取り間違えても仕方ない
『ちょっと待って!!』
私は、声を荒げてそう叫んだ。
多くのバイクや自動車には、オーナーズクラブなんてのが存在する。
一番所帯が大きいのはやっぱりZかな。
続いてニンジャか。
後は...何だろう?
ハヤブサも結構多いのかな。
ともかく、どんなマイナー車種にでも、多くの場合は同じバイクに乗る仲間は存在し、時に集まって交流を持ったりもする。
多くのバイクの場合はね。
以前、スズキのコブラだなんてバイクを唐突に買ってきた人が居た。
京都だったか加古川だったかのジャンク屋で、すっごい安かったコブラを。
それを直してコブラ会を結成しようと目論んでたのだが、名前はベストキッドの敵っぽくて格好イイけれど、流石に現実的にメンバーを集めるのはちょい難しかった。
てか無理。
無理して仲間を募っても、仲間を呼んでもやって来ないドラクエのモンスターのような寂しいシーンが再現されてしまう。
その後、今度は割とメジャーなグース350を買ってきて、スズキアニマル軍団を結成しようと、Yahoo掲示板やらで活動してたが、残念ながらあんまり世間様からは相手にされず、ジ・エンド。
まぁウルフやコブラはまだしも、グースならまだ多そうな気はするんだけどね。
探せばグースの集まりも有っただろうし。
このように、集めようと思っても中々思うように集まらない場合も有れば、一方でやたらと集まるバイクもまた存在する。
値段が高く、ハイスペックで、希少性も有り、それで居て意外とタマの多いバイクで多く見られる現象だ。
結構前の事。
何処だったかの道の駅に行った際、DUCATIの集まりに遭遇した事が有る。
それもほぼ916系のスーパーバイクの集い。
中々にゴージャス。
916に996に998と、一杯有るけどみんな同じような見た目なんだよ、アレって。
それぞれ、その同じような見た目のバイクでも、さらにRやSやSPやSPSと細分化される。
その上ミドルクラスの748まで混じると、これがまた訳解らなくなって来る。
一体、何種類あるんだろう。
同じようなバイクばっか。
私が持ってるバイクも996なのだけど、この辺の見分けはいまいち自信は無い。
ちなみに、乗ってるでは無く持ってると表現するのは、文字通り持ってるだけで乗ってないからだ。
もうちょいテクと気合と身長と体重が有ったらこれは文字通りスーパーに最高なバイクなんだろうけど、あれを私が乗るのはちょっと無理が有ったわ。
と、言う訳で、持ってる。
てか無理。
あんな怖いバイクよう乗らんわ。
同じ見た目の、大体は同じ赤い色したバイクが沢山停められた道の駅の端っこ。
でも不思議な事に、ライダーって自分のバイクが解るんだ。
たとえ一切無改造のノーマルバイクでも、同じバイク同士を並べても自分のはコッチだと解る。
ナンバー見ないでも解る。
ってか、ナンバーなんて見ても覚えてない人も多いからあんま意味無いんだけど。
これは別にドゥカティに限った話では無く、ニンジャやZやハヤブサなんかの、同じようなバイクがやたら集まる場に参加した事の有る方ならきっと経験有るだろう。
同じバイクが一杯停まってても、自分のバイクはちゃんと解るもんだって。
買ったばかりの新車同士なら話は別だけど、ちょっと乗ってたら何となく自分のバイクは解るもんだ。
グリップやブレーキレバーの握り心地も違うし、トップブリッジの傷も違う。
だから、同じ色した同じノーマルバイクでも、自分のバイクはちゃんと見分け付く。
それにこの時停まってたスーパーバイク達は、テルミかアクラか、ノーマルかマルケジーニかの違いは有るだろうし。
興味ない人からしたら似た様な物だけど、本人達からしたら見分けるのに十分な違いだからね。
意外と相違点の多いおすぎとピーコよりもさらに見分けるのは簡単だ。
皆様、まぁそれが当たり前なんだけど、一切迷う事無く自分のバイクに跨って、どエラい音を残して去ってた後ろ姿を見て思った。
でも私なら、ちょい自信ないかも知れんと、もしかしたら取り違えるかも知れないと少し思った。
持ってるだけで乗ってないからなぁ。
どうだろう?
流石に普段自分の乗ってるバイクなら、幾ら同じ車種でも取り違える事は無いとは思うのだけど、レンタサイクルなら大いに有りえる訳で。
友人と信州でレンタサイクルを借りた際、同行者の一人が、カギせずに置いてた自分の自転車と、カギせずに置かれてた他の人の自転車とを取り違えて乗ってた事が有った。
ふと気付いたら、一人だけ違う自転車に乗ってたんだ。
色も違えばフレームの形も違う、ってか全然違う自転車に。
フレームに貼られたレンタル自転車店のステッカーも違う。
いや、それって全然別物じゃ無いか。
宿のおじさんに世話に成って、とりあえずは解決したのだけど、まぁ気をつけねば成らんよねと思ったもんだ。
流石に自分の赤い自転車と余所の人の緑の自転車とを取り違える人はそうそう居ないだろうけどさ。
『ちょっと待って!!』
私は、声を荒げてそう言った。
コストコ尼崎倉庫。
店内でのご飲食はお断りいたしますコーナーで購入した、ホットドッグ2つとペプシ2つを抱えたまま、私は声を荒げた。
何故なら、私がさっき会計を済ませたカートを何食わぬ顔して押して行こうとしてる人が居たからだ。
おい、ちょっと待てよ!
私のカートを押してた人は、何言ってんだお前?って怪訝な顔を浮かべたが、カートの中身を見て、ハっとした。
田口トモロウのナレーションが流れてきそうな勢いで、ハっとした。
『あ、すみません』
どうやら取り間違えたようで、隣に置かれていた私のお買い物とほぼ同じ、ピザとマフィン2個パックとお肉の入ったカートを押して、そそくさと去っていった。
全く同じなら別に間違えても構わないんだけど、肉が鶏肉か豚肉かって違いが有るのでそう言う訳にも行かないんだよ。
レシートとカートの中身が違えば、出口でお馴染みの『悪いごは居ねぇがチェック』に引っかかるしね。
とは言っても、ガチャガチャとお会計済みカートが大量に停め置かれたホットドックコーナー横。
カートに名前が書いてる訳でも無いので、きっとそこでの取り違えも稀には起こってるんだろうと思う。
似た様な買い物してる人も多いしね。
今回も、鶏肉か豚肉かの違いですら無かったのだから、間違えても仕方無いと言えなくも無い。
ついうっかり、取り間違えたんだね、と言えなくも無いよね。
と、2分で構成を考えた割りに上手い事終わらせれて良かった良かったと思いながら、今回のお話はこれで終わり。
もうそろそろこのブログも静かに閉鎖へと向かってるのだけど、それまでのもう少しの間、まぁ適当にどうぞよろしく。