腕パンパンに成っても我慢して下さい

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イアンノーネの転倒、そして同じくドゥカティワークスのドヴィチオーゾの失速。
原因は前腕のパンプだとか。

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所謂『腕上がり』『アームパンプ』と言われる症状。
コンパートメント症候群とも。

日本語では筋区画症候群と呼ばれる。
多くのGPライダーを苦しめる所謂アームパンプは、慢性筋区画症候群を指す。
ちなみに、交通事故等でダメージを負った時に大きく腫れ上がる症状は、急性筋区画症候群と呼ばれる。

筋区画症候群とは、筋膜(筋肉を包んでいる皮膜)内の圧力が高く成るのがその症状。
急性筋区画症候群は、筋肉組織の破壊による出血等が原因と成る。
一方、アームパンプで知られる慢性筋区画症候群は、筋肉の酷使により血流量の増加からくる筋膜内の圧力上昇が原因。
筋肉痛や靭帯の怪我なんかとは違う。

モーターサイクルライダーの場合、レース中は凄く痛いもののバイクを降りて暫くしたら何の症状も無いので、スペンサーの当時の医学知識では何だか良く解らなかったとか。
レーシングバイクに乗ってなきゃ病院に行っても何の原因も見つからないのだから。
やる気無いだけだろ?
なんて誤解されても仕方無い、かも知れない。

現在は、筋膜を切り開いて圧力を逃がす手術が確立しているので、治療とは行かなくとも症状を緩和させる事は可能だ。
前腕を大きく切り開くので凄い手術痕が残るけど、背に腹は替えられない。

スペンサーにストーナー、最近ではペドロサやブラドル、上記したイアンノーネやドヴィチオーゾ等、今も昔も多くのライダーが抱える右前腕部のアームパンプ。

原因として良く言われるのがMotoGPマシンの最低重量。
つまり、バイクが重いからより強い力でブレーキレバーを握る事に成り、それがアームパンプに繋がるんだと。

それについては諸説有るけれども、一理有ると言えば有るだろう。
至極ごもっともな説だ。
他にも体格や筋力、またバイクのスピードや乗り方等と要因は色々と言われてるけれども、実際にはコレって原因を突き止めるのは難しそうだ。

強い力を必要とするブレーキングが原因と成るアームパンプの対策としては、抜本的にそれを解決するなら、ブレーキレバーの操作力を弱める事で解決は可能だろう。
具体的にはブレーキアシストを取り付ける事。
四輪車では、随分昔から軽トラにさえついてるシステムをGPマシンに組み込む事だ。
これで操作力は激減するので、ブレーキ操作が原因と成るアームパンプの問題は解消される。

一部のBMWに組まれているEVOブレーキのように、電子アシストとABSの組み合わせが現実的だろう。
これなら、キュッと握れば最強レベルにブレーキを効かせつつも、制動力を電子制御出来る素晴らしいシステム。
もっとも、現在のレギュレーションでは減速時の電子制御は禁止されてるので無理な話なのだけど。

GPライダーのアイデンティティって奴だろうか?
ブレーキングこそがGPライダーの優劣を着ける最大のポイントで有ると。
そこを電子制御に依存すれば、ライダーの技量の点が大きくスポイルされてしまう。
最重要パーツだけに故障した時の安全性の問題も有るだろうけれども、GPライダーのアイデンティティに関わる部分だって点が大いに有ろうかと。

2スト500ccから4スト990ccに成った時にも、またトラクションコントロールが実用化された時にも言われてた事。
4ストは乗りやすいからライダーの差が出ないとか、電子制御のお陰でストーナーが勝ててるとか。

実際にはそんな事は無くて、結局速いライダーが速く、同じバイク乗っても速く無いライダーは残念ながらって状態に違いは無い。
ファクトリーマシンに乗ったら誰でも速いかと言われても、正直スマンかったなライダーが乗っても結果は正直スマンかったな状況に違いは無い。

だから、制動の電子制御が解禁されたとしても、速いライダーは速くてそうでは無いライダーはそうでは無い状況は変わらないとは思うけれども、それが解禁されることは暫くは無いだろう。
同時に、ブレーキのパワーアシストも無い。

と言う訳でライダーのアームパンプも抜本的に解決する事も無さそうだ。
制動コントロールがグランプリライダーのアイデンティティと言う考えが深く浸透してる以上、腕パンパンに成っても我慢して下さいな状況に変わりは無さそうだ。

MOTOR CYCLE

Posted by tommy