勇者は、大きな荷物を抱えて魔王の城へと戦いにおもむく―前編

海外出張なんて数える程度しか経験してこなかったけれど、それでも一度目と二度目、そしてあともうちょい回数を増やした何度目かを比べると、そのスタイルはおのずと変る。
まぁ有る程度は。

 

海外に行くからと、パックご飯やインスタント味噌汁を持って行くようなタイプでは無いのでそもそも荷物は少な目なんだけども、それでも服ばかりはどうしようも無い。
あれはどうにもかさばる。

画期的だったのは、何時からか世に登場したインナーダウンジャケット。
ペラペラのダウンジャケットながら、割と寒い所で行く機会の多かった私を大いに助けてくれた。
分厚いコートが要るか要らないか、微妙な季節には私を大いに助けてくれた。
有りがたや。

ギュッ!!!っと圧縮したら本当にコンパクトに成るインナーダウンのお陰で、私の出張荷物は格段に小さく成った。
流石にポケットに財布とパスポートだけ入れて行く、なんて程には成らなかったけれども。
有りがたや。

 

 

海外旅行の荷物は、行くほどに洗練されてコンパクトに成っていく傾向が有る。
だが一方、それ以外の多くの場合は、経験するほどに荷物はどんどんと増えていく。
困った事だけど、必要だから仕方無いよね。
勇者様だって、何時までも棒っきれで戦って行ける訳じゃ無いんだから。
そりゃ荷物も増えるさ。
フリマに出店する人みたいにえらい大荷物に成っちゃうさ。

例えばバイク整備。
多くの人に取って、作業工具と言えばスパナ(オープンエンドレンチ)とペンチから始まった人も少なく無いと思う。
確かに、トンカチとノコギリとスパナとペンチが有れば身の回りの大体の事は出来る。
だけど、それではバイクを触るには少々心もとない。
ノコギリ有ってもなぁ。

メガネにラチェットにプライヤーなんかの主力工具に始まって、そのうちに、きっと人生で二度と握らないかもね、って工具まで増えて来る。
タペットのアウターシムを交換する時に使う純正工具とか。
同じバイクにこれからも乗り続けるならともかく、そうじゃ無いなら.....どうだろうね。
ってか、これからアウターシムのバイクを触る機会なんてどれだけ有る事やら。

コアな部分を触り始めたら、妙な工具がどんどんと増えていく。
ツールキャビネットを整理する度に、コレ何だっけ?って悩んでしまう場合も出て来るので、ジッパー着き袋に入れてマジックで何のバイクの何の作業に使うのかってのを書いておくのがお勧めだ。
マグネットプーラーやフォークの周り止めなんかの汎用性が有る工具ならまだしも、10年前に一回使ったっきりのエンジン用の工具なんて覚えてないので、キャビネットがハチャメチャに成る前にちゃんと整理しておこう。
シリコンスプレーを吹いておけば、仮に20年後に使う時でも錆を防止出来てるだろうしね。

純正工具では無いけれど、私のキャビネットを以前整理してたら、コレが出てきてちょっと悩んだものだよ。
何に使ったんだろう??って。

 

 

一方的に荷物が増え続けるバイク整備工具と違い、少し奇妙な増え方をするのがキャンプ道具。
最初からスノーピークのパンフレットの様な完璧な道具を揃える人も居るだろうけど、多くの場合は日常の生活の延長から始まる。
新たに買ったのは、ホームセンターで売ってるテント、銀マット、安い化繊のシュラフ。
クッカーはお鍋を作る時に使ってるカセットコンロに家で使ってる片手鍋。
割り箸と、お皿と、カップは台所から拝借。
この日のキャンプ料理は、温めるだけで食べれるパックご飯と、スーパーで買ったカット野菜の野菜炒め、そしてカップラーメン。

世のキャンプマイスターからすればちゃんちゃらおかしい低レベルなキャンプかも知れないけれど、初めてのキャンプとしてはこれでも十分に良い思い出が作れる。
そう言う私も、始めてのアウトドアクッキングは、真冬の琵琶湖の畔で食べた、まるちゃんのカレーうどんだった。

単に何台かのバイクで京都から数時間程度の琵琶湖へ行き、今時は旅館の一人鍋くらいでしか見かけない固形燃料でインスタントのカレーうどんを作っただけの事。
その頃はEPIなんて持ってなかった。
わざわざ真冬の琵琶湖まで出掛けて、わざわざインスタントのカレーうどんを食べただけ。
ただそれだけの事だけど、あれはあれで楽しいもので、良い思い出にも成ったもんだよ。
帰りのかばんがやたらカレー臭かったなって、そんなのも含めて良い思い出。
やっぱ鍋も食器も洗って帰れない環境では、カレーうどんは選択ミスだったよ。
後にまで引き継がれる、良い教訓を得たもんだよ。
洗えないならカレーは食うな。

 

カセットコンロと片手鍋から始まったキャンプ。
愛車と、その横に頑張って建てたコーナンで買ったドームテントを眺めながら、カップラーメンを食べる。
それはそれでとても良い思い出が出来たのだが、ふとお隣さんを見ると、そこには圧倒的なレベルの差を感じさせる珠玉アウトドアグッズが。
EPI、コールマンスポーツスター、そしてMSR。
軽量&コンパクトな、魅惑のキャンピングストーブ達。
そこで彼は気付くのだ。
少なくともバイクツーリングでカセットコンロは無いなと。
こんなクソ重い台所用品使って場合じゃ無いなと。

 

それから、彼のキャンプ道具探求の旅が始まる。
ただひたすらにダウンサイジングの道を突き進む、キャンプ道具探求の旅が始まる。

家の台所から拝借したカセットコンロは、プリムスのストーブへとダウンサイジング。
同じく台所から失敬してきた片手鍋は、スノーピークのチタンクッカーへとダウンサイジング。
割り箸も、パン祭りで貰ったお皿も使わない。
全てはスノーピークと書かれたチタンを使う。
コーナンで買ったグラスファイバーフレームのドームテントは、ジュラルミンフレームの軽量ドームテントへとダウンサイジング。
何時しかシュラフは超絶コンパクトなダウンシュラフへと変わり、その頃には銀マットなんて影も形も無い。

そんな、やたら嵩張る生活道具から、軽量コンパクトなキャンピングギアへと持ち物は飛躍的に進化するのだが、有る一点を境に、または何かしらのキッカケで、その軽量コンパクト信仰は方向性を変えることが有る。

やっぱ、鍋って使い易いよね。
何だかんだ言って、ニンジン切るのはアウトドアナイフより包丁が良いよね。
デカいテントって寝やすいだろうなぁ。
せめて前室は要るよね。
改めて思うわ、家庭用カセットコンロってめっちゃ使い易いって事を。

 

ニーモのシングルウォールに手を出す程にストイックに軽量コンパクト路線を歩んで来た彼は、何かをキッカケに快適路線へと大きく舵を切る事に成る。
南極へ向かっていたザトウクジラが突如北極を目指すかのように。

ふと気付くと、こんな事してたりな始末。
小さなシングルウォールテントの前にちょこんと座り、小さなストーブとシェラカップでご飯を炊いてた姿は、そこにはもう面影すら見えやしない。

 

続く

 

MOTOR CYCLE

Posted by TOMMY