沈没丸とテセウスの船

それ程濃密では無いが、それなりに交流の有る人から連絡を受けた。

『実は、ちょっと相談が有るんだが』

あ、まぁこんな寸劇スタイルで話を進めても良いのだけど、読んでたらイラって来る可能性も有るので手短に掻い摘んでみたら

・大学生の息子がニンジャ250を買った。
・でも盗まれた。
・と思ったら出てきた。

こんな話。
以上終わり。
否、終わらない。

ともかく、息子ちゃんのニンジャが盗まれたんだって。
で、数ヶ月後にその盗まれたニンジャが見つかったんだと。

それは幸運じゃないか。
それは良かったじゃ無いか。
と、気軽にそんな能天気な声を掛けれないのは、それは川の底から見つかったからだ。
川の底か....
処分が面倒に成るだけなので、このまま見つかること無くひっそりとザリガニの住処として朽ちるのを待った方が良かったかも知れない。

幸か不幸かは何とも言えないのだけど、写真で見る限りは、まだ沈没して間もない為かナンバープレートも車体番号も認識出来る状態。
流石に年単位で河口に沈んでたら、カキやフジツボや名も知らない謎の下等生物に支配され、もはや車体番号は認識不可能と成るだろう。
ナンバープレートなんか程なく朽ちて無くなっちゃう。

だが、最大に見積もって、盗まれた直後に沈没丸とされたとしても数ヶ月。
それも謎の下等生物の侵食を受け難い淡水。
自然に還るにはまだまだ長い時間は必要だ。
ボディは緑色だけど、多分これは元からこんな色だと思うな。
藻が生えた訳でも河童が塗り替えた訳でも無さそうだ。

だが!だが!

数ヶ月、何なら数日だって沈没してたバイクが、洗車して蟹さんにお引取り頂いたら明日から乗れるか?って言われたらそりゃ無理だろって話。
今回連絡を貰ったそのお題がコレだ。

『この沈没丸を直せないかなぁって』

そんな無茶な今回の話。
まぁ、今回って言うか、4年ほど前の話なんだけどね。

送られて来た写真を見る限り、ハッキリ言って程度はそれ程に悪く無い。
綺麗に洗車したら、イオン無し絶好調くらいのクオリティは十分に有りそうだ。
黙ってたら、何ヶ月か沈没してたとは思えないだろう。
あっちこっちが物凄く錆びてるだろうけど、イオンは無いだろう。
異論は有るけどイオンは無い、そんなクオリティ。

今回は川に沈んでたからか、写真で見た感じは意外な程に状態は良い。
直そうと本気で思ったら直せると思う。
これが海だったらどこから手を着けたら良いか解らない状態だっただろうけどね。

こんな天丼みたいに、一体どこから手を着ければイイのやらと。

ただ、直すと成るとかなりの領域にまで手を入れる必要が有る。
写真で見た感じは綺麗だけど、だからとザリガニにお引取り頂いたらオッケーって訳には行かない。

フレームは恐らく錆びてるので沈没丸のを使うのは無理だな。
ただでさえヒョロヒョロのニンジャの鉄フレーム。
一箇所朽ちたらバラバラに成っちゃう。

同じくエンジンもそのまま使うのは難しい。
条件次第でアルミは意外と持つけど、ピストンリングやカムシャフトは鉄なので、沈没中の腐食から逃れる事は不可能だ。
同様に、クランクやミッションも無理。

足回りは、フロントフォークのアウターチューブくらいなら使えそうだけど、後はちょっと無理。

ホイールはアルミだけど、走行中に砕けたら洒落にならないので、沈没してたホイールは使えないだろう。
激烈に錆びてるだろうベアリングが抜けるかどうかもちょっと怪しいし。

外装は水流により痛みが激しいので、交換するのが賢明な話だろう。

電装は、コンデンサが放電してたら意外と沈没には耐えれるけれど、流石に数ヶ月沈んでたら難しいか。

無事なのはフレームスライダーくらいかな。
それくらいなら沈没丸から使えるだろう。
そのフレームスライダーに中古で買ってきた書類突きフレームを取り付け、中古のエンジン&電装~吸排気、外装と足回りを調達してきて組んでやれば修理は完了だ。
ここまで手を入れてやればちゃんと直る。
でも果たしてコレを修理と呼ぶのだろうか?
そして、このフレームスライダーしか残ってないバイクを、僕のニンジャと呼んで良いのだろうか?
テセウスの船のパラドックスだ。

と、こんな長々と語ったりはせずに手短に

『川に何ヶ月も沈没してたバイクなんて直んないよ』

と、だけメール送っておいた。
ヤダよ、カウル外したら泥鰌が出てきそうなバイク触るのなんて。

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