ギャップは大事

ある日の事。
高速道路の左車線を車で走ってると、前方でえらく遅いバイクが目に入った。
中国道だったか名神だったか、高速道路の左車線を車で走ってると、前方でえらく遅いバイクが走ってるのが目に入った。

制限速度100km/hの道を100km/hで走る私が楽々追いついたので、推定で70km/hくらいかな。
かなり遅い。
高速道路での最低速度は50km/hと定められてるので、それを下回らない限りは捕まる事は無いのだけど、まぁでも100km/hで流れる道路なら100km/hで走るのが良いと思うな。
世間の流れに抗いたいロックンローラーだとしても、こればかりは流れに従うのが良いと思う。
シャケみたいに流れに逆らって走るよりは随分マシだとは言えど。

 

スーパーカブ。
そう、そのバイクの正体はスーパーカブだったのだ。

このバイクを遠くから発見した時、私はあれこれ考えた。
このやたらめったら遅いバイクは何だろうかと。

一般的に流通してる遅いと評判のバイクでは、セロー225を含む200ccクラスのトレールバイクかな。
軽二輪=126cc~250ccまでのバイクで、一番遅いクラスはこの辺りだろうと。
トライアラーはさらに遅いけれど、まぁ滅多に走ってない。
昨今良くある150ccクラスのスクーターは台数から考えたら大いに可能性はありそうだけど、シルエット的にスクーターっぽくは無かったのできっと違うと判断した。

旧車かな、とか思ったものの、スピードだけに関しては余程に古いバイクで無い限りは普通に走るものだからね。
壊れてたら別として、70年代のCB250やZ250でも直線なら今時の250ccと遜色なく走れる。
同じように曲がれるかどうかはアレとして。

でもね、ジェベル200やセロー225は確かに遅いけれど、だからと70km/hしか出ないって訳では無いんだよ。
流石に昔の7.2ps時代の原チャリより遅い、なんて事は無い。
だから、きっとそれは出ないのでは無く出してないのだろうと。
普通に走れる普通のバイクだけど、単にスピード出してないんだろうねと。
私はそう思いながら真ん中車線に車線変更して抜き去りに掛かったのだが、そこで驚いたのがスーパーカブ。
そう、そのバイクの正体はまさかのスーパーカブだったのだ。
いや....すっごい普通のバイクだけど、高速道路じゃ全然普通じゃ無いよ。

 

ちゃんと126cc以上のエンジンを積む、もしくはボアアップして軽二輪として登録してナンバーを取ってるだろうから法的に問題は無いのだが、高速道路でスーパーカブを見かけたらちょっと驚いてしまう。
ネット上では別に珍しくは無く、きっと世の中には沢山の軽二輪登録されたスーパーカブは存在するのだろうけど、実際に高速道路で見かけたらちょっとびっくりするもんだよ。
サイゼリアでジローラモを見かけた時以上に。
サイゼでまさかのジローラモ!
あ、ジローラモを見かけた事は無いけどね、って話はさておきとして。

 

ギャップは重要だ。
何においてもギャップはとても重要。

ひきこもりの学生やブラック企業に勤める疲れ果てたサラリーマンが異世界に転生して無双する、って話は大きなギャップを生むので話は作りやすいが、アンドレ・ザ・ジャイアントみたいな人が異世界に転生して無双した所で、話は少々進め難い。
別に転生しなくても無双できそうだしね。
そう、アンドレなら。

その辺は文化の違いってのも有る。
アメリカの場合はゴリラが暴れるのも好まれる場合が多いけど、日本の場合はちょっと違う。
初期ドラゴンボールのように子供が強かったり、美少女戦士だったり、上手い事チート能力を手に入れた引きこもりが大活躍する話が大いに好まれる。
北斗の拳とて、大きな敵に戦いを挑むケンシロウが主人公だから成り立つ訳で、デビルリバースが最強の主人公なら話はちょっと進み難い。
身長20mの主人公が、身長180cmの敵と戦う話を10年間連載するのはちょっと難しいな。
1本限りの読みきりならまだしも。

特に日本ではギャップが好まれる。
それが文化の違いって奴だね。
ダビデとゴリアテの話のように、古来からギャップが好まれるのが世界標準では有るけれど。

 

ギャップは重要だ。
何においてもギャップはとても重要。

冒頭の話は、高速道路をスーパーカブが走ってるからちょっとした感情が揺さぶられる訳で、高速道路でZZR1400がCBR250Rを華麗に抜き差ったとしても、それで話を書くのは中々に難しい。
ZZRは、とっても速かったです。
と、一行で終わっちゃう。
ストーンコールドの映画みたいに、まぁそりゃそうだよなぁって非常に大雑把な展開になってしまう。
余程、腕に覚えがない限り、それで気の効いた物語を一本作るのはちょっと難しい。
R33とプロボックスが湾岸線でバトルしてた、なんて話の方がまだ作りやすいな。
これまた結構ありきたりな光景と言えども。

高速道路をチョイノリが走ってたり、或いは林道をひたすら走った山の奥地でYZF-R1と出会ったとか。
通学路で猿が出没したとか、住宅街をスク水を着た熟女が走ってたとか。

そんな、何かしらの大きなギャップが有れば物語は動き始める。
ギャップは重要だよ、ギャップは。
山奥で猿を見かけたり、住宅街でチョイノリを見かけても、だから何よって話だからね。
スク水の熟女は...それはちょっとコメントを控えておくけれど。

 

R1で林道と言えば、砂に半分埋まったR1の有名な画像が有る。
赤白の5JJだったかな。
それ以外にも、快適かどうかは別にしてノーマルのR1でダートを走る人も居るし、ダート用タイヤを履いて結構本気で走る人も居る。
そもそもご先祖のFZ750はパリダカに出たバイク....車体は全く別物だけど、サハラ砂漠を経験したご先祖が居るくらいだしね、あんま関係無いけど。
だから、って訳じゃ無いけどR1でダートを走るのは全く持って不可能な訳では無い。
R1だけで無く、CBR1000RR-RだろうとZZR1400だろうとゴールドウイングだろうと、その気に成ればなにだって走れるさ。
特にお勧めはしないけれど。

また、チョイノリに250ccのエンジンを積んでる人の存在は知ってるし、載せる事自体は私でも出来ない訳では無い。
ってか、マウントを溶接してチェーンラインを出せば良いだけの話だし。
そして、それを軽二輪として登録する方法も知っては居る。
その昔、FZ750を1000ccにした時は何かと苦労したけれど、それに比べれば車検の無い250ccの登録なんて簡単な話だからね。

だから、有る程度事情を知ってたら、ちょっとしたギャップなんて別に驚くような事は無い。
キアヌ・リーブスが8耐に来た時は驚いたけれども、キアヌとバイクの関係を知ってたら別に腰を抜かすような事には成らないのと同じだ。
エリザベス女王が来たら、なんでやねんと大いに驚いてしまうけれども。

 

だから、飛行機と飛行場について良く知る人は、別にこんな光景は何とも思わないのかも知れない。
え?何が珍しいのさ?と、口を尖がらせた飛行機博士は得意気に言ってのけるのかも知れない。

ただ、ボーイング737とエアバスA320の見分けはおろか、セスナとビーチクラフトの見分けすら出来ない私には、ちょっとした驚きの光景だったんだよ。
まさかこんなところにお婆ちゃんが乗ってそうな自転車とは。
ちょっと驚いた。
そして、線に沿ってピッチリと完璧に停める正確さに、ちょっとフフフって成った。

グランドハンドリングには完璧な仕事が求められる。
そう、たとえチャリンコを停める、ただそれだけの事で有ったとしてもだ。
民度の低い地域のスーパーみたいに自転車を野放図に停めてたら、踏んでしまうからそりゃそうなんだけどね。

 

空港のエプロンにチャリンコが居てびっくりしました。

そんな一行で終わる話を、今日も長々と書けて良かったなと思う。
いやぁ、やっぱギャップは大事だよ、ギャップは。