西からの熱風と、西からの新風

それは ゼファーと言うには あまりにも大きすぎた
大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた
それは 正に 鉄塊だった

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その昔、我が家にこんなバイクが有った。
ゼファー1100。
一台目はハイカムとFCR、マグホイールとヨシムラが入れられたバイク。
ノーマル以上盆栽未満って所。

その少し後に手に入れた二台目は、ヨシムラを入れただけのほぼノーマル。
阪急電車みたいな色だった。

 

その阪急電車号は、友人の元へと売却されると同時に、ペイントを施される事と成る。
禁断のオールペイント。
阪急電車みたいな色はお気に召さなかったみたいで。

カラーはパナロックのゼットブラック(原色)+マルチトップクリア。
要するに真っ黒け。
火の玉カラーやタイガーカラーも考えたのだけど、最もリスクの少ない真っ黒けに。
思えばつまらない選択だったけど無難って言えば無難だね。
少なくともスケベ椅子みたいな色よりは随分とマシだ。

ペイント後に3Mのコンパウンド各種+ウール~ウレタンバフで磨いてやると、テッカテカの仕上がりは割と簡単に得られる。
漆黒のゼットブラックは、磨けば磨く程に美しく黒光る。
もっとも、磨けば磨くほどに下地の歪みに由来する映り込みの像の歪みが目立ってくるので、その辺がプロと民間人との差って奴なんだろうね。
桜の枝ではわからないけれど、電柱なんかが映りこむと微妙な歪みがとても気に成る。
下地のプラサフを歪み無く研ぎ出せば最終的な映り込みの歪みは無くなるのだけど、言うのは簡単だけどそれを行うのはとても難しい。

 

一般的な中古車の値段で手に入れ、一般的な中古車の値段で友人へと売却されたこのゼファーは、一般的とは言い難い値段で転売されて現在は何処に居るのかはすでに不明。
いやぁ、ちょっと驚いた。
売却益で焼肉をおごって貰ったけど、ゼファーの高騰ってのは本当の話なんだねと改めて思ったもんだ。
こんな事なら後5台程買っておけばよかった。

 

400(550)、750に続くゼファーシリーズ最大のゼファー1100だが、冒頭で何か臭い事書いたけど実際の所は意外なほどに大きくはない。
跨ったらタンクはかなりゴツく感じるけれど、全体的には意外とそんなに大きくもぶ厚くも重くも無いし鉄の塊でも無い。
大雑把では有るけれど。
ああ、かなり大雑把なのは確かだけどね。

このバイクは難点は非常に多い。
まず挙げられるのが熱気。
オレの歌を聴け!とばかりに、1062ccの空冷エンジンが猛烈な熱気を否応なく周囲に撒き散らす。
これがフルカウルのR1やハヤブサなら自分が熱いだけなのだが、空冷のゼファーは自分も含めた周囲までもがやたら熱い。
その為、特に暑い時期は、信号待ちで隣に並ぶと怒られる。
熱いから後ろへ行けと怒られる事もしばしば。

もう一つの難点は、特にこの原油高&円安のご時世にお財布にずっしりとのしかかる燃費の悪さ。
ノーマルは濃い目なのかな。
一説には、燃焼室の温度を下げる為に濃い目のセッティングにしてるとかって信ぴょう性のあやふやな噂も有ったけれど、実際にノーマルのCVKはかなり燃費が悪い。
田舎道をアイドリングのちょい上くらいで走るとそこそこ燃費は伸びるものの、ちょっとスロットルを開け閉めするようなシチュエーションでは、燃費はガックリと落ちる。
実際、セローと一緒に出かけたらガソリンを入れるタイミングがほぼ変わらなかったりするくらい。
タンクの容量は随分と違うんだけどね。

ツーリングでは燃費が良くて、街乗りや山では燃費が悪い、なんてのは古今東西の内燃機関の全てに当てはまる話なのだけど、ゼファーの場合は同年代の他のリッタークラスのスポーツバイクに比べるとあらゆるシチュエーションでかなり悪い部類だろうと思う。
ZZR1100よりも燃費が悪いのだから、燃料使用量に対する出力の面ではコスパはかなり悪い。
1.5倍以上のパワーを出すバイクよりも燃費が悪いってのは、ちょっと考えてしまう。
ZZRよりも余計に食ったガソリンは、後輪への出力に使わないで何処に消えたんだろうって。
H2やR1の燃費が悪いってのはそりゃ仕方ないんだろうけど、90馬力にも満たないこのバイクは、一体どこにガソリンを捨ててるんだろうかと。
やっぱり熱としてただただ周囲に撒き散らしてるんだろうね。

やっぱ空冷は限界有るのかなぁ、って思うけれど、XJR1200なんかは同じキャブの空冷バイクだけど、燃費はもうちょい良くてパワーも十分に出てるので、空冷だの水冷だのって話とはまた別の問題が有るのかも知れない。
史上最強の空冷(油冷)ネイキッドのGSF1200なんて20km/L近く走れるんだから、空冷だの水冷だのって話とはまた別の何かしらの問題が有るのかも知れない。
それが何か、ってのは控えておくけれど。

ちなみに、2倍以上のパワーが出るZZR1400は、ゼファー1100の1.5倍~場合によって2倍くらい燃費が良いので、カワサキだってやれば出来るんだけどね。
まぁ、メーカーが同じってだけで、全く別のバイクなんだけど。

 

熱いとか、1100ccの割にパワーが無いとか、パワー無い癖にガソリンをバカバカ食うとか、フロントが18インチだとか、リアを上げたらスタイルは良くなるけどちっとも曲がらないとか、ローに入れたら壊れそうな音がするとか、クラッチがやたら重いとか、プラグ代が倍掛るとか、カムカバーからオイルが漏れるとか、少なく無い問題点は有るけれど、意外とコンパクトなライディングポジションや、座り心地の上々なシート、そして何よりそのスタイル。
全ての面で最高のバイクだとは、尻が張り裂けてもちょっと言えない台詞では有るけれど、それでも大いに魅力の有るバイクで有るのは確かだろうと思う。
カワサキの空冷4発ってのは、やっぱ特別な存在だからね。
例えそのエンジンが水冷のボイジャーに由来すると言っても。

 

 

先日、このバイクに乗る機会が有った。
Z900RS。

ゼファーのような、或いは往年のZのような外観を持つ、最新のネイキッドスポーツ。
速い、軽い、足がもの凄く良い。
ガスチャージする程に乗った訳では無いけど、ゼファーに比べると燃費はかなり良いらしい。
なんせ上記のゼファーに乗ってた人が言うのだから間違いない。
ハイオクなのは致し方ないか。

そう、このバイクを購入したのは、以前我が家のゼファー1100を高値転売した彼。
2匹目のゼファーを狙った訳では無いが、今度は新車から大人気のZ900RSをゲットした。
どれくらい待ってたか、本人すら忘れるくらいの長い長い待ち時間だったみたいだけど、今や多くのバイクで似たような状況だからね。
このZ900RSやホンダのレブルなんかは、その中でも殊更に特殊な部類なのだろうけど。
レブル1100なんて、今や予約すら受けてくれない始末だから。
何時でも在庫は有りまっせなバイクも有るんだけどね。

 

実際、凄く良かった。
まぁ中身は最新のZ900なので、そりゃ良いのは当たり前なんだけど、とてもよかった。
足も、エンジンも、操作の軽さも、何もかも。
エンジンはゼファーの方が恰好良かったよね。
と、それ以外、何も言う事の無いバイクだった。
難点と言えば、新車で買えない事くらいなのかな。
そこが唯一、でも根幹をゆるがす問題か。
プラザの人が言ってた。
抽選販売だってさ。

まさにコレですわ。

 

MOTOR CYCLE

Posted by tommy