広告が載ってるプリント会社に発注して、勘亭流フォントでチーム名を入れるのが正装。
21世紀に生まれた坊ちゃんお譲ちゃんには理解不能なセンスかも知れないが、それが当時のジャスティスだった。
問題はチーム名。
抜群に格好良い事をしてる、抜群に格好良いファッションに身を包む俺たちに似合う、抜群に格好良いチーム名。
それが大きな問題だ。
そのチーム名にあれこれと頭を悩ます人が一人。
あれやこれやと頭を悩ます少年が一人。
チーム作るんだけどどんな名前にしようかって。
チーム名の流儀は幾つか有るだろう。
あえて外す選択もアリだとは思う。
チーム緑亀とか、チーム蒙古斑とか。
だが、王道はやっぱり格好良い名前。
チーム・ブラックウィドウとか、そんな抜群にシビれるネーミングを着けてやりたい。
そんな偏差値30台の彼が考え抜いた最高に格好良いチーム名。
『上昇気流』
チーム上昇気流。
それも、『高気圧』と書いて『じょうしょうきりゅう』と読ませる強引な技。
それくらいの芸当、彼に取っては全然平気。
ナメんな!偏差値30をナメんな!
『高気圧』くらい漢字で書けるぜ。
ナメんな!
『低気圧』だよ、上昇気流は『低気圧』だよ。
私の無慈悲なその一言が、偏差値30の彼を貫いた。
ぐふぁ....
大量に吐血しながら地面に倒れこんだ彼は、涙を浮かべながら力を振り絞って、言った。
「じゃ、じゃぁ、高気圧は....」
「ん、ああ、下降気流だね、高気圧は下降気流」
「上昇気流は低気圧で、高気圧は下降気流だよ」
私は無慈悲に答えた。
ー上昇気流のジレンマー
上昇気流と、なんかポジティブなチーム名を名づけるとその意味合いは低気圧と言う、なんかローテンションな印象な意味合いに成ってしまう。
逆に高気圧と言うハイテンションな名前にすると、下降気流だなんてダウナーな名前に成っちゃう。
困ったもんだ。
いやん成っちゃう。
何でもかんでもスマホで検索出来る今と違い、殺傷能力の有る分厚い辞書を引いて調べなきゃ成らない時代。
語彙量が薄い本並みにしか持ち合わせて無い彼にはとても辛い展開だ。
どうしたもんか。
偏差値30の彼は、自身の愛車のピストンくらいの大きさの頭脳をフル回転させるのだった。
熱帯低気圧のようにグリグリと。
それはともかく、なんかヤバいのが来てるらしい。
いや、本気でヤバい。
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一昨年、私の住む兵庫県南部を台風が直撃した事が有る。
自動車オークション会場が炎上したり、海岸が崩壊したり、あちこちで浸水したりと大変だったのだけど、直接の風や浸水被害を受けて無くても停電なんかしたら本当に大変。
ダイヤルをジーコジーコ回してた時代じゃ無いので停電したら固定電話も使えない。
停電したらネットは勿論使えない。
従ってスマホが生命線と成るのだけど、バッテリー切れを起こしたら悲惨なので、大きなバッテリーは一個持っておくのがお勧めだ。
車で旅行する時にも便利に使えるし。
そして照明。
キャンプ道具のランタンを持ってる人で有っても、この時期に室内でガスランタンなんて絶対に使えない。
もうね、半端じゃなく暑い。
だからLEDランタンは必須だ。
今ならまだ間に合う。
持ってない人は、最低限の装備を今のうちに買っておこう。