セレナの鼓動

やらずに後悔するくらいなら、やって後悔した方が良い

と、そんな無責任な事を言ってしまう人は、実生活において居るのかどうかは知らないけれども、物語の上では良く見聞きするフレーズでは有る。

 

時と場合、人や内容によってはそれもアリな考え方だとは思う。
就職や、学芸会の主役選挙や、サッカー部の先輩への告白とか。
そんな話ならば好きなようにすりゃ結構な話。
ラム肉で肉じゃがを作った私にしてもまた同様。
だけど、この世の誰しもがそんな温い生き方してる訳では無い。
誰しもが恋愛や肉じゃがが最大懸案事項な生き方してる訳では無いので、そんな無責任なアドバイスは良く吟味したい所だ。

やらずに後悔するくらいなら、やって後悔した方が良いよね♥

と、キューバ危機の際のケネディがそんな事を言い出したらえらい事に成ってたので、極めて重い責任有る立場の人は十分に吟味して欲しいと思う。
それをやるべきなのか、それともやるべきでは無いのか、を。

 

実際、世の中には止めておいた方が良い事は幾らでも有る。
絶対後悔するから止めておいた方がイイよ、なんて事は幾らでも。

高い橋の欄干を逆立ちで歩いてみたり。
小さな子供を抱えながら40歳にしてロックンローラーを目指してみたり。
甲子園球場横の国道43号線高架をフルスロットルで走ってみたり。
前を歩く銀色のラメラメスーツ着たパンチパーマのおじさんに膝カックンを仕掛けてみたり。

絶対後悔するから止めておいた方がイイよ、なんて事は幾らでも有る。
脱サラしてカレー屋を開くのはまだ幾らかの希望は有るかも知れないけれども、ナメック星で散髪屋を開くくらいに破綻しか有り得ない事はこの世に幾らでもある。
惑星フリーザならチャンスは有りそうだけど、ナメック星で散髪屋は流石にちょっと難しいな。
見渡す限り黄緑のハゲばっかりだものね。
触覚マッサージ屋ならまだしも散髪屋はちょっと難しい。

 

随分前にちょろっと書いたような、書いてないような。
セレナと言う、女の名前みたいなミニバンに乗ってる人が居る。
パノラミックルーフと呼ばれる大きなサンルーフが解放的だけど、雨漏りしてえらい目に遭ったセレナに乗ってた人が。
今は新しいセレナに乗ってる。
e Powerでは無い方の新しいセレナに乗ってる。
セレナ大好き。
きっと次の車もセレナ。
それなのに娘の名前は乃亜....なんて上手い具合に事は運ばないのが愛想の無い現実って奴だね。
ん、そんな上手い具合には行かないもんだよ。

 

ともかく、そんな女みたいな名前の車に悲劇が起こったのはある朝の事。
それは、自宅の車庫からセレナを出す際に起こった、リアクォーターパネル凹ましちゃった事件。

我が家にも車庫から出る際にポールが立ってるので何時巻き込んでしまうかとヒヤヒヤしてるのだけど、このセレナもまさにそれ。
ハンドルを何時もより余計に切りすぎたが為、内輪差の悲劇によりベコリ。
車も心もベコリと凹んだ悲劇。
ベコリの悲劇。

 

「歯を食いしばれ!こんな凹み、修正してやる!」

ガソリンタンク修正に使ったスタッド溶接機とスライディングハンマー、そして板金ハンマー一式を持って修正しようと無茶な事をし始めた。
何やら妙なテンションで、凹んだセレナを自分で修正しようと無茶な事を試みたのだ。
止めた方がイイよ、止めた方が絶対にイイって。
私はその暴挙を引きとめつつ、でもどうなるかちょっと見てみたくなりつつ、そんな複雑な思いを抱きながらも、やっぱり軽く引き止めておいた。
止めた方がイイよと。

 

道具は揃ってる。
上記したスタッド溶接機も、スライディングハンマーも。
塗装を剥がすサンダーも有る。
勿論コンプレッサーも有るし、スプレーガンも揃えてる。
塗料はロックペイントの2液を使える。
ポリパテもハイビルドプラサフも問題なく手に入る。

http://www4.rockpaint.co.jp/New/Mix/index.html

さらにはここで調色データを調べる事は出来る。
従って物理的には問題はない。
少なくとも缶スプレーで塗るよりは遥かに道具は揃ってる。
道具はね。

 

ちょい前に塗ったゼファー。
バイクならこれくらいには塗れる。
HBプラサフ→ゼットブラック→マルチトップクリヤー→コンパウンド仕上げ。
十分な道具と根性が有れば、意外とどうにか成るもんだ。
バイクならね。

こんな具合に、意外とテラテラヌメヌメに塗るのは難しく無いのだけど、あくまでそれはバイクのタンクやカウル程度の大きさなら、って話。
自動車のボディを塗るのは大変だ。
そんな作業場所無いし。

何より問題は肌。
所謂ゆず肌と呼ばれる、ポコポコした肌をしてるのが一般的な自動車。
塗装の不具合とされるのだけど、極一部を除いて昨今の自動車の塗装は大体はボコボコしてるもんだ。
これを手で同じような肌に塗るのは非常に難しい。
ってかそんなのそこらの民間人には無理な話だ。
ピカピカに塗るのは意外と難しくは無いのだけど、車全体は工場出荷状態のままのユズユズなのに一部分だけピカピカに塗ると、色によってはやたらと目立ってしまうのだ。

ちなみにその道のプロは、エアとシンナーの種類と希釈濃度と塗り方でこのボコボコを調整出来るらしい。
そんなの求められても困ってしまうんだけど。

 

車全体をテラテラに塗るのはド根性さえ有れば不可能では無い。
ぶっちゃけ、分厚く塗って#2000で研磨してコンパウンドで磨きまくってやれば、テカテカヌメヌメに仕上げれる。
研磨出来ないメタリックはともかく、ソリッドカラーならな簡単。
サンディングの手間さえ掛けれるなら何なら刷毛でだって塗れるんじゃないかな。
分厚く塗った後でペーパーで平滑にしてやれば良いのだから。
だが、クォーターパネルだけを他の部分と同じような肌で塗るのは非常に敷居が高い。
色にもよるけれど、仮に同じ色で塗ったとしても補修したのが丸解りに成っちゃうんだなこれが。

補修の痕跡が解ったからと、だから何よ?って話でも有るんだけどね。
どうせリアクォーターパネルなんて運転してたら自分じゃ絶対見えないし。

 

でもなぁ。
流石に自動車の板金を自分でやるのはなぁ。
どう思い描いても大失敗する未来しか見えない。
あまりの悲惨な出来に、放心してしまう未来しか見えやしない。

ほら、大きな星が点いたり消えたりしてるよ、あははは
出してくださいよー出してくださいよー
あははは

と、心が壊れてしまう未来しか見えてこないので、やっぱ止めといた方が良いだろうねと、ホットボンド引っ張りプーラーでお茶を濁しておいた。
こんな奴↓

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バイクのガソリンタンクやチャンバーの凹みを引っ張るのはちょっと心もとないけれど、自動車のボディパネルなら意外な程に使える。
何よりワッシャーやスタッド溶接に比べて塗装を剥がさなくて良いってのが嬉しい。
多少は波打っちゃうけれど、ベコって凹んだ部分を有る程度直すには十分に使える。
ただ、鋭角に折れた部分はこれじゃどうにも成らないので、素直に諦めるのもまた必要だ。
3000円で買った小さな道具でチマチマ直そうってんだから、そりゃ限界有るのも仕方無いさ。
だってボディリペアは、もっと大きな道具でバァーッってするもんな。
あははは。

 

 

そして歴史は繰り返す。
そして悲劇は繰り返す。
ここにまたリアクォーターパネルを凹ませたe Powerでは無い方の新しいセレナが。

そろそろ覚えようよ。
自分の家の出口にポール立ってるのを覚えようよ。

あははは。

MOTOR CYCLE

Posted by tommy