翳した掛矢に翻弄される（弐）
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それからさらに時は流れここ数年の話。
近所に住む友人の一人が山を持ってるので、今はそこで遊んでるんだよって話。
あ、私は遊んでない。
虫出るし。
主にはMTBのダウンヒル。
自分の山だからとバイクで走り回ったりしたら何かと問題あるし、邪魔だからと木を切り倒すのも範囲によっては許可が必要だったりと中々に面倒臭い。
山を持つって自由なようで意外と自由では無いらしい。
買った事無いから知らないけど。
買う予定も無いけれども。
山を持つ上での問題の一つが勝手に入ってくるバイク乗りだ。
林業が行われてる地域なのでその人の山にも枝林道が切り開かれている。
アトレーワゴンやジムニーがボッコボコに成る程度の広さだけど、バイクなら自由に走れる幅。
だから時折、お宝林道見つけた！っとばかりにやって来るトレールバイクが居るのだが、真に残念ながら私有地なので許可の無い立ち入りはお断りな訳だ。
私有地だからと立ち入りが禁止される訳でも無いんだけどね。
富士山みたいに。
でもそれは土地の所有者次第って奴なので、所有者がダメと言ったらダメなのだ。
なお、道路名が着けられてない細い林道は私有地な場合が多いので、立ち入る際はちゃんと確認しよう。
そして怒られたら謝罪してさっさと下ろう。
チェーンソウ持ったおじさんと山の中で揉めるのはお勧めしないので、ちゃんと謝って山を下るのが最善策だ。
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林道を走ってる人間は基本的に自己責任だと考えて林道を走っているだろう。
そりゃそうだ。
特に用事も無いのにわざわざ山の中に入り込んでるんだから。
林道越えなきゃ学校にも役場にも行けないとか、そんな山岳少数民族ならその限りでは無いけれど、まぁ大体はそうでは無いと思う。
自分の楽しみの為に自分の意思で特に用事も無いのに山に入り込んでるんだろうと。
自己責任とばかりに山に入り込んでる事だろう。
だが、何か事故が起きた場合は自己で責任を完結する事は出来ない。
事故の程度にもよるけれど、何かしらの行政機関が動き、そしてそこが私有地ならばその土地の所有者は何かしらの不具合を被る事と成る。
自己責任と言うけれど、自分で取れる責任なんて現実的に殆ど無いのだから。
崖に落ちて１週間もしたら責任なんて取りようも無いものね。
全ての後始末は自己責任と言ってる人以外の誰かに振りかかる訳だ。
その山の周辺．．．って周辺も全部山なんだけど、ともかくその周辺の山の所有者もバイクには快く思ってない。
思ってないと言うよりも明確な敵意すら持ってるような感じなので、公共される道はともかく枝の林道にはそこらのバイクが勝手に入り込めないように柵をガッチリと固めねば成らない訳だ。
立て看板一つで入ってこないなら苦労しないんだけど。
気持ちは良く解る、トレールバイクやトライアラーを買ったら山を分け入りたい気持ちは解るけれど、私有地は入っちゃダメだ。
書いてない私有地も沢山有るけれど、明確に進入禁止の旨が書かれてたらなお更に。
書くには書くだけの理由があるのだから。
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現在は謎の秘密結社みたいな柵を作って車は入れないようにはしてるのだが、バイクは何処からでも入れるので中々に難しい。
特にトライアラーの手に掛かったら、山全体をベルリンの壁みたいなので囲わないとどうにも成らない。
そりゃ無理だね。
侵入する強い意思を持った釣り人とトライアラーを食い止める術はない。
行く度に掛矢で杭を打って柵作ったり看板立てたりしてるのだけど、そろそろ限界に来てるみたいな。
所有者的には、別に誰が勝手に走ろうが山菜を盗もうが毒キノコに当たろうがどうでもイイ話なんだけども、周囲の地権者と警察はそう言う訳には行かないので中々に難しい。
林道や毒キノコの管理不届きを指摘されたら困っちゃうから。
私が掛矢を振り翳しに行く訳では無いのだけど、まぁ中々に大変な話だ。
掛矢にも、他の地権者を含む周囲にも、そして勝手に入ってくる林道ライダーにも翻弄されるってのは。
と、そんな事を思う。
嘘と言う名の掛矢を振り翳したお陰で、自分自身が訳解らなく成っちゃうくらいに自分で自分を翻弄してる何処かの国を見てるとそんな事を思う訳だ。
まだ14歳だった頃の、掛矢に翻弄されたあの日の自分を見てるように。
今回も主語は特に書かないけれど、そんな事をふと。