コーヒーは、舌と記憶にその苦味を刻み付ける

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イメージ。
単なるイメージでしか無い話なのだけど、その人の属性に似合う飲み物が有るだろうと。
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単なるイメージでしか無い話なのだけども。

 

エクストリームスポーツやってる人にはレッドブル。
サッカーやってる人はゲータレード。
自転車乗ってる人にはCCD。
三つ揃えのスーツ着てサングラスかけた夜のおじさんにはカミュ。
ワーカーホリックにはリゲイン。

別に、昼過ぎに起きて寝転びながらアニメを見て明け方に眠りに着く、永遠に夏休みが終わらないループに迷い込んだかのライフスタイル送ってる人がユンケル飲んでようと、西部署の課長っぽい人がメロンソーダ飲んでようと、千利休っぽい人が抹茶 クリーム フラペチーノを飲んでようが、そんなの好きなようにすりゃ結構な話なのだけど、そうは言ってもその人の属性によって似合う飲み物ってのは有ろうかと思う。
余計なお世話なんだけど。

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バイク乗ってる人にはコーヒーが似合う。

基本的に格好つけたがる人の多い傾向のバイク乗り。
そして、基本的に格好つけたがる人が好むコーヒーって飲み物。
その親和性は非常に高い。
バイク乗りが必然的にコーヒーを選択するのも、ごく自然な話だろうと思う。

勿論、基本的に格好つけたがる傾向の多い私も、格好つけてコーヒーを飲む機会が非常に多い。
80円くらいで売ってるC級自販機の謎飲料も、それはそれで結構好きだったりするのだけども。
顎の奥がシクシクするくらい猛烈に余りコーヒーとか。
それはそれで。

 

バイクに乗るなら、そりゃやっぱコーヒーでしょう。

と言う訳で、ちょい前にバイクの免許を取り、そして晴れてライダーと成った若者を連れて、神戸方面のと有るカフェへと行ってきた。
昼下がりと呼ぶには随分遅め、でもディナーにはまだちょい早いよね、って頃合に。

 

神戸界隈には美味しいコーヒーを出すカフェが沢山有る。
と言うか、少なくとも家のコーヒーメーカーで入れるコーヒーに比べたら、大体何処で飲んだって遥かに美味しい。
個人経営の店だろうと、全国、全世界チェーンの店だって、家のコーヒーメーカーとは比べようも無い。
まぁそりゃそうだけども、その中でも結構お気に入りのこのお店に、この日は何人か連れ立って行ってみたのだ。
神戸の、かなりガツンと来るコーヒーを出す店に。
エスプレッソが美味しいお店に。

 

夕方前にカプチーノってのはナンセンスだ。
別にわざわざ特に用事も無いのに格好着けに来た訳で無いので何飲もうが好きにすりゃ良いのだけど、やっぱりここはエスプレッソ1択だろう。
濃厚なエスプレッソがベストチョイスだろうと思う。

だが、ファミレスか紙コップのコーヒーしか飲んだことの無い若者には少々ヘビーだったかも知れない。
正直、この店はかなりのパワー系エスプレッソ。
明治のコーヒー牛乳しか知らない小僧には少々苦い経験だったかも知れない。

でもコーヒーなんて苦い物だ。
何処のコーヒーだって、ファミレスだってスタバだってコーヒーなんて結局は苦い物だ。
その苦さを乗り越え、みんな大人に成っていく物なんだよ。
その苦味を舌に刻みつけながら。

 

 

もう随分前の事。
今はコンビニが立っているその場所。
当時私が住んでた所の程近くのその場所。
そこには以前ファミレスが有ったのだ。
サイゼリアって名のファミレスが。

場所は西宮市西部。
芦屋市に程近いさくら夙川駅から北上し、阪急電車の踏み切りを超えた辺り。

この阪急の踏み切り辺りまでは平地。
そのちょい先辺りから上り坂が始まり、その坂道をず~っと上がれば、北山の植物園やさらにそのさらに先に高校や大学もあったりする。
えらい山の上に作ったもんだと何時も思う。
学生の皆様はご苦労様。
今はファミマだったかローソンだったかに変わってるそのサイゼリアに、コーヒー飲みに知り合いの奥様を連れて行ったのはもう随分と前の事。
なんせサイゼリアが無くなったのさえも随分前の事なのだから。

なんでサイゼリアなのかは、今となっては余り覚えてない。
界隈にはカフェは沢山有るのに、なんでサイゼリアなの?なんてのは良く覚えてない。
フットサルが出来るくらいの庭を持つ家にお住まいのこの奥様。
あまりファミレスには縁の無い生活を送ってるので、なんでサイゼリアなのか?ってのはいまいち覚えてないのだけど、まぁ特に深い理由が、大きな訳が有ったなんて事は無いと思う。
なんとなく車が停めやすかったとか、その程度の理由じゃないかと。

だから、ハッキリ言って何故サイゼリアに行ったのかは良く覚えてないのだが、これだけはハッキリと覚えてるのだ。
サイゼリアでコーヒー飲んでる時聞こえてきた、すぐ真後ろの席で大声で口論してる男たちの事をハッキリと。

『お前は全然わかってない、消失における長門の気持ち全っ然わかってない!』

と、大声で口論してる男たちの事はハッキリと覚えている。

そして

『ねぇ、長門って誰?』

と、小声で私にそう尋ねてくる奥様と

『え?さぁ??』

としか答えれない、とても苦い記憶に包まれた私のあの時の気持ちを覚えている。
ハッキリと覚えている。

とてもビターな記憶。
鼻からエスプレッソをストレートで飲んだかのような、私の脳と心に刻み付けられたそんなビターな記憶。

 

まぁコーヒーなんて苦いもんだ。
でも苦すぎるのもそれはまた考え物なので、今度はこの若者をミックスジュースでも飲みに連れてってあげようかと思う。
格好つけてエスプレッソってのも良いけど、絞りたてミックスジュースってのも、それはそれでとても良いものなのだから。
今度は、信仰の為に殆ど同じ内容のDVDを4本(1本5000円)も買った苦い記憶を持つおじさんも連れてってあげようと思う。
その苦味は心を蝕む辛い味なのか、ほろ苦くも良い思い出の味なのかは知らないけれど。

 

Bicycle

Posted by tommy