カーボン、と言っても色々と

2023年4月9日

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この前までジャイアントのカーボンバイクに乗ってた人が、ふと気付いたらウィリエールに乗り換えてた。

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ジャイアントの何が気に入らなかったのか知らないけど、結構高かったのにポンっと買い換えるとは、中々やるもんだ。
リサイタル開けよ!
等と虐められたのだろうか?
別に台湾~イタリアに乗り換えた所で速く成る訳でも山が登れる訳でも無いとは思うのだけど。
でも確かに圧倒的に格好イイのは間違い無い。

wilier

このロゴだけでたまらない位格好イイのは間違い無い。
少なくともジャイアントさんよりは、ロゴに関しちゃ圧倒的に上だろう(個人の感想です)
台湾だから、イタリアだからと言う訳ではないのだけど。
どの道作ってる所はどっちも近所だったりして。

6800系の完成車で、実売30万円台半ばって所のモデル。
KUOTA同様、製品のクオリティの割りにお値打ちの価格との評価。
ちなみに私は何乗ってもいまいち良く解らないので聞かれても良く解らないのだが。

ウイリエールと言えばゼロ・セーイと言うモデルが有る。
上に載せた写真がソレ。
これはウイリエール110周年を記念としたスペシャルモデル。
現在のウイリエールの持ちえる最先端の技術が投入された非常に贅沢な作りの限定モデルだ。
お値段はフレーム単体で税抜650,000円。
高いと思うかも知れ無いけれど、他社のフラッグシップモデルなら平気で3桁行く事を考えたら、製品のクオリティの割りにお値打ちの価格との評価も頷ける。

素材は、ピッチ系の三菱ダイアリードに、PAN系の三菱パイロフィルMR70カーボンの組み合わせ。
さらに、SEI (Special Elastic Integrated) Filmと呼ばれる、高弾性フィルムをカーボンのレイヤー間に挟んでるんだとか。
何をおっしゃってるのか良く解らないが、何か凄いんだろうなーって事くらいは感じ取れる。
感じればそれで良いのさ。
何のこっちゃか良く解らなくても。

ちなみにここで使われる三菱ダイアリードとは、メソフェーズピッチ系と呼ばれる三菱レーヨン製のピッチ系炭素繊維。
ピッチ系とは、三菱レーヨンの場合は石炭から作られる炭素繊維の事。
東レのトレカに代表されるアクリル繊維を原料としたPAN系とは根本から異なる。

原料と製法の違いにより、引っ張り強度や弾性率、また熱伝導率も異なるので、一口に炭素繊維と言ってもその用途はそれぞれに分かれる。
コストは別として、引っ張り強度に関してはPAN系が勝る傾向に有り、弾性率や熱伝導率はピッチ系が勝る傾向がある。
使い分けのキモは技術屋の胸の中に有る。
つまり…ひ・み・つ。

なお、現在ピッチ系を作ってるのは日本では主に2社。
三菱レーヨンと、新日鉄系の日本グラファイトファイバーの2社。
これが日本におけるメソフェーズピッチ系、日本語で言えば中間相ピッチと言うか、液晶相ピッチと言うか。
ともかく、ピッチ系では主流と成るメソフェーズピッチ系を作る2社。
それにアメリカのCytecを加えた3社が、メソフェーズピッチ系炭素繊維を作るトップ3、と言うかオンリー3。
この3社が圧倒的多数派のPAN系炭素繊維に戦いを挑む勢力だ。

大阪ガスケミカル等の等方性ピッチは余り日の当たらない所が立ち位置と言っても強ち間違いでは無いのだけども、カーボンディスクローターってミルド繊維の等方性ピッチで作られてたんじゃないかって、何となくそんな事を小耳に挟んだ記憶が有る。
けど、まぁどっちでもイイか。

ともかく、なんか良く解らないけど自転車って凄いんだなぁって話なのだが、コレって別にウィリエールに限った話では無く、各メーカー共にフラッグシップ機には最先端のテクノロジーを惜しみなく注ぎまくって作って、そして実際それを市販してる。
理由は簡単。
世界の頂点で戦うプロは、基本的に市販してる自転車と部品、用品で戦う事がルールだからだ。
重量制限等の他に、基本的普通に買える物しか使っちゃダメってルールがある。
BMCのチームだからと、自分達だけBMC製の超スペシャルバイクを投入する事は許されない。
基本的に。
これから売る予定が有れば可、と言うちょっとあやふやな部分は...まぁアレとして。

これをそのままそっくりモーターサイクルに当てはめるのは難しいのだけども、仮にMotoGPは市販されてるマシンしか参戦させないぜってルールが出来たら、YZR-M1やRC213Vを数億円で発売し、マレリのECUも市販化される事と成る、と考えれば何となく解るんじゃないかと。
ん?余計に解り難いかも知れない。

ともかく、1億円もするYZRは通常、一般的なライダーには必要ないバイクだ。
YZR-M1買ったらと、MotoGPに出れる訳も無いのだから。
でも、そんなルールが出来たらメーカーは幾らだろうが売らざるを得ないし、MotoGPに参戦するチームは買わねば成らない。
そんなルールが出来たならば。
出来ないけど。

だからつまり、各メーカーのフラッグシップ自転車は、そもそもそれが市販されてなきゃ困る人達の為の物なのだ。
その昔に有ったNSR500Vなんかと同様に、市販はしてるけど別に普通のおじさんの為に作ってる訳では無いのだ。
乗るのも買うのもそりゃ自由なんだけど。

100万円のフレームに30万円のコンポと70万円のホイールを組んだ自転車の存在意義はそこに有る。
世界のトップで戦う選手は、一応は市販されてる自転車と部品を使わねば成らないルールなのだから、それに耐えうる自転車なり部品が必要なのだ。
そして、そんな人達に追いつこうと懸命に努力してる人達に取っても必要な機材なのだ。

なんか良く解らないくらいに高く、なんか良く解らないテクノロジーが使われてても、それが必要な人が居る限りはこの先も良く解らない高級自転車が売り続けられる
それが絶対必要としてる人達の為に。
ちょっと位高くても、世界の頂点で戦うには買わねば成らないのだ。
ほんの数センチの戦いを制するには、機材のハンデなんて有ってはならないのだから。

そうじゃ無い、たかが数センチで人生が変わる事の無い民間人の方は、わざわざウイリエールに買い換えなくても多分お腹引っ込むくらい練習するのが一番安上がりで効果的なんじゃ無いかと思う。
とは思うだけど、やはり重ねて言っておきたい。
やっぱ、ウイリエールは格好イイよねと。
この書体が。

Bicycle

Posted by tommy