結局、これからの原付の扱いはどうすりゃイイのか
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原付一種、要するに50ccの原付が消滅しようとしている。
これをどうすればイイのか、って記事。
個人的にはどうでもイイって言えばどうでもイイのだけど、日本においては50ccってのは若者達に取っての自由の翼でも有る訳なので、これが消滅するのはやはりバイク業界に取っては望ましくは無い。
個人的にどう思っていようとも。
ただ、これがとても難しい。
そうそう簡単に万事解決、とは行かない問題だ。
最もシンプルなのは、小型ATと統合する事だろう。
現行の原付免許で125ccまでの原付に乗れて、それ以外でも教習所で原付講習を受講して四輪免許を取ればそれに乗れる。
現在も教習所で原付の講習をやってる所は有るので、それを利用して四輪免許取得と共に原付免許を付加するのも可能かと思う。
原付に乗りたいなら原付教習を必須にして、原付なんて要らねぇって人は、講習を受けなきゃ良いだけの話だ。
これが恐らく一番簡単だと思う。
ただ問題は事故が増えるのではないかって事。
そして、事故が起こった際のダメージが大きく成り、死亡事故が増えるんじゃ無いかって事。
数時間の講習だけで100km/h出せる125ccのスクーターに乗せて大丈夫なのかって。
そこで出てくるのが、上のヤングマシンの記事に有る様に、出力で免許区分するのはどうだろうねってお話。
これで、現行の原付一種限定の人は125ccでも4kwまでの出力に規制して、小型AT免許の人はフルパワーに乗れると。
直ぐに形骸化されそうだけどね。
免許証をマイナンバーカードに一体化したら、マイナンバーカードをバイクに差し込んで....なんてすりゃ可能かも知れないけれど、やっぱ無理。
そんなの無理だ。
でもこれは実際、ヨーロッパは出力によって免許が制限されており、各メーカー共に出力を絞ったA2仕様を良く出している。
例えばカワサキならこのZ900のように、フルパワー仕様とは別に、A2ライセンス仕様へチェンジ出来る70kWモデルが存在する。
なお、A2ライセンスは35kW以下と規定されるので、A2ライセンス所持者がZ900等のA2仕様車に乗る際は、ディーラー等でこのバイクを35Kwに出力制限処置=多くの場合はインテークのリストラクターの取付けやファンネル交換の処置を受ける事と成る。
で、A2ライセンス取得から2年以上経過した後に晴れてAライセンスを取得すると、それらの処置が撤廃されて、70kWのZ900に復活する事が可能と成る。
ただ、ECU等の事情によりフルパワー92.2 kW(125 PS)には成らんのは、まことにスマンかった。
ちなみにこちらがホンダのCBR650R-35kW仕様のファンネル。
35kW仕様のファンネルは、通ってるのが矢印部分で、Xの所は閉じられてる凶悪窒息仕様。
そこまでしなきゃ35kW(約48PS)には成らないから大変だ。
フルパワーなら勿論全部通るので、全てにおいて桁違いなのは言うまでもない。
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で、根本的な問題。
パワーを絞ったら事故が減るのか、或いは死亡に至る事故が減るのか?
って所。
バイクに乗ってる人からしたら、そんなの関係無いぜって思うかも知れないが、少なくとも世間様の流れではそのように成っている。
ただ一つ言える事は、速度が上がれば事故を起こした際のダメージは大きい、と言う至極当たり前なお話だ。
現在、人体の外傷度はAISコードで分類される。
0=無傷
1=軽傷
2=中等傷
3=重症
4=重症~最重症
5=瀕死
6~9=死亡
こんな分類。
6~9の分類分けは、何時間後に死亡するのかの違いで、結果的には大した差は無い。
家族が死に目に会えるか、それとも事故の1秒後には死んでるかって違いだ。
こちらのPDF。
COST | European Cooperation in Science and Technology
欧州委員会が作成したヘルメットの安全性に関する文書。
The views expressed in this publication do not necessarily reflect the views of the European Commission.
(必ずしも欧州委員会の見解を反映するものではありません)
と、良く有る但し書きがされてるものの、そこの人が勘で書いたものではないので一定の信ぴょう性は有ろうかと思う。
ここの12ページには、こう書かれている。
The median was 18km/h for AIS 1, 50km/h for AIS 2-4 and 57km/h for AIS 5/6.
つまり、中央値は、AIS 1が18km/h、AIS 2-4が50km/h、AIS 5-6が57km/hと。
ただ、状況やヘルメットにもよるので、これらのAbbreviated Injury Scale (AIS)は変わってくるので、あーだこーだと長々長々と書かれてるので、興味のある方は頑張って読み切ってみよう。
言えるのは、時速18kmなら軽傷で済むけれど、時速57kmなら死んでも不思議じゃないって事。
ビッグバイクに乗ってる人ならたかだか57km/hだけど、バカには出来ない速度なのだ。
体重60kgの人がバイクから放り出された場合のエネルギーは以下の通り
18km/h | 750 J | 76 kgf・m |
30km/h | 2067 J | 211 kgf・m |
40km/h | 3696 J | 377 kgf・m |
50km/h | 5713 J | 583 kgf・m |
60km/h | 8267 J | 843 kgf・m |
80km/h | 14785 J | 1508 kgf・m |
100km/h | 23019 J | 2347 kgf・m |
これを垂直落下時の場合に換算すると、体重60kgの人なら以下の高さから落ちた時と同じエネルギーと成る。
速度 | エネルギー | 自由落下した場合の高さ |
30km/h | 2067 J | 3.5m |
40km/h | 3696 J | 6.3m |
50km/h | 5713 J | 9.7m |
60km/h | 8267 J | 14m |
80km/h | 14785 J | 25m |
100km/h | 23019 J | 40m |
重力加速度(m/s2):9.8
実際の転倒時は異なるが、急に右折してきたトラックに真正面から突っ込んだ場合、ほぼこの表と同じエネルギーを食らう事と成る。
3.5mとは、一般的な一階建て住宅の屋根の高さよりちょい高いくらい。
6.3mは二階建ての屋根。
9.7mは三階建て。
25mは福岡のνガンダムのアンテナの上から飛び降りるに等しい。
皆さまの体の頑丈さはどれくらいかは解らないけれど、三階建ての家の屋根から落ちて平気な人はあんまり居ないだろうと思う。
少々頑丈でも、ガンダムの上から落ちて平気な人はきっと居ないだろうから、十分に気を付ける必要は有るかと思う。
つまり、時速30kmとは、それ程に重大な事故には成り難い速度、と言う訳。
勿論、玄関で転んで死ぬ人も居れば、マンションの9階から落ちても平気な人も居るので一概には言えないのだけど、傾向としては時速30kmとはそれ程に重大な事故には成り難い速度で、それを超えると重篤な被害を被るリスクが飛躍的に上がる、と言う事。
だから、特別なカリキュラムや実技試験を受けていない人間が生身で乗る乗り物に対して、この最高速度を引き上げるのは中々に根性が居る話な訳だ。
30km/hは周囲の自動車との速度差が有るから危険、だとのご感想も良く聞く話で、私自身も幹線道路を30km/hで走りたいと考える程に変態では無いので気持ちは解るのだけど、これを警察なり行政なりが認めるのはこれまた難しい。
日本の法律では自転車は車道を走れ、ってのが有るので、車道での速度差は避けようは無い。
車道を走る自転車が50km/hで巡航しろってのは無理な話なので、この速度差はどうしようもない。
従って、速度差は危ないよね、とは当の本人が中々に言えないので、その理由でもこの制限速度を撤廃するは簡単では無い。
アンジェロ大尉も言ってたように、責任者は責任を取りたくないのだ。
最も良いのは、125cc、もしくは150ccまでのAT免許を統合して、教習所で一定のカリキュラムと試験を受けて免許を取得。
四輪免許のおまけ免許は小型特殊だけ。
現状、四輪免許持ってる人はそのまま125cc、もしくは150ccまでオッケーよ。
だって仕方ないじゃんか。
ってのが最も合理的な判断かも知れないが、これはこれでまた反対のご意見は多数有ろうかと思う。
高校生はもちろん、免許取得人数は確実に減るからメーカー様はご立腹だろうと思う。
結局は、現行のままでも問題は有り、原付を125ccまで無条件に引き上げても問題は有り、現行小型ATと共通化して要教習&試験にしても問題は有る。
結局、何をどうしようとも文句は出てくるので、後は責任者が責任を持って責任ある判断をして頂くしか無い。
現行のまま継続するか、緩和するのか、それとも規制を強めるのか、或いはここは思い切って先送りする事を決断するのか。
ともあれ、ご苦労様です。