トルクレンチでナットを緩める

先日書いた、横にアクスルシャフトを差し込めるレーシングスタンドの話。

MotoGPのトレンド

 

https://www.instagram.com/p/CDEM-hVqKgX/

 

とても解りやすい動画がMotoGP公式インスタグラムにアップされている。
いい、とても良いアイデアだ。
うちのJ-Tripにも、ちょっとパイプを溶接してみようかな、なんて思ってしまう。
これは中々のグッドアイデアだ。

 

ただ一点。
おしり探偵だかなんちゃらポリスの方に怒られそうなシーンが有る。
それは軍手、では無くトルクレンチ。
トルクレンチでアクスルナットを緩めるのはどうやねんって事。
流石にこの場面で軍手ハメてたからとチェーンに巻き込まれるそマンはそうそう出てこないと思うけれどね。

 

 

トルクレンチでナットを緩める行為。

基本的に、これはNGとされている。
東日のトルクレンチには書いてる。
緩める時には使うなよって。
ラチェットレンチタイプのトルクレンチには切り替えレバーが付いてるので、締めるのも緩めるのもどっちでも使えるのだけど、一般的なシグナル式トルクレンチではこれは基本的にはNGとされているのだ。

その理由は、トルクレンチで緩めると場合によって壊れる可能性が有るから。
良く言われるようにそれが理由。
では、その場合によっての場合とは何やねんって話だ。

それは、トルクレンチが想定するより強い締め付けトルクで締まっている、または固着してる場合。
これらの場合、無理してトルクレンチで緩めようとすると壊れてしまう訳。
当たり前と言えば当たり前な話。

 

前提として、シグナル式トルクレンチはそのゴツゴツした見た目の割りにヤワな工具なのだよって事。
この工具は内部にカムやスプリングが入ってるので、本体はパイプで出来ている。
ネプロスのハンドル部分なんかを除いて、ギッチリと鉄が詰ってる普通のハンドツールとは訳が違う。
見た目はゴツいが意外と虚弱な子、だって事。
これが前提。

 

例えばマニュアルで100N・mで締め付けが指定されているリアアクスルのナット。
でも、自分で締めた訳では無い場合、それが100N・mで締め付けされてるかどうかは解らない。
もしかしたらロングメガネレンチを足で踏んづけて、親の仇くらい力一杯締めてるかも知れないのだから。
そのナットを、200N・mで壊れるトルクレンチを使って緩めると、壊れる可能性が出て来る。
そう言う訳。

MAX=50N・mのトルクレンチだからと、50N・mを超えると直ぐに壊れる訳じゃ無いだろうけど、マニュアル規定値100N・m、実際にはどれだけ力一杯締めたか解らないよってゴツいナットをそのスペックのトルクレンチで緩めると壊れる可能性は高い。
見た目と寸法は十分なんだけど、それはちょっと無茶が過ぎる。

ボルトを緩める際のトルクの検査=戻しトルク法では東日は係数を0.8と規定している。
雑な表現したら、100N・mで締めたボルトを緩める方向でテストしたら、大体80N・mくらいの値が検出されるよって事。
だから締める際よりも緩める際の方が工具に力が掛からないのが道理なんだけど、だからと無茶は止めた方が良いとは思うな。

錆で固着してビクともしない場合は、まぁわざわざ書く必要も無いか。
流石にその状況でトルクレンチは使わないだろうしね。
バーナーとハンマーが飛び交う現場で、トルクレンチは少々不似合いだから。

 

だから、トルクレンチで緩めると壊れるよってのはそう言う理由。
正しくは、工具の許容範囲を超えたトルクレンチで緩めると壊れるって話。
見た目はゴツくて、そして長さも十分に有るので大きな力は加えられるけれど、だからと調子乗ったら壊れるよって事だ。

もっとも、これは何の工具だって同じで、200N・mで壊れるラチェットレンチを使って、180N・mで締まったナットを緩めようと思ったら、やっぱり壊れる可能性が高いのだけど、内部が中空なトルクレンチはさらに壊れやすいので注意しようって話。
それに単純に値段が高いからってのも。
スタビレーのトルクレンチなんて壊したら、立ち直るのにちょっと時間が必要だからね。

 

緩めるのに使ったら精度が狂う、なんてのはどうなんだろうね。
通常、シグナル式トルクレンチは、緩める際には検出部分には影響が出ない構造になってるので、特にそんな事は無いと思う。
そもそもシグナル式トルクレンチの精度はスプリングで決まってるので、スプリングにテンションの掛からない緩め側での使用では何も関係無いとは思うんだけどね。
でも、やっぱり緩めるのは止めた方が良いのは確かだろうとは思う。
そして、トルクレンチを地面に放り投げるのも、やっぱ止めといた方がイイよね、とも思う。

 

ただ言える事は、テック3のメカニックが適正なトルクで締めたナットを、テック3のメカニックが選んだ適性なサイズのトルクレンチで緩めた所で、工具は壊れたりはしないよ、って事だよ。
なんせMotoGPのメカニック。
自称バイクに詳しいセンパイがやってんじゃ無いんだから、そもそもそこらの民間人がガチャガチャ言う事なんて何も無いさ。
長々と書いたけど、まぁそう言うこった。

 

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Posted by tommy