別居のススメ
悪いこと言わないから絶対止めた方が良い。
私がそう熱く語ったのは、今度家を建てる予定だよって人に対して。
GarageLife (ガレージライフ) 2023年7月号 Vol.96 [雑誌] 新品価格 |
ガレージライフ。
バイクに乗ってる人ならきっと憧れる生き方だろうと思う。
特にリビングと直結するお洒落ガレージが有る生活って憧れてしまう。
そこでコーヒー飲みながら、ビンテージドゥカティのクランクケースをネバーダルで磨く、なんて生活に夢を抱く人もきっと少なく無いんじゃ無いかと思う。
この新たに家を建てようって人もそんな一人で、リビング直結のガレージを作りたいらしい。
まさに男の夢の具現化。
素晴らしきガレージライフの幕開けだ。
でも言っておきたい。
止めた方がイイと。
ガラスやドアで完全に仕切られるならまだしも、居住エリアにバイクや車を生で突っ込むのは止めた方が良いと。
生はヤバイよ、生は、と。
最大の理由は匂い。
バイクって臭いんだ。
ヘルメットもグローブもライダー自身も何もかもが臭いんだけど、バイクって室内に入れると本当に臭いのが身に染みる。
普段はまず思う事は無いだろうけど、実際の所バイクってかなり臭い。
タイヤはゴム臭いし、マフラーはエンジン切ってても排気ガス臭いし、ブレーキはブレーキ臭いし、最近のはそうでも無いけどキャブ付いてた時代のバイクはやっぱりガソリン臭かった。
走り終えた直後のまだ熱いバイクを室内に入れると良く解る。
バイクってバイク臭いよねって事が。
走り終えた直後のまだ熱いバイクは、本当に臭い。
ラグビー部の練習直後のミーティングを狭い部室でするみたいな話だから、命に係わる匂いだって事はご理解頂けるだろう。
死んだらどうする!
何度か書いてるけれども、そうは言いつつ我が家のリビングには996を置いている。
買ったは良いけどまともに乗れなかったので、今やリビングで文鎮と化してるのだ。
格好は抜群なんだけどね、あれは乗ってたら多分死ぬなって思ったから。
そんな、とっくに息の根の止まった飾り物ってなら匂いはほぼ気にする事は無い。
博物館のバイクや恐竜の化石のレプリカと同じで、匂いに悩まされる事は無い。
別にタイヤはゴム臭く無いし、ガソリン入れてないからガソリン臭く無いし、エンジン掛からないから勿論排気ガス臭くもない。
すっごい邪魔な事を除けば、特に実害はない。
凄く邪魔な木彫りの熊を置いてるのと違いは無いので、特に実害はない。
息の根が止まってればね。
だが、外から乗ってきたハヤブサをそのままリビングに突っ込んだら、きっとリビング中はハヤブサ臭く成ってしまうと思う。
木彫りの熊ちゃんなら邪魔なだけだけど、元気ビンビコに生きてる熊さんがリビングに居たら凄く熊臭くなるだろう。
ってのと同じく、外を元気に走ってきた直後のホッカホカのバイクをリビングに入れたら凄くバイク臭くなるのは必然だ。
そして、とても体に悪そうな何かしらの化学物質が盛大に蒸発する事だろうと思う。
キャブ付いててガソリンタンクが大気開放されてた時代とは違い、今のバイクはVOCの対策が成されてるとは言えども、それでも屋外での使用を前提としてるので、締め切った屋内では事情はちょい異なる。
昔の2ストに比べりゃ遥かにマシなのは確かだけども。
お子様の居る家庭ではちょっとお勧めしかねる環境だね。
せっかくシックハウス対策にあれこれ規制されてるってのに、室内にガソリン入ったバイクなんて置いたら全部台無しですわ。
本人はそれで結構だろうけど家族が困ってしまう。
私がそれを最初に思ったのは、引越し前に住んでたご近所さん。
ジャガーMK2だったかのクラシックカーを持つ、大きな家に住んでる方だったのだが、そのお宅がまさにリビング直結のお洒落ガレージだったのだ。
もう大変。
バイクなら押して入れるんだけど、車はエンジン掛けなきゃ動かないので大変だ。
だから、仕方ないのでガレージにはバックで車庫入れするんだけど、リビングとはドア一枚隔てただけのガレージなので、ジャガーが入ると排気ガスがリビングへと漏れてしまうのだ。
単なる住居用のドアじゃ、閉めてるだけでは排気ガスの流入を止めるのは難しい。
どこかの研究所みたいなドアじゃ無い限りは。
タイヤからはゴムの匂い。
キャブからはガソリンの匂い。
エキパイからは排気ガスの匂い。
エンジン本体からはオイルの匂い。
まだ熱を持ったジャガーMK2はとても臭い。
すっごいジャガー臭い。
なんせ1960年代の車。
無鉛仕様だったのが幸いとは言えども、今の時代とは比べ物に成らない、まさに毒ガス発生装置な時代の車。
そりゃ臭い、って以前に命に係わる話だよ。
まぁ、最新のプリウスだろうとレクサスだろうと、何ならテスラでもニッサンのリーフでも家の中に車を入れたら臭いだろうけどね。
21世紀においても、タイヤのゴム臭さは克服されてないのだから。
そんなの誰も克服しようとは思ってないだろうから、改善される事なんて無いだろうけどさ。
ゴム臭カット!なんてタイヤを開発する変態はこの世には存在しないのだから。
本人は結構だと思う。
FCRから発せられるガソリンの匂いや、エキパイから発せられる排気ガスの残り香や燃焼室から流れ出た匂い、暗闇の中アスファルトを刻み付けたタイヤの匂いに包まれるのも、本人ならそりゃ結構だろう。
その昔にカストロールのA747を灰皿で炙って香りを楽しんでた変態も居たけど、自分一人で楽しむ分にはそれもまた結構だろうと思う。
特にお勧めはしないけれど。
ただそれは、家庭環境の悪化を招く事は火を見るより明らか。
屋内の環境悪化は家庭環境の悪化に繋がるのは明らか。
オイル警告燈の点灯した2ストのように、このまま突き進めば考えるまでも無く悲惨な結果が待ち構えてるのは明白な事だ。
まぁそんな訳で、ガレージは住居と別棟、少なくとも何かしらの隔壁で完全に隔離させるのがベストだろうと私は思う。
家族と別居したくないなら、ゴム臭い車やガソリン臭いバイクとは別居しておいた方が身の為だよと、私はそう思うのだ。