アメリカンスタイル

前回書いたように、今更Dトラッカーなんてイカしたバイクを買った人が居たので、ちょっと試乗してみた。

状態は、結構マメな人が乗ってたバイクなので良好。
一般的な整備だけすれば、当分はガソリン代くらいしか心配する事は無いと思う。
FCRが組まれてるので、ガソリン代はちょい心配だけどね。
FCRって意外とノーマルのCVKと燃費は大して変らないけれど、魂が突き動かされるかのようについつい右手が開けてしまうのがちょっと心配だ。
ガソリン代と、兵庫県警様の熱視線が。

 

FCRも調子良く、他の部分も問題無く機能してるのだけど、ただ大きな問題はマフラー。
えらい勢いで布団叩きしてるみたいな音が出るので、その辺をもうちょいどうにかしなきゃ成らない。
乗ってるのがまだ十代のガキッチョならば別に構わない、って訳でも無いのだけど、もう随分前に成人して、おトイレだってほぼ完璧に失敗しない十分な年齢の大人なので、こんなみっともないバイクに乗るのはちょっと勘弁だ。
って、まぁ私のバイクじゃ無いんだけど、私の活動圏内にこんなバタバタバタバタ言わせてるバイクが居たら迷惑だからどうにかしなきゃ成らん訳だよ。

ちなみに前のオーナーは、兵庫県の真ん中の辺りの、周囲は山と畑と山と山と畑と空き地と山しか無いような所に住んでる人。
そんな所なら、少々バタバタ走った所でジャムおじさんにバケットでブン殴られる心配は無いのだけど、踏み潰したジャムパンみたいに頭をカチ割られる心配も無いのだけど、ジャムおじさんの二つ名の由来に成ったように頭から真っ赤なジャムを噴出す事も無いのだろうけど、流石に私の生活範囲は人間が一杯住んでるのでもうちょっとどうにかしなきゃ成らない。
目ぼしい哺乳類はアナグマとイノシシとツキノワグマくらいしか住んでないような所じゃ無いのだから。

当初、Z250SLって、KLXのエンジンを積んだニンジャ250の単気筒ネイキッドバージョンをGoobikeで探してたのだけど、そんな最中にDトラを手放す人が現れたので急遽コレを買う事に成った次第で。
で、まだ雪が降るちょい前に、このDトラを引き取りに行ってたのだ。
今年はなんか雪が凄いからね。
積もる前に行けて良かったと思う。

 

Dトラのマフラーと言えば、その昔は250SBのコンプリートバイクも作ってたヨシムラのトライコーンが有ったのだけど、流石に今はもう無い。
USヨシムラなら今も有るけれど、USは音量の面では何の解決にも成ってないので却下だ。
BEETのナサートも今はもう成さそう。
FI化したDトラッカーX用のナサートは有るみたいだけど....あれをFCR組んでる旧Dトラに組むのはどうなんだろう?

そもそも、と言い出したらマフラーはノーマルが良いのだけど、FCRとノーマルマフラーって組み合わせは流石にちょっとなぁ。
それはちょっとあんまりな仕打ちだろうと。
だからと今更CVKに戻すのも無理な相談。
一度FCRを知った身には、負圧キャブに戻すのはちょっと無理な相談だ。

本当に思うな。
世の中には知らなくて良い事も有るんやでと、モルダー君に言ってたタバコ臭いオッサンの話は一つの真理なんだと。
本当に思う。
ああ、FCRなんて知らなきゃ良かったのに、と。

 

他になんぞ無いもんかと探したら、バッフル付けたら91db、なんて商品はちらほらと。

ただ、ここに書かれてる通り、現在はネジ留め式のバッフルでは認証が取れなく成っている。
だからと、サイレンサーの出口にバッフル付けたからと、それで捕まる訳では無いのだろうけども。

でもそんなr合法or非合法以前に、バッフルなんて適当な糞詰り装置に頼らなくてもちゃんと消音してちゃんと排気してくれるマフラーに交換してやりたい。
ただ、純正と同じ音量で軽量で抜けの良いマフラーなんて無いのが現実だ。
そもそも、バイクメーカー及びその純正パーツを作ってる協力企業以外に、純正の基準を満たすマフラーなんて作れない。
純正並みの音量で、軽量で格好良いマフラー、なんてモノは無い。
中身の構造は同じに作っても、軽量な時点で消音出来ないからそりゃ無理な相談だよ。

適当に詰めまくったら音量は下がるけれど、あんまり詰めすぎたら背圧(back-pressure)が上がり過ぎるので、何処かで破綻を来たしかねない。
流石にマフラーが破裂したりシリンダーが割れたりなんて事は無いにしても、単に詰めただけじゃやっぱり問題は大きい。
純正マフラーを作ってるメーカーはその辺を上手く考えてるのだけど、それを勘と経験でパイプを曲げてる人に求めるのは難しい話だよ。
解決にはもうちょい時間が掛かりそうだ。

 

このDトラッカーってバイク。
一見、トレールバイクのKLXのホイールを変えただけのバイクに見えるかも知れない。
でも実は....
そう、実ははそのまんま、車体周りはホイールを変えただけのバイクだったりする。

スプリングやフォークのピストンは勿論、このキャブ付いてた時代はオイルの粘度や油面までも同じ。
つまり、まんまトレールバイクのセッティングて事。
FI化されたXはセッティングが異なってるけれど、キャブの時代のこいつはフロントに関しては全く一緒。
これがダートも走ればジャンプも飛ぶモノホンのモタードなら良いのかも知れないけれど、ミニサーキットや峠を走るなら、ちょっとセッティングには手を入れてやりたい。

具体的な第一歩はフロントのスプリング交換。
フロントのバネレートを上げて、ポヨンポヨンする足をシャキ!!っとさせるのが通常のパターン。
後はダンパー弄ったりしてベストセッティングを見出してやればオッケーだ。
一応は。

一応は、と書いたのは、現実的にはそれがこのバイクに手を入れれる一杯一杯だから、って理由。
そもそもがトレールバイクなので、アスファルトの上を専門に走るには、バネだけ強くしても抜本的な解決には成らないって事。
単にバネの強いトレールバイクにしか成らない。

 

単にバネの強いトレールバイク、と書いたけれど、フロント21インチ&リア18インチから前後17インチに変更されてるので、たった数行で早速前言を撤回するけどこれが実は簡単に単に、とは言えなく成ってしまっている。
ご存知な方も多いだろうけど、車高は1cm変るだけで影響は随分と大きいのだ。
ニンジャ~DAEGまでのカワサキ乗りで、エキセンを逆付けして後悔した経験の有る人もきっと少なく無いだろう。
お尻がちょっと上がって見た目は良く成るんだけど、あれってすっごい乗りにくく成る。
やっぱあれだけの事で大きな影響が有るんだなって思ったもんだ。

ちなみにKLXのフロントタイヤは3.00-21。
ダンロップのD605なら外径は701mm。
一方のDトラッカーは、110/70-17。
同じくダンロップのTT900なら、その外径は586mm。

1cmも変ると大きな違うと成る車高。
足回りに何の変更も加えず、単に半径で5cm以上も違うタイヤを履いてるので、その影響は大きい。
ハッキリ言って、このバイクはディメンションだのアライメントだの、ってのはあんまり考えてない。
大らかな気持ちで作った大らかなバイクなのだ。
ってか、ぶっちゃけ適当。
古き良きカワサキの伝統。
後は乗り手がどうにかしてくれなお気持ちの表明。

 

 

KLX250

良く見かけるイラストだけど、これはフロントのトレール量を示している。
トレール量とは、ステアリングヘッド(ステムシャフトの通る部分)の延長線と、フロントアクスルの垂直線との寸法。
赤く示した部分がソレ。
一般的に、ここが大きい程、ハンドリングの安定感は増す。

 

D-TRACKER

フロント21インチ、リア18インチのKLXのホイールを前後17インチに変えた事で、キャスター角は26°50′→25°30′に。
フロントホイールが小径に成った事も加え、トレール量は107mm→74mmに変更される事と成った。
こんなに小さく成っちゃったよ。

勿論の事、バイクの性格はトレール量だけで決まる訳では無いのだけど、リッターSSを含めたスーパースポーツでも100mm程度なので、Dトラッカーの74mmってトレール量はかなり小さいのが解ると思う。
だからフロントが落ち着かないのは、乗り方やセッティング云々以前の問題なのだ。
もっとも、それがモタードやで、って言い方も有るのかも知れないのだけど。

 

 

改善策-1

だが、本気で走るにはあんまりバタバタしたフロントは具合悪いので、モタードに強いアフターパーツメーカーは色々と知恵を絞ってるのだ。
その一つの解決策が、オフセットを限りなく小さくしたステム周り一式。
アンダーブラケットとトップブリッジを一新してオフセットを数ミリにまで小さくする。
これによりトレール量を少しでも稼ぐ事が出来る。

ただでさえオフセット量の小さいDトラッカー用のトリプルクランプは無いと思うのだけど、モトクロッサーをモタード化してる人ならちょっと検討したいパーツだ。
私も以前、YZ250Fをモタードしてえらい苦労した事が有るけれど、このモタード用トリプルクランプへの交換が効果絶大だった事が有る。
Dトラッカー用のトリプルクランプは....きっと無いと思うけれども。

 

 

改善策-2

オフロードバイクのリーディングアクスル(フォークの前方にアクスルの付いてるタイプ)から、普通のロード用モーターサイクルと同じくセンターアクスルへ変更。
これでトレール量は大きく稼ぐ事が出来る。
効果は絶大だ。
そもそも、フロント17インチ化するとアクスルをオフセットしなくてもフルボトム時でもバイクに干渉しなくなるので、センターアクスルに変更するのが最善だと思うな。
後からするのはかなりハードルが高いので、メーカーは最初からそうしててくれないもんかと思う。

本気でスーパーモトを作ってたハスクバーナは、701スーパーモトを作るに当たってベースと成るエンデューロマシンからこのフロント周りをゴッソリと変更している。
エンデューロマシンのリーディングアクスルからこの図のようなセンターアクスルへ変更され、それに伴いトリプルクランプのオフセットも変更され、フロント周りのアライメントがモタード専用に最適化が成されている。
これはKTMの690SMCも同様。
やっぱ本気でスーパーモトを作るなら、その辺をちゃんと作らなきゃダメなんだろうね。
少々のコストは掛かってしまうけれども、単にトレールバイクを17インチ化しただけじゃダメだって事だ。

 

 

余談だけど、以前ヤマハのWR250RをX化した際、普段は街乗りで使うので足着かんからと限界までローダウンさせた事が有る。
リアのリンケージを交換した尻下がり仕様で試乗してみたら、これがえらくフロントが素直なバイクに成ったんだよ。
通常はリアを下げたらフロントも下げなきゃ姿勢は狂ってしまうのだけど、このWR250Xも値段はやたら高いのに単にWR250Rのホイールを換えただけのバイク。
トレール量はWR250Rの119mmから、前後17インチの250Xでは81mmにまで小さくなってるからね。
流石に各部のセッティングは違うのだろうけど、根本的なこのトレール量の小ささの影響は脱し得てない。
だからDトラッカーと同じく、そもそもバランスが悪い。
生まれながらにバランスが悪いバイクだ。
後は乗り手が頑張ってくれなお気持ちパート2。

一方でスズキのDRは、モタード化に伴って倒立フォーク化が成されてるので、アライメントはモタード用にちゃんと考えられている。
単にDR-Z400を17インチ化しただけのバイクでは無い。
やるな、スズキ。
なんで400で作ったのかはいまいち良く解らないけれど。

で、そのX化したWR250R。
見た目はちょっとアレだけど、尻だけを下げてさらにバランスを崩してやればキャスターが寝るので、この減少したトレール量をちょっと取り返す事が出来る訳だ。
見た目はアレなんだけど、まぁ数センチなんて言われなきゃ解らないのでイイじゃ無いか。
乗ってたら誰も気付かんし。
欲を言えばリアショックも短く出来れば、もっとリアが下がって街乗りがしやすく成ると思うんだけどね。
リアを下げてフォークをあと何センチか延長できたらもう言う事無い。
アメリカンみたいだけど。

もしWR250Xの落ち着き無いハンドリングに不満の有る人は、一度試して貰いたい。
リアだけを下げてキャスターを寝かせてやる作戦を。

見た目はちょいアレかも知れないけれど、もしかしたら、それだけであなたのWR250Xは大きく生まれ変わるかも知れないのだ。
やっぱりダメなら、或いはさらに悪化したならば心より謝罪させて頂くわ。
ああ、そら適当な事言ってスマンかったなと。

 

超絶シャープなハンドリングがモタードの魅力だ。
ってご意見は自由に持って頂いて結構なのだけど、もし私がこのバイクを1からリファインする立場なら、もうちょっと落ち着いたフロント周りを欲したい。
具体的には、取り合えず舗装道路を走るにあたって用事も無いのに高い車高は止めて、リアはスイングアームの垂れ角の許容範囲まで下げたい。
それにともない、フォークはセンターアクスル化と共に全長は短め。
普段走ってるルートにジャンプや大きな段差なんて無いので、ストロークも短めのロード用のフロントフォークに変更したい所。
これで前後の車高は大きく下がる。
そして、戦う4ストのパワフルエンジンを積んでるのだから、フレームももうちょい補強したいな。
さらにはニーグリップし易いタンク形状にして、トレールバイク然とした見た目に拘る事無く、乗りやすいデザインにちょっと変更してやりたいな、と思う。

そうやって突き詰めていけば、Z250SLに帰結してしまうので、やっぱ舗装道路を走るならハナから舗装道路専用のバイクで走るのが良いのかな、とか今更思ったりする訳なんだけど。
身も蓋も無いので言わないけれどもさ。

 

と言う訳で、やっぱ素直にニンジャ250SL買った方が良かったんじゃ無いの?と思いつつも、この幼稚園児のように落ち着きないフロントではちょっとしんどいので、取り合えず在庫してるリンクプレートから適当なのを見繕って、リアだけめい一杯下げてキャスターを寝かせる作戦で行こうかと思う。
Dトラのステムやフォークを交換するのは流石に現実的じゃ無いので、アメリカンチョッパースタイルで行こうと思う。
きっとそれが、10万円で買ったDトラの正しい方向性なんだろうと思う。
余計な金は掛けん、と言うとても正しい方向性なんだろう。

 

MOTOR CYCLE

Posted by tommy