ヤマハのブレーキ問題

ヤマハのエンジン問題はチェコ~オーストリアでの気温の低下によりひとまずの沈静化を見せたが、今度はブレーキにトラブルが起こっている。

発端は、このビニャーレス飛び降り事件の起こる一週間前、同じレッドブルリンクで行われたオーストリアGPでのクアルタラロ。
ブレーキがダメだとキャリパー交換されたのは、ザルコとモルビデリの事件により赤旗中断されてたレース途中での事。
具体的にどうのこうのって話は見つけられなかったけれど、ともかくオーバーヒートでブレーキに不具合が起こってると。

 

このレッドブルリンクは、ブレンボが決めている難易度では5段階中の5とされている。
カタルーニア、モテギ、セパンと同じレベルのブレーキに非常に厳しいコース。
セパンではブレーキに関しては問題に成らなかったが、他のサーキットに比べて負担が大きいレッドブルリンクでは問題が出たみたい。

結局、キャリパー交換でもいまいち改善せずに、レッドブル2戦目に成るこのスティリアGPでは、ブレンボの改良型キャリパーが持ち込まれた。
結果は少しマシ。
ただ完璧かと言えば何とも言えないとか何とか。

 

一方のビニャーレス。
当の本人は、それまでブレーキに不満は無かったので、キャリパーをどうこうするって考えは無かった模様。
その上、改良型キャリパーはフィーリングがいまいちだったから、4名のヤマハの中でただ一人従来モデルのキャリパーを使ってたのだとか。
ヤマハの他の3人に対し、ただ一人文字通り壊滅的なダメージを食らったのはそれが原因。

 

でもここで一つの疑問が。
ブレーキなんて、何処のチームも同じようなの使ってんじゃないのさ?って事。

現在、オーリンズのショック(KTMを除く)とブレンボのブレーキは全車共通。
過去にはホンダでニッシンを使ってた事も有るが、現在は全てブレンボ。
ヤマハもホンダもドゥカティもスズキもブレンボ。
じゃぁヤマハだけなんで??

 

一つがブレーキの冷却用ダクト

 

ライダーやコースによって付いてたり付いて無かったりするダクト。
今回のレッドブルリンクでは、ホンダとスズキ以外は全部付いてたかな?
興味の有る人は調べてみよう。
これによってキャリパーを空冷するのだけど、それがいまいち機能しなかった、なんて可能性が一つ。

 

ダクト云々以前に、ヤマハならではの問題が有る。
それが2つ目の問題、バイクが遅いって事。
ケニー・ロバーツがフレディ・スペンサーと戦ってた頃よりにはすでに始まってた伝統と格式のヤマハの遅さ。
何十年経ってもその図式は変わらない。
エンジンのホンダvsハンドリングのヤマハの伝統の戦いは。
そろそろどうにか成らないのかな、って思うけれどきっとどうにも成らないんだろうね。

スティリアGPのQ2では、ヤマハ最速のビニャーレスの306.8km/hに対し、ジャック・ミラーは314.8km/h。
GP19に乗るザルコも含めて310km/hを超えるドゥカティに対し、ヤマハ勢は概ね8~10km/h程のトップスピードの差が有る。
最高速が高けりゃ勝てるって訳では無いが、レースでは圧倒的にアドバンテージを持ってるのは確かだ。

それらの速いバイクに対抗する為には、一つは徹底的にスリップストリームを使う事。
空気抵抗が激減するので、300km/hも出したら単独走行とは随分と違う。
これでドゥカティを抜く事は無理にしても、どうにか食らいつく事は出来る。

だが、スリップストリームは風が当たらないと言う大きなメリットが有るが、同時に風が当たらない事による弊害も存在する。
つまり、風が当たらないから冷えないよって事だ。
一時期言われてたヤマハのフロントタイヤ加熱問題も、このスリップストリームでの冷却不測が原因だって言われてた。
空気が当たらないと、ラジエーターが冷えないのでエンジンには負担が掛かり、そしてフロントタイヤの加熱にも繋がり、さらにはフロントブレーキのオーバーヒートにも繋がる。

だからとスリップを外すとドゥカティ相手じゃお話に成らないので、熱くても尻にくっついておかなきゃ成らない訳だ。

 

もう一つが、直線で勝てないヤマハはコーナー侵入で頑張らなきゃ勝負にならないと言う宿命を抱えてるって点。
楽に立ち上がって超絶パワーで直線を駆け抜けるバイクでは無いので、ヤマハで速く走るならコーナーの進入を頑張らなきゃ成らない。
つまり、他のバイクよりも余計にシビアなブレーキングが求められるって事。
でもそれを優しくしなきゃ機嫌壊すわがままお嬢様なので、ヤマハは別に簡単なバイクじゃ無いと思う。
ジャック・ミラーみたいなガサガサした人が乗ったら、昔のポルみたいに苦労すると思うな。
マルケスならあんまり関係成さそうだけど。

以前のザルコ、そして昨年からのクアルタラロやモルビデリを見て、ヤマハは乗りやすいから結果が出てるんだよと良く言われるけれど、勿論そんな訳は無い。
性格が優しいだけで、だからと別に簡単に勝てるバイクでは無いのだ。

 

総合すると

1.ダクトがいまいち効果が出てなかったのかもね

2.スリップストリームを多用する事でブレーキが冷え難い。

3.直線の遅れをコーナーで取り戻す為に、ただでさえブレーキに厳しいコースにおいて、他のマシンよりさらにハードにブレーキを頑張る必要が有る。

これらの理由により、他とは同じような仕様のブレンボでも、ヤマハはブレーキに掛かる負担が大きかった訳だ。

 

対策品のニューキャリパーは一定の効果は有るようだけど、それでもフィニッシュは結構ギリだったよとクアルタラロ。
ド派手に開幕2連勝を奪ったものの、次から次へと難問が浮かび上がるヤマハ。
この先の戦いはどうなる事やら。

次のリミニはブレーキにはちょっとマシ。
でもその次のカタルーニアは、このレッドブルリンクと同様にブレンボが設定する所の最高難易度のコース。
気温と路面温度次第だけど、もうちょい改善が見られないと同じ悲劇が起こり得る、かも知れない。

MOTOR CYCLE

Posted by tommy