怪人・牛乳雑巾
仲本君は今日もバイクに乗る。
高校卒業と共にバイクの免許を取り、バイトに明け暮れようやく買った250ccのスポーツバイクに今日も乗る。
寒い日も、暑い日も、彼女の荒井さんと初めてチューした日も、その荒井さんと別れた日も、そして新たな彼女の高木さんに出会った日も。
雪はちょっとアレだけど、この梅雨時の大雨の中だって全然平気に乗る。
来る日も来る日もバイクに乗る。
仲本君は今日も明日もバイクに乗る。
高校卒業と共にバイクの免許を取り、バイトに明け暮れようやく買った相棒に、今日も明日も明後日も、仲本君はバイクに乗る。
梅雨の晴れ間の有る蒸し暑い日。
仲本君は、まだ付き合ってまもない高木さんの元へとバイクを走らせた。
高木さんのバイトする碇屋スーパーへと、パラ2サウンドを響かせながら相棒を走らせた。
「や、やぁ高木さん」
ヘルメットを脱ぎながら、バイトを終えたばかりの高木さんの元へと駆け寄る仲本君。
すると、今にも零れそうな大きな瞳で仲本君の顔をじーっと見つめながら、高木さんは言った。
仲本君の顔を覗き込みながら、言った。
「ねぇ仲本、顔、雑巾臭いよ」
問１．ヘルメットの内装を洗濯出来る事を知っていますか？
A．知っている
B．今知った
と言う訳で、きっと皆様ご存知だろうと思う。
アライやショウエイ等のヘルメットは内装が外せて、そして洗濯が出来るって事を。
他のメーカーは知らないけれど、少なくともアライとショウエイは内装が洗濯出来るって事を。
では聞きたい。
あなたの被るヘルメット、内装を洗濯したのは何時ですか？
と。
幼き頃よりアライ以外を被ると頭がズルズルに腐り落ちるぞと教えられて育った私は、今も変わらずアライを被り続けている。
ただひたすらにアライを被り続けている。
ただただひたすら、その信仰を貫いている。
がむしゃらなまでに。
梃子でも動かんとばかりに。
他のメーカーを被るなんて万死に値する！と言わんばかりに。
．．．．．VFXを除いて
ああ、VFXはなぁ、アレは仕方無い。
あの赤福餅みたいな造形にハートをズキュンと掴まれたら、V-CROSSのツルツル後頭部にはちょっと戻れないから。
だからVFXは例外としておく。
何事も例外なんてのは有るもんだよ。
人はそうそう真っ直ぐには進めやしない生き物なんだから。
何でも例外、誰でも寄り道、時にはちょっぴり浮気する事、なんて有るもんだよ。
いやでもね、VFXって凄く良いんだよ。
困った事に。
困ったもんだ。
基本的にはアライを、RX-7Xを被る私は、実は今使ってるので既に2個目だったりする。
歴代RX-7シリーズをずっと被り続けてるけれど、今被ってるXも2つ目。
大体3年で買い換えてるからね。
2015年に発売されたＸが2号機に成るのも必然って奴だ。
そろそろ出る筈のオールニューモデルは．．．．ん、まぁ考えとく。
出るのかな。
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システム内装はＸ1号機購入の際にスペアを1セット買ったので、2号機の分と合わせて3セット有る。
システム内装はほぼ痛まないので、割と長く使える。
システムパッドはさらに幾つか買ってるけれど、ここは消耗がちょい激しいので幾つかは既に処分してる。
従って現在はこれまた３セット。
3セット有れば洗濯しても何ら問題無く使える。
まぁ2セット有れば快適度は圧倒的に上がるので、最低1個はスペアの内装を買っておく事をお勧めしたいな。
ちなみに洗濯頻度は、良く乗ってる頃は最低でも週に2回。
今はあんまりバイクに乗ってないけれど、それでも週に1回は洗濯してる。
外してネットに入れて洗濯機に放り込むだけなので大した手間は掛からないんだけど。
丸洗いは乾燥時間の問題は有るけれど、内装だけなら簡単だ。
スペアを持ってたら尚更に。
こんなことを言ったらすっごくマメな人扱いされる事も有るんだけど、何週間もパンツ履きかえない人はそうそう居ないと思う。
そう言う仕事の人は別として。
マニア向けビジネスをやってるマニア向けな生き方してる人は別として。
ジーンズは居そうだけど、直接肌に接する衣類を何週間も洗濯しない、なんて人はきっと居ないと思う。
何週間も同じ靴下履いてる人もそうそう居ないと思う。
でもヘルメットの内装は、何週間どころか何ヶ月、それどころか何年も洗濯されない、なんて恐ろしい事も有る。
私は別に潔癖症では無いんだけど、流石にそれはちょっとなぁって。
顔にべったりと密着する部分なんだから、流石にそれはちょっとなぁって。
時は遡ってまだ十代の頃。
私はバイク屋でちょっとだけアルバイトしてた時期が有った。
CBR250Rをタダで貰った、あのバイク屋で。
そこのスタッフの一人がバイクで通勤してくるんだけど、毎朝爽やかな顔でオハヨーとやって来るのだけど、ある時、顔がすっごい雑巾臭かった事が有った。
バイトしてたのは夏休み中だった事も有ってか、これがもう本当に雑巾臭かった。
見た目は爽やかだけど顔はすっごい雑巾臭かった。
ヘルメット脱いで暫くしたら雑巾臭さも抜けるのか、それとも私の鼻が慣れるのか、ともかく昼時には既に雑巾臭さは気に成らなく成ったのだけど、閉店時間に成ると思うのだ。
ああ、また明日の朝、この人は爽やかな笑顔と共に雑巾臭を振りまくんだろうなと。
言えない。
そんな事、16歳だった当時の私には言えやしないよ。
お兄さん、雑巾臭いっすよ、なんてとても言えやしないよ。
今も言えないけど。
梅雨時の、汗と雨とで湿りに湿りまくったヘルメットの内装。
皮脂や皮膚の老廃物を食べながら、スクスクと育った名も知らない雑菌たち。
そろそろ新種のキノコの一本でも生えて来るんじゃ無いかって、そんなヤバい環境。
まさに腐海。
でもこれは決して珍しい訳では無い。
月一はおろか、何年も洗った事無いわって人も決して珍しくない。
だから私はちょっと問いたい。
問うてみたい。
問１．あなたはヘルメットの内装を洗濯出来る事を知っていますか？
問２．あなたはヘルメットの内装を何時洗濯しましたか？
問3．あなたは雑巾臭くないですか？
ハっ！！！と思った方は、明日の夜にでも洗濯しよう。
宿題して、歯を磨いて、ヘルメットの内装を洗濯しよう。
怪人・牛乳雑巾などと呼ばれる前に。