トルクレンチでナットを緩める-追補版

使い易い工具なんて幾らでも有るんだからわざわざトルクレンチでボルトやナットを緩めなくても良いのだけど、とは言えトルクレンチでボルトを緩める時に使うってのはどうなんだろう?
良く精度が狂うって言うけれど、実際にはどうなんだろうね?

トルクレンチでナットを緩める

この前書いたこの話の補足、と言う訳で。

 

実際の東日のシグナル式トルクレンチのパーツはこんな具合に細々としてるんだけど、ともかく今回の話に関係するところだけ、と言う訳で非常にざっくりとした断面図がこちら。

 

断面図(簡略)

(1)ヘッド
(2)ヘッドピン
(3)トグル
(4)スラスタ
(5)シート
(6)メーンスプリング
(7)ノブ
(8)ボディ

スタビレーは大きく構造は違い、KTCも若干異なるけれど、東日は概ねこんな感じ。

 

 

ヘッドの動き

ヘッドはラチェット部分から右側のピンク色の部分まで全部繋がっている。
ボディには1本のピンで接続され、支点と成るピンを中心に、矢印方向に有る程度の可動域が有る。

 

 

ボルトを締めた時の動きと力の加わり方

ボルトを締める時、ヘッドは反時計回り方向への力(C)が掛かる。
トグルを介してスラスタを後ろ方向へ押す(B)が、メーンスプリング(A)によって位置は保持される。
これが、設定トルクに達していない状態の時。

 

さらに力を加えるとスラスタを押す力(B)がメーンスプリング(A)に打ち勝ち、ヘッドソウ(ピンク部分)はヘッドピンを中心に反時計回り方向へ動く(C)
この時、ボディ内部とヘッドソウの一部分が接触する事でカッチンと音が鳴る。

 

概ね、これが一般的なシグナル式トルクレンチの構造。
根幹はメーンスプリング。
このスプリングの耐久性が悪いと、購入当初の精度は保てなくなる。
スプリングの品質はとても重要なのだけど、日々の管理もまた重要だ。
使わないときは最弱に合わせておこう、ってのはそう言う理由。
このスプリングは2000円くらいだったかな。
たかがバネだけどまぁまぁ高い。

 

 

トルクレンチでボルトを緩めた際の力の加わり方

で、こちらが今回の本題。
トルクレンチで緩めると言う行儀の悪い使い方した時。

ヘッド(ピンク部分)はヘッドピンを中心に時計回り方向へ力が加わる。
すぐにボディへ接触し、それ以上動かなく成る。
一方でトグルより後ろには何ら力は加わらない。
トルクレンチの内部に働く力は、ヘッドとボディとの接触部分(赤い丸印)に集約される事に成る。

 

例えば最大25N・mのQL25で、100N・mを超える力で締められたナットを緩めると言う暴挙に出た場合、考えられる破損箇所はヘッドソーとボディ内部との接触部分、或いはヘッドの支点と成るヘッドピン。
ラチェット機構を除いて、概ねこの2箇所のどっちかで壊れるんじゃ無いかと思う。

一方、トグルより後ろには特に影響は無いので、トルクレンチの精度の根幹と成る部分には影響は無いと考えられる。
どの道壊れちゃったら精度も何も有ったもんじゃ無いんだけど、少なくともトルクレンチが許容出来る範囲の緩め作業に使った所で、少なくともこの構造のトルクレンチの場合なら精度には特に関係無いんじゃ無いかな、と私は思う。

 

ちなみに東日はこのように回答してる。

QLやMTQLなど多くのプリセット形トルクレンチに、締め/緩め(戻し)切り替え用の「ラチェットレバー」がありますが、取扱説明書には『ねじの戻しには使わない』と記載されています。では「ラチェットレバー」は何の為にあるのですか?

QL等は基本的に締付け用トルク工具です。ラチェットレバーは、「今トルクレンチで締めた物をそのトルクレンチで緊急的に緩める為の機能」としてあります。今締めたばかりなら手に持っているトルクレンチの容量を越える事は無く、一般的に緩め(戻し)のトルクは締付けトルクより小さい ので、緊急的に緩め(戻し)も可能です。但し緩め(戻し)を常用する場合や、以前締めたねじで締付けトルクが不明な場合や固着(接着剤塗布や焼き付き等)の可能性がある場合には、緩め(戻し)専用工具をご利用ください。

https://www.tohnichi.co.jp/faqs/detail/5

 

 

結論

・トルクレンチでオーバースペックなボルトを緩めると壊れる。

・でもトルクレンチのスペックを下回るのが確実に解ってるならちょっとくらいならまぁイイかな。

・緩める方向に使っても特に精度に影響しないんじゃないかな。

・でもやっぱ止めておいた方が良いのは当然の話だ。

 

以上。
こんなところで。

 

MOTOR CYCLE

Posted by TOMMY