命綱持って出かけよう
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『そうだ、海を見に行こう』
梅雨の晴れ間が覗くある日の事。
彼は突然、そんな事を思い立った。
『そうだ、海を見に行こう』
と。
愛機リドレーに跨り、彼は海へとペダルを漕ぎ進めた。
日本海へ向かって。
.....なんでやねん。
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海なんて目と鼻の所に住んでる神戸市民。
岸壁ばっかりで、真冬の一時期を除いて概ねダークカラーの海だけど、時にセカンドインパクト後みたいな真っ赤に染まったりするダーティーな海だけど、そんな海なら歩いて見に行ける所に住んでる神戸市民。
なんでわざわざ自転車乗って日本海まで...
セローですら尻が割れそうに痛い、そんな距離を。
目的地まで約140km
往復しなきゃ成らないので280kmのかなりのロングライド。
ロングライドマニアからしたら丁度イイ感じのサイクリングだと、口尖がらせて生意気言ってのけるかも知れないが、常識的に考えたら自転車を漕ぐ距離では無い。
尋常じゃない距離なのだけど、サイクルロードレースなら200kmオーバーなんて現在においても全然珍しく無いので、280km走る事自体は実は意外とどうって事も無い、と言えばどうって事も無い。
ロードレースやってる人なら、それくらい毎日でも走れる距離だろうしね。
ただ、そこらのおじさんには途方も無い距離なのは違い無い。
グランツールやそれに準じるレースに出る人を基準にしたら鼻歌交じりの距離だとしても、そこらの民間人にとってはとてつもない距離な事に違いは無い。
なんだってそんな、尻の皮がズルズルに成りそうなそんな距離を。
海なんてベランダから見える所に住んでるのに。
第一の鬼門、兵庫県南部の人間にとって、北へ向かうには六甲山から連なる六甲山地を越える事がまず第一の鬼門として待ち構える。
ルート選択によっては、強烈にキツい所からそれ程でも無い所までと色々有るけれど、西宮~神戸辺りからならば概ね何処を通っても必死こいて登る事に違いは無い。
もうそこで足と心臓が終わってしまうんじゃ無いか?ってパワーを使って登る事に大した違いは無い。
まだ家を出て1時間なのに!
六甲を越えたら、後はただひたすら山と田園と山と田園の繰り返しをこれでもかと堪能するだけ。
これでもか!とばかりに。
そこに何が有る?
って聞かれても、山と田園と山と田園かなぁ?
としか言えない所だけど、自転車で走るにはとても気持ちイイのは確かだ。
少なくとも国道43号線を走るより全然楽しい。
ただひたすら特に変わりない風景を淡々と延々と走るだけ、だけど。
何処見ても景色は大体一緒な、漕いでも漕いでも全然進んでないんじゃ無いか?って強烈なデジャブ感に翻弄されながら。
輪行袋を持たずに出かけるロングライドは、途中で後悔してももう手遅れだ。
神戸から丹後半島まで自転車で来てしまった彼は、今更悔やんでももう手遅れだ。
ふと気付くと日が傾いて、天気が崩れそうに成ったとしても、それはもう手遅れなのだ。
途中で行き詰ってしまったフリークライミング程では無いけれど。
こんな命綱着けてない人が行き詰ったらどうするんだろうね。
途中でにっちもさっちも行かなく成ったらどうするんだろう。
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と言う訳で、目的地に行くだけで果ててしまったら帰れなく成ってしまうので、無理の有る距離を走る人は命綱として輪行袋を持って行く事をお勧めしたい。
ウルトラマンみたいな格好で大荷物担いで電車乗るハメに成ってしまうけれど、背に腹はかえれないそれくらいは辛抱しよう。
友人に遠まわしに『車で迎えに来てくれ』なんてみっともないお願いをしたくないならば。