腐ったみかんの方程式
自分のルールに従って生きる。
少年漫画の主人公の場合は、それはとても魅力的かつ王道な生き方だろうと思う。
困った事が有ったら仲間たちと力を合わせて乗り越えて、女の子が暴漢に襲われてたら即座に悪人をやっつける。
行動理念はマイルール。
俺は、俺の魂に従って生きていくんだ。
それは少年漫画の主人公としては、とても正しい姿だろう。
困った事が有ったらGoogleで検索して、女の子が暴漢に襲われてたら110番する主人公は、少なくとも週刊少年ジャンプの主人公にはふさわしくない。
すぐに不慮の事故に遭って異世界に転生して無双してウッハウッハしてスローライフ送る展開に成らない限り、月刊少年シリウスでもノーサンキューを食らってしまうだろう。
現実社会においても、世間の風潮なんて気にせずに自分のルールや価値観で生きるのは、場合にもよるがそれはとても結構な事だろうと思う。
日本一周ツーリングのお供にNSR50を選んでも良いし、大家族のお父さんがフェアレディＺを買うのもまた結構な話だ。
FANZAの購入履歴が全て妊婦モノで埋め尽くされてる人も、それはそれで映像コンテンツの範囲内なら好きにして貰えば結構な事。
だが、世の中には自分ルールよりも優先される社会のルールが存在する。
これが飛行機が墜落して自分一人だけが漂着した絶海の孤島ならば、ヤケクソに成って生えてる木を全て切り倒しても、貴重な水源で水浴びしても、枕元でうんこしても、それは誰にとやかく言われる筋合いはあまり無い。
絶海の孤島で有っても勝手に木を切り倒すのは何らかの法律的な問題は有るかも知れないが、役所の人は怒りに来ないから問題としては表面に現れる事は無いだろう。
てか、先に助けてくれって話だから。
日本は個人に多くの自由が保障されている国家では有るが、あくまでもそれは大きなルールの範囲内での事で有る事を理解しておきたい。
バイクは自由に成れた気がする乗り物で有るのは、すでに尾崎豊によって1980年代に確立された事。
自由に成れる訳では無い。
自由に成れた気がしただけの事なので、その辺を十分に注意したい所だ。
幾らオレはオレのルールで自由に走るんだ！と言った所で、バイクは左側通行せねば成らないし、マグナ50では高速道路には乗れない。
例え百戦錬磨の国際ライダーが最新のリッターSSに乗ってようとも、昨日小型AT免許取った人が乗るPCXと制限速度は変わらない。
事故なんて絶対に起こさないぜと自信に溢れてようとも、公道を走るなら自賠責保険には入らなければ成らない。
それが必要最低限のルール。
日帰りツーリングの筈が帰るのが嫌に成ってそのまま石垣島まで流れていくのは本人の問題なので結構なのだけど、だからとこのままサイパンまで行ってやるぜと意気込んだ所で、パスポートが無ければ出入国は出来ないし、カルネ（物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約…..）まぁ要するに書類が無いと簡単にバイクを海外に持ち出す事は出来ないルールに成ってる。
幾らバイクは自由だと、俺は俺のルールで生きていくんだと訴えた所で、世間様を相手にはどうにも成らないのが無情な現実だ。
実は私は、時折車椅子を押す事が有るのだけど、公園や海辺の散歩道の入り口などでこんなバリケードに出会う事が有る。
これは、子供の飛び出し防止と、バイクの通行を妨げるガード。
どこも一応はギリ車椅子が通れるようには作られてるみたいだけど、ここまで鉄壁のガードが成されたら中々に難しい。
場合によって、ポールが抜けたり手で押したら開く扉タイプの場合も有るけれども、どの場合にせよ車椅子に乗ってる本人が一人で通り抜けるのは困難だ。
『バイク通行禁止』
看板に書かれたこの文字を見て、みんながUターンしたらこんな大げさな柵は要らない。
子供の飛び出し対策は必要だけども、少なくともここまで要塞化する必要は無いだろう。
歩行者も通り難いし無駄な税金は掛かるし良い事なんて一つも無い。
喜んでるのは鉄柵を製造および施工してる業者だけで、他に誰も喜んでる人は居ない。
『バイク通行禁止』
識字率99％の日本において、こんな簡単な文字が読めない人間はそう多くないとは思うのだけど、それでも進入する人間が居る、もしくは柵が無いと進入するだろうと思われているのでこんな柵が作られる。
子供の飛び出しの場合は、文字だけで解決するのは難しいだろう。
だがバイクに乗れる程度に脳みそが発達した人間を相手にするなら、本来ならば文字だけで十分に事は成す筈なのだが、残念ながら文字は読めても脳で正しく処理できない人間が一定数居るので、バリケードとも言える大げさな柵が必要と成る。
確かにレアなケースなのだけど、1000人が守ろうと10000人が守ろうと、たった1人が公園にバイクで侵入して、そこで子供に怪我でもさせたら大きな問題に成る。
1人の愚行が、他の多くのバイク乗りだけで無く、バイクに乗らない他の人達へも大きな迷惑を掛ける事に成る。
一つの腐ったみかんが箱に入ってる他のみかんを腐らせるだけならまだしも、場合によってはさらに隣の箱のりんごとバナナと白菜も腐らせて、衣服から壁から家全体も腐らせて、いずれは町内から国に広がり海を越えて世界を腐海の底へと沈めてしまう。
腐ったみかんとは本当に恐ろしい。
それが現実だ。
世の中には自分ルールよりも優先される社会のルールが存在し、それを守らないと無関係の多くの人達に多大な迷惑を掛ける事を十分に頭に叩き込んでおきたい。
行儀の悪いバイク乗りのせいで峠がバイク通行禁止に成るならまだしも、遊歩道に入る車椅子までもが通行困難に陥るのは理不尽ってものだよ。
飛び出す子供を守る為、ってのは理解が得られても、柵が無かったらバイクが入ってくるのでスマンかったなと言われたら、そりゃちょっと納得できない話だから。
今現在、元気にバイクに乗ってる人も、数十年したら車椅子に乗ってるかも知れない。
もしかしたら、明日病院に運ばれて来月には車椅子に乗ってる身に成ってるかも知れない。
家族の車椅子を押す日が来るかもしれない。
今までの事は今更仕方ないとして、今後この世のバイク乗りが一人ひとりの自覚有る行動って奴が出来ていれば、いずれこんな邪魔な柵は無くなるかも知れない。
それは一人ひとりに掛かっている。
だから、日本語くらいはちゃんと読んでちゃんと理解しよう。
バイク乗ってる奴はアホばっかり、って思われるだけでは済まない、それ以外の全く無関係な老若男女多くの人達に大きな迷惑を掛けてる現実を理解しよう。
だから日本語が読めない小数の人にお願いしたい。
万葉集は読めなくても『バイク通行禁止』くらいは読めるようになろうよと。
なお、日本語が読めてそれを正しく脳みそで処理できる大多数の人達は、その調子でちゃんと日本語を読んで書かれてる通りの行動を行おう。
それが普通。
そんな事をブツブツと書いてる私は現在、一部の悪い人間のせいでちょっとした窮地に立たされているのだ。
それはネットバンキング。
ログイン時に求められる合言葉が解らんように成ってしまった、と言う、非常にどん臭い窮地に立たされているのだ。
やだ、あたし、どん臭い。
銀行にショッピングにサーバーにと、山ほど有るログインIDとパスワードの一覧は整理して保存してるのだけど、どういう訳だかこの銀行のこの合言葉だけが漏れていたみたい。
違う合言葉なら確実に解るのだけど、残念ながら合言葉の切り替えは出来ない無情の仕様。
つまり、この合言葉が頑張って記憶をほじくって頑張って尻からヒネリ出さなきゃ成らない訳だ。
二回間違ってるので恐らくチャンスは後一回。
これを失敗したら、何かと面倒な事に成ってしまう。
ああ…困った。
昔はIDとパスだけでログイン出来たのに、セキュリティが強化されてどんどん面倒に成ってきた昨今。
この面倒なシステムを強要される世の中を作った一部の悪人が悪いのか、それともこの面倒なシステムに着いて行けてないどん臭い私が悪いのか。
そんな事を言っても仕方ないので、そろそろ腹をくくる時が来たようだ。
頑張って正しい答えを尻からヒネリ出してやろうと思う。