自分探しの旅は続く

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場所は、神戸の端っこのとある小さなコインパーキング。
この日私は、またもや近所に住んでる友人と二人、車で神戸の端っこの方へと出かけていた。

目的はちょっとした知り合いの家。
引越し祝いを兼ねて、ちょっと顔出しておこうと、まぁそんな用事だ。

小高い丘の上の街。
静かな街。
お知り合いの方が引っ越したのはそんな静かな素敵な街。

ママチャリで登るのは大変そうだと思いつつも、カーナビ様のおっしゃるままに車を走らせ目的地へ、引越しされた家へと向かった。
引越しされた家はかなりゴージャスなマンション。
エントランスを入ったらホテルのロビーみたいなのが有るような、そんなゴージャスマンション。

でも来客用のパーキングは無いらしいので、直ぐ近くのパーキングへと向かった。
目と鼻の先に有る小さなパーキングへと。

パーキングは結構狭い。
7~8台程で満タンになる程度のキャパだろうか?
ふと見ると、空いてるスペースは奥に1つか2つ。
パーキングの入り口にはコンパクトカーが一台、頭から突っ込んでる。

きっとこれから駐車する所なんだろう。
私は、そのパーキングのすぐ近く、肉眼で視認出来るくらいにすぐ近くのパーキングへと移動した。
そのパーキングもまた狭い。
ここも10台程で満タンになる程度のキャパだろうか?
先程と大体似たようなスペック。

空いてるのは奥の方に2台分。
頭から突っ込んだら入れれないっぽいので、尻からパーキングに突っ込む作戦を取るのがベストだろう。
私はそろりとバックしてパーキングへと入り、そして所定の位置へと駐車した。
溝に落ちたり対戦車地雷踏んで爆発したりと、そんな気の利いたドラマチックな事は何も無く。

車を降りパーキングを出ようとした私達にコンパクトカーが目に入った。
パーキング入り口に斜めに突っ込んでとうせんぼしてるコンパクトカーが目に入った。

何?
強盗か?
白昼堂々と強盗か?

と思いきや何事も無く、単にパーキングに頭から斜めに突っ込んでただけ。
20代半ばって所のお兄ちゃんが、パーキングに頭から斜めに突っ込んでただけの事だ。
見ると、最初に行ったパーキングに頭から突っ込んでた車だ。

何だ。
モヒカンの強盗団が出たのかと思ったわ。
その割りに車は可愛いとは思ったけど。
ってか、何やってんだこの車は?

『あ、お土産忘れた!』

エントランスまで歩いて来た私達は、お互い手ぶらなのに気付いたのだ。
折角お土産に高級菓子を買ってきたのに、これじゃ何やってんだか解らない。
カレー煎餅が何袋も買えるような、高級なお菓子を阪急で買ってきたってのに。

私は小走りで先程のパーキングへと向かった。
後部座席にポイっと置かれたお土産のお菓子を取りに車へと戻った。

すると、パーキング入り口には斜めに突っ込んでとうせんぼしてるコンパクトカーの姿が。
何だ?
今度は通行料でも取ろうって言うのか?

見ると、先程頭から斜めに突っ込んでたコンパクトカー。
見なくても分かる、それくらい。
少し違ってたのは、今回は尻から斜めに突っ込んでたのだ。
さっきは頭からだったけど、今度は尻から突っ込んでた。

一体何がしたいんだろう?
今にも泣きそうな顔のお兄ちゃんを尻目に、車へと戻りお土産を手に再びパーキングを後にした。
何かを訴えかけるかのようなお兄ちゃんの視線をビシビシと浴びながら。

入らないんですぅ
車庫入れ出来ないんですぅ

とでも言いたげなそのお兄ちゃんの視線を尻目に、何も気付かない振りして私はスタコラと歩いて去って行った。
ぶつけるなよ!
絶対に私の車にはぶつけんじゃないぞ!
とだけ強く心に念じながら。

入らないなら入らないと、ちゃんと口で言ってくれれば良かったのにね。
もっとも、何処の誰だか知らない人の車を車庫入れしてやる義理もなければぶつけたときの責任も取れないので

そんなん知らんがな

としか言えないのだけども。

お土産渡して何だかんだで1時間程。
引越ししたてで自宅ラブな期間に余り他人が長居するのも嫌だろうから今回は手短に切り上げ、そして先程のパーキングへと。

すると、その入り口には.....
もうコンパクトカーの姿は無かった。
泣きそうだったあのお兄ちゃんの姿も、何かを訴えかけてた死にそうな瞳もそこには無かった。

良かった、ちゃんとパーキングに入れられたんだね。

と思いきや、車もそのパーキングには無かった。
スペースはポツポツ空いてるんだけど。

ああ、ココはボクには向いてないと諦めたのか。
そうか....
自分探しの旅に、自分のパーキング探しの旅に出かけたんだね。

それ以来、そのコンパクトカーとお兄ちゃんの姿は見ていない。
今はどこのパーキングで立ち往生してるのかは解らない。
もしかしたらあなたの街のパーキングで立ち往生してるかも知れない。
もしかしたら自分のパーキング探しの旅にインドまで行ったかも知れない。
もしかしたらアフリカの聞いた事も無い小さな国に流れ着いたかも知れない。
もう誰にも解らない。
本人だってきっと解らない。
自分で自分の行動が、何が何だか解らない。

でも続くのだ。
自分探しの、自分のパーキング探しの旅は続くのだ。
車庫入れが出来る、その日が来るまで永遠に。

CAR

Posted by tommy