困惑のフィラーフラップ

この日私はポルシェのハンドルを握っていた。
ポルシェ・カイエンのハンドルを。

私の車では無い。
ん、残念ながら違う。
とは言って別にレンタルした訳でも、盗んだポルシェで走り出した訳でも無い。
ただ単にガソリンスタンドにガソリンを入れに行っただけ。
まぁ話しは長くなるので、簡単に言えば単に知人の車を近所のスタンドまでガソリン入れに行った、って事。
特に気の効いた理由や涙が溢れるような物語が有る訳では無い。

他人の車って緊張する。
幾ら保険が降りると言っても、それはそれで大いに緊張するものだ。
それもポルシェと成ればなお更。
ちょっと口数が少なくなってしまうのも止むを得ないね。
まぁ一人で乗ってるのでそりゃ口数も少ないんだけど。

そんな緊張のポルシェはしかも左ハンドル。
私の人生において左ハンドルの経験は殆ど無い。
有るのは....この車、今回を含めて何度か乗ったことの有るこのケイマンくらい。
後はアルファにちょろっと乗った程度かな。
まぁともかく殆ど知らないレベル。
だから中々に緊張してしまう。
オムライスを巻く時よりも緊張してしまう。

でも、普通に走る分なら、ハンドルの位置なんて実際には右も左も大差は無い。
右折も左折も特に問題は無い。
自分の走ってる位置さえ把握していれば、ハンドルの左右は大きな問題には成らない。
沿道の駐車場から合流するときなんかを除いて。

例えば幹線道路沿いのコンビニの駐車場やガソリンスタンドからの合流。
アレって左ハンドルでは本当に見難いので、合流がとても難しい。
それとて慣れ次第なのかも知れないけれど、慣れる程に左ハンドルに乗った経験は無いので私には何とも言えない点だ。

問題。
そう、問題はガソリンスタンド。
そこの出口が問題だ。

そんな問題を抱えながらよりにもよってガソリンスタンドへ向かってるのだが、幸いな事に今回に限っては問題には成らない。
何故なら、これから向かうガソリンスタンドは店員さんの居るガソリンスタンドだから。
誘導から給油、窓ガラスの清掃にゴミ捨て、そして帰りの誘導まで全部面倒見てくれる。
これでセルフと殆ど料金変わらないんだからありがたい話しだね。

だから私は何ら臆する事無くガソリンスタンドへとケイマンを走らせた。
左ハンドルで有る事の問題は払拭された私は、ガソリンスタンドへとケイマンを走らせたのだ。
一つの懸案は解決したものの、もう一つ別の大きな懸案を抱えながら。

それは、給油のフィラーフラップの開け方が解らないって事だ。
ガソリン入れるのにどうやったらイイか解らないって事だ。
このままガソリンスタンドに突入したら、変な所を開けてしまって変な空気に成ってしまうって事だよ。

これがココア色の軽自動車なら微笑ましいハプニングで済むのかも知れないけれど、天下のポルシェのケイマン様が、変な所を開けてる場合じゃ無い。
まぁ自分の車じゃ無いのだから、口を尖がらせてポルシェをアピールしてても仕方ないんだけど、でもやっぱりポルシェは華麗に乗りたいもんだ。
たとえこの世の誰に何とも思われてなかろうとも。

コンビニにでも入って一旦車を停めて予行演習すれば良かったと思った。
探せばきっと何処かに給油のフィラーフラップを開けるボタンなりレバーが有る筈だから、一旦落ちついて探せば良かったと思った。
きっと何処かにある筈だから。

きっと、ってのは文字通り、額面どおりにきっと。
これが必ずしも有るとは限らないからね。

昔に乗ってたミニは給油口専用のカギで開けるタイプだったし、今乗ってる車はドアロックが解除されてたら給油のフィラーが手で開くタイプだから。
カギ突っ込んで開けるタイプは今時はそうそう無いと思うけど、ドアロックに連動してるタイプはちょこちょこ有ると思うな。

そんな具合に、この世の自動車は必ずしも運転席の周りに給油の為のフィラーフラップを開くボタンやレバーが有るとは限らない。
限らないのだけど、まぁきっと有る筈。
以前、この車に同乗してガソリンスタンドに入った時は、運転してた持ち主さんは何処かを触ってたからきっと有るのは違い無い。
問題は、それが何処だったか覚えて無いって事と、今更グローブボックスに入ってるかも知れない操作マニュアルをペラペラしてる時間は無いって事だ。
もう目的のガソリンスタンドは目の前なのだから。
大気圏に突入したガンダムよりも切迫した状況。
もうマニュアル読んでる暇は無い。
私はニュータイプじゃないので、そんな状況で落ち着いて説明書なんて読んでられない。

私は考えた。
左にウインカー出しながら、何処だったっけかと頭をフル回転させた。
ガソリンスタンドの敷地に入っても、尚も考えた。
店員さんに誘導されながら、尻から変な汁が出そうなレベルで頭をフル回転させた。
何処だったっけ何処だったっけかと。

きっと目の前でオーライオーライしてる店員さんも不安だったろうと思う。
パラパラを踊るコナン君のような真剣な表情でポルシェを進める私に、すぐ目の前でオーライオーライしてる店員さんは底知れない不安感を抱いただろうと思う。
こいつ、ガソリン入れるだけでどれだけ一杯一杯やねんと。

ハイオク満タン、カードで。

不敵な笑みをこぼしながら、私はガソリンスタンドの店員さんにそう伝えた。
エンジンを止める刹那、そのギリギリのタイミングで思い出した私は、ちょっと口を尖がらせながら得意気な顔で伝えた。

フ...容易い、フィラーフラップなど容易いわ。
それは....ココだぁ!!

私はフィラーフラップで有ろうボタンをおもむろにボタンを操作した。
その時開いたのは、正しくフィラーフラップか、或いは良くあるボンネットか、それとも店員さんの口なのか?
真実は何時も一つ!
答えは劇場版へ続く!

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