にせものがかり

見覚えのあるような無いような漢字が添えられた、とても見覚えのあるエンブレムが付いたサイレンサー。
何ら変哲も無く、偽物だ。

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中国の製造能力は目を見張る物が有って、製造に関しては何ら問題は無い。
問題は無い以前に、すでにこの世の中では中国製の製品を避けようも無いのが実情だ。
アメリカンコンポーネンツもロシアンコンポーネンツも中身は全部台湾だと、ドツいて宇宙ステーションを直そうとしたロシア人がその昔に居た事を覚えてる人も多いだろう。
目を瞑るとエアロスミスが聞こえてくる人もきっと。

だがその宇宙ステーション。
現在のISSは耐用年数を限界突破して2030年までの運用が決まったものの、新たに建造しない限りはそれ以降は中国の天宮号が唯一の宇宙ステーションと成る。
ロシアが国際宇宙ステーションプロジェクトから撤退した現在、宇宙ステーションにおいてはアメリカの存在も今や昔の話に成るのも遠くない。

宇宙望遠鏡に関してはハッブル宇宙望遠鏡の後継としてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が運用されており、2025年にはナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が、スペースXの大型ロケットで打ち上げ予定されている。
中国は巡天宇宙望遠鏡が2024年に打ち上げ予定。
宇宙望遠鏡の性能としてはアメリカが一日の長が有るもののの、巡天宇宙望遠鏡は天宮号とドッキングしてメンテナンス出来る予定と成っているので、宇宙望遠鏡の最大の問題点であるメンテナンス業務においては大きく先んじてると言えるのかも。

と、まぁそんな具合に、100円ショップの使い捨て雑貨から宇宙ステーションまで、幅広く中国製品が浸透している現在。
知ってる物も知らない物も、どれもこれもが中国製。
もはや欠かす事が出来ない存在と成ってるのだが、問題が無い訳でも無い。

最大の問題は人間性。
製品自体よりも、その製品をリリースしてる側の問題。
カルチャーの違いって言うのかな。
左手にリンゴを持って齧りながら、私はリンゴなんて見た事も無いアルよと堂々と言える、そんなカルチャーの違い。
日本で普通に生まれ育った人間からしたら信じがたいけれど、別に中国に限った話では無いものの世界にはそんな人間は極々普通に居る。
そんな悪役レスラーみたいな人間が。
それがエディ・ゲレロならズルして頂くのはとても素晴らしいエンターテイメントなのだけど、実生活においてそれをやられると、こちらのメンタルが持たないので勘弁願いたいばかりだ。
勘弁願いたいって言うか、壁に叩きつけられたマウスに始まり最終的には自分の胃まで破壊させられたんだけどね。
ともあれそんなカルチャーの違いが、モラルとして、或いは法律として問題と成り得る。

上のアクラポビッチの偽物にしても同様。
昨今では大きく減少はしてるのだろうけど、それでもやっぱり堂々と偽物を売る人間や集団は存在し、その行為に何らの疑問も持ち合わせていない価値観の人間も一定数存在する。
え?何が悪いの??と、真顔で聞いてくる人間が。
作ってる製品自体には問題無くても、その製品を作る事自体、そして作ってるお前に問題が大いに有るよ、って場合が現在もまだ生き残っている。

 

偽物ってのはこの世に数多く存在し、それを購入する層は2つに分かれる。
一つはそれを知らないで購入する場合。
実際、この偽ビッチを定価の1割引きでアマゾンで販売したら、それを買う人は偽物だとは思わない人が多いだろう。
ロレックスの時計だって同じ。
もし仮にデパートの時計売り場で定価でスーパーコピーが売られていたら、それを偽物だと瞬時に見極められる人間なんてそうそう居ないと思う。

一方、偽物だと分かった上で購入する層もまた存在する。
私のメールの迷惑メールフォルダには、毎日のように『最高品質スーパーコピーブランド』を謳うネットショップのお誘いメールがやってくる。
アマゾンの異常ログイン通知と、一向に解約されないETCの解約通告と、ヤマトのお荷物預かりメールと、取引の無いカード会社や銀行からの大切なお知らせ、なんかと一緒に毎日のように届く。
コピー品のバッグや時計の売り込みが。
売り込み、と書いたけれど、金払ったからと本当に届くかどうかは知らないけれどね。

そんなコピーを謳うネットショップから路地裏のイラン人の露店まで。
そんな明らかに偽物を売ってる店から偽物を買う層も、また存在する。
そのコピー品を購入する、または個人的に使用する事自体は法律によって禁止はされない。
道端でロレックスを3000円で買ったとしても、それで逮捕されたり時計を没収される事は無い。

ただし、2022年10月からは、個人使用が目的で有っても知的財産権を侵害するコピー商品の日本への持ち込みは禁止された。
つまり、香港でブルガリの時計を100香港ドルで買ったり、海外のネットショップで定価の1/10の価格でブランド時計を買ったら、税関で没収される可能性が有るって事。

販売目的の場合は、それは勿論昔から違法なので、今さら言うまでもない事だろう。
商標法の違反による罰則は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方と結構厳しい。
くれぐれも偽物を販売しないように注意しよう。
小遣い稼ぎの代償としてはちょっと割に合わないからね。

このように偽ブランドを売るのは法律違反なのだけど、買うのは当人の価値観と言える。
明らかに商標違反してる商品の場合も、または違法とは言えないまでも明らかにパクってる商品を購入する場合も、どちらも購入者には法的な規制は今の所は無い。
日本国内で購入する場合は。

 

例えばこんなルアー。
これは、タックルハウスのフィードポッパーと呼ばれるルアーのコピー商品。
見た目は同じ製品が本物の半分程の値段で売られている。
これは随分と昔からある偽物だけど、昨今でもメガバスのカゲロウやブルーブルーのブローウィンの偽物など、せっせせっせと新たな偽物作りが盛んに行われている。
ちなみに別の名前を名乗ってるので全然別の製品だよって詭弁の産物。

ルアー界で偽物が多いのは、それはオリジナルモデルが高額であり、かつコピー製品を作るのが容易で、さらにそれなりに販売が見込め、さらにさらに場所も取らないので流通もさせやすいから、ってのがその主な理由。
和太鼓のコピーを作ろうと思っても、そんなに売れないだろうし場所も食うのであんまり現実的ではないからね。

上のフィードポッパーは、本物は実売価格で3000円を超える、まぁまぁな高級品だったりする。
でもぶっちゃけ、たかだかプラスチック製品。
金型さえ出来たらパッコパッコと作れるので、容易に量産出来て安い値段で売りさばく事が出来る。
金型にしても、製品をスキャンしてデータを起こして切削まで今の中国メーカーなら容易にやってのけるし、物によってはその金型さえ本物が流出してるって話も有ったりする。
ラパラみたいに、バルサ材をルアーの形に旋盤で切削する工場を今から立ち上げるのはかなり敷居が高いが、インジェクション成形の設備は既に幾らでも有るので、その気に成れば来月からでもコピー商品を一から量産出来る会社は数多い。
ルアーなんて本当に安く作れるので、それなりの利益は見込める。

じゃぁ、なんでタックルハウスのルアーはあんなに高いんだよって、小学6年生みたいな事を言い出す人も居るかも知れないが、答えの一つは生みと育ての苦しみをすっ飛ばしてるから、ってのが上げられる。
たかだかルアーと言うけれど、その製造プロセスは結構手間が掛かっている。
一般的には、CADで設計してMCでABS樹脂のブロックを切削してプロトタイプを作成する。
それをテストして、また設計見直して、また切削してプロト2号を作って、またテストして...
と、メーカーによってはかなりの時間をプロトタイプの試作とテストに費やしている。

当然ながら、テストロットを幾つ生み出しても一円の利益も無い、そのくせにコストばっかりが掛かる作業な訳だ。
で、ようやく納得出来る製品が完成したら、金型を起こして製造に入る訳だが、それもすんなりとは進まないので、ここからもまた金型の修正などとコストは掛かってくる。
そんな生みの苦労を経て量産化が成され、大きな広告費や人的資産を使って宣伝して製品を育て上げて、ようやく地位を確立して安定した利益を生むように成るのだが、そこで美味しい部分を全部さらっていくのがコピー商品。
大部分の利益に成らない部分を省略して製造原価だけしか必要としないので、かなり安い値段で売っても利益が出る訳だ。
なんせ、テストも開発も宣伝も、製造以外のコストが掛かる部分は全部タックルハウスやメガバスがやってくれるんだから、半分の値段でコピー品を作ったらそりゃ儲かるさ。
ルアマガ1誌だけでも、4色1P広告で75万円もするので、その費用だけでも莫大な物と成るのだから。
そんな苦労してコスト支払った上で、見た目クリソツなコピー品を売られたらたまったもんじゃないのがメーカーの本音だろう。

見た目が似てるだけで中身が違うのか、ってのはこれまた難しい問題で、違うと言えば違うけど違わないと言えば違わないのが実際の所。
コピー品だからと、フローティングルアーが沈没してり、横向いたり、或いは後ろに飛んでったりはしない。
オリジナルと違うと言えば違うのだろうけど、だからとそれが致命的な差と成るかと言えば必ずしもそうとも言い切れない。
飛距離や潜行レンジと言った数値として現れる部分に違いは有っても、所詮は魚を相手にする道具なので、結局は良くも悪くも魚の都合次第。
微妙な違いが結果に繋がるかどうかは、状況によるってのが実際の所だろう。

 

商標権や知的財産権を侵害した商品を売るのは法律違反なのだけど、買うのは当人の価値観と言える。
明らかに法律に違反してる商品の場合も、違法とは言えないまでも明らかにパクってる商品を購入する場合も、どちらも購入者には法的な規制は今の所は無い。
日本国内で購入する場合は。

価値観、つまりは本人がそれで納得できるか否かが、一つの分かれ目と成る。
例えば本物カゲロウをキャストする他の釣り人と並んで偽カゲロウをキャストする自分。
例えば本物バーキンを持つ友人と結婚披露宴で出会った偽バーキンを持つ自分。
例えば道の駅で本物アクラを組んだバイクの横に停める偽ビッチの自分。

それらを威風堂々と許容できる価値観なら、別に偽物を使う事に何ら問題は無いとは思う。
そもそも私にとやかく言う権利なんて無いのだけど。

ただそれらに何かしら思う事が有るのなら、偽物は買わないで本物を選ぶ方が良いと思う。
今どきの上手い事作られた偽物なんて、それが偽物か本物かなんてぱっと見てもほぼ自分しか解らないのだけども、自分だけは十二分にそれを理解してる事だろう。
その自分自身の行いに何かしらみじめな思いをするのなら、やっぱり本物を選んでおくのが良いかと思う。

私の場合、偽物を堂々と持つのは気が引けるし、みじめな気分にも成るので、偽物は遠慮させて貰いたい。
偽物のバッグもブランドウォッチも遠慮しておく。
そんな人はきっと多いだろうけど、でも一方でまたモノによって気にした気にしなかったりな場合も多いだろう。
私だってそうで、ごはんがくっつかないブツブツしゃもじがブランド品だろうと100円ショップのモノだろうと、洗濯物を干すハンガーがどこの製品だろうと、それを大して気にする事は無い。
時計のコピー商品は遠慮したいけれど、洗濯ハンガーは東和産業だろうとそれにそっくりなノーブランド品だろうと、それを気にした経験なんて無い。
洗濯ばさみもゴミ袋も、それらにはブランドは確かに存在するけれど、それを頑ななまでにこだわって選んでるかと言えば、私の場合はハッキリとノーと言える。
コピー製品を使う事はその業界を破壊する事に繋がるんだと声高に主張する人も居るけれど、その人とて洗濯ばさみ業界やホッチキスの針業界まで面倒は見てくれないだろう。

結局、その辺は自分で自分に線を引いてるって事。
それが人によってはルアーや時計やサイレンサーだってオッケーな場合も有れば、シャーペンの芯でさえノーな場合も有る。
それが価値観の違い。
それをとやかく言っても、仕方ない話だ。
買ったり使ったりするのはね。

 

ちなみに上に載せた偽ビッチ。
中国のアリババなら130元=2500円ほどで買える。
中国からの送料はEMSなら5kgまでで4000円程。
輸入代行業者の手数料と各種税金を支払っても、1万円も有れば十分におつりが来る計算と成る。

日本で本物ビッチを買ったら8~10万円くらいするので、己のハートが許すのならこの偽ビッチは選択肢として十分に考慮出来る存在だろうと思う。
性能??
サイレンサー1個で天地がひっくり返るような性能差なんて生まれないので、見た目が恰好良くてデカい音が鳴ればそれでイイんじゃないかな。
詰まるマフラーはエンジンブローに繋がるけれど、抜ける分にはエンジンには悪く無いのだから。
社会には悪だとしても。
だから購入に関しては好きにすりゃイイのだけど、前述したように昨年10月からは個人使用で有っても偽物の輸入は税関で没収される可能性が有る事を十分に考慮しておこう。
没収されたしても損失は誰も補填してくれない。
己のセコさを後悔しながら枕を涙で濡らす以外に成す術は無いのだから、その辺は考慮と覚悟が必要だ。

なお、利益以上に大きな代償を支払う事と成るので、売るのは絶対に止めておいた方が良いと思う。
逮捕なんてビクともしないヤケクソな人に対しては、特に何をどうこう言う権利なんて私には無いんだけどさ。
でもカタギに生きたいなら止めておいた方が良いと思うな。

 

MOTOR CYCLE

Posted by tommy