赤いワゴンなんてただの郵便屋-2
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普通の大学生が買う初めての車はまさかのサニトラ。
サニートラック。
まさかのトラックに、周囲の皆は口を揃える。
なんでやねんと。
そんな話の続き
ちなみに、モトクロスをやるとか、何か荷物運ぶとか、なんて理由は一切無い。
単に気に入ったから買う。
ただただそれだけ。
それ以上の理由なんて無い。
それ以上の理由なんて必要ない。
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周囲は誰一人として理解されない彼のサニトラチョイス。
だが私はそんな彼のチョイスに理解と賛同する唯一の存在と成っていたので、良くサニトラの話を聞いてたもんだ。
ソレックス入れてワタナベのホイール入れて、なんて楽しそうに語ってる彼の話を良く聞いてたもんだ。
周囲の誰一人としてそれに理解を示す人間は居なかったけど。
まぁそりゃそうだ。
トラックだし。
いよいよ本当に買う、本当に買っちゃうって段階に入ったある日の事。
彼はちょっとした、でも非常に大きな幾つかの悩みに直面した。
一つは、付き合ってた彼女はサニトラを大層お気に召さないって点。
普通、大学生が車買うって、ちょっとしたセンセーショナルな話題だと思う。
彼氏が車買うって成れば、ちょっと友人に自慢したくも成ろうと思う。
ママチャリしか足の無い他の友人達に、ちょっと自慢もしたくなろうと思う。
でも、なんでトラックなのよ？
わざわざトラック買うのさ？
工務店やってるお父さんの借り物じゃなく、なんでわざわざトラック買うのさ？
と、彼女は理解を示してくれない。
そりゃトラックで待ち合わせ場所に来られても困っちゃう。
引越しもしないのに。
別に外車である必要も、スポーツカーで有る必要も、分不相応な高級車で有る必要なんてのも無い。
中古の軽でも、激しく凹んでなければ中古のスターレットでも構わない。
だから別に何でも構わない。
けどなんでトラックなのよと。
まぁ理解示してくれないのも無理はない。
そりゃ仕方ないわ。
ネジを納品しにいくようなトラックは、夢見る大学生のデートカーにはちょっと不向きと言わざる得ないのだから。
彼女の件はまぁともかく、もう一つの悩みがサニトラの色。
さて、何色にしようか？ってのがもう一つの悩みどころ。
ってのも、彼が買う予定の車はボディ補修を終えた中古のサニトラ。
当時は新車が作られてかどうかは覚えてないけれど、わざわざボディ補修しなくてもグッドコンディションのサニトラは普通に手に入る時代。
だが、さらにゼロ一個少ない価格で買おうと思ったら、どうしてもそんな車に手を出さざるを得ない。
もっとも、ちゃんと直ってたらそれでどうって事は無いんだけど。
それに何より、全塗装するなら色を選べるってのも大きな魅力の一つだ。
価格以上にそれは大きな魅力でも有る。
イエローにレッドにレーシンググリーン。
鮮やかなブルーだって似合うし、ブラックだって結構イケる。
カニ目で良くあるライトブルーも、ミニで良くあるアーモンドグリーンだって似合う。
サニトラは何色だって良く似合う。
普通のトラックには有りえないカラーだって選び放題。
鮮やかなペイントを身に纏ったら、もうただのトラックじゃ無い。
もう水道屋なんて言わせない。
個人的にはイエローがイイね。
レッドも捨てがたい。
私が買う訳じゃ無いけど。
あ、ちなみにアーモンドグリーンってのは、ちょいクリーム色っぽいグリーンの事。
アーモンドの葉っぱの裏みたいな色だからアーモンドグリーンって言うんだよ。
重ねて言うけれど、サニトラは凄く好き。
別にトラックが好きな訳では無く、サニトラが凄く好き。
多分買わないだろうし、現行のNP200はもっと買わないだろうけども、私は非常に好きな車だ。
だが、普通はあまり一般的に受け入れる車では無い。
何を買おうと個人の自由で他人がどうこう言う筋合いなんて皆無なんだけど、それでもやっぱり心無い声が届けられるのも仕方ない、と言えば仕方ない。
なんでトラックなの？
冷蔵庫も運ばないのに。
と。
乗用車としては一般的ではないけれど、この車は今も熱狂的なフアンが沢山居る事を見ても解るように、好きな人に取っては非常に魅力的な車なのは確か。
現にこのサニトラオーナーと成る彼は、記念すべき初めて購入する車としてサニトラを選んだし、私だって好きな車の一つなのだから。
繰り返すが私もとても好きな車の一つなのだから。
でも私は思った。
何故、白を選んだの？と。
わざわざなんで白く塗ったの？と。
まさかの白いサニトラに、私はちょっと驚いた。
まさか結構なコスト掛けてわざわざ白に塗るとは思わなかった。
エンジン降ろしての全塗装。
内装まで外したオールペイント準備万端な状態のサニトラ。
色だって選び放題なのに、なんでわざわざ白を選ぶ？
赤も黄色も緑だってピンクだって選び放題なのになんで白を選ぶ？
純正でイイじゃん、普通の白いサニトラでイイじゃん、鉄工所の中古でイイじゃん。
白いサニトラなんてわざわざ塗らなくたって幾らでも売ってるじゃん。
余計なお世話かも知れないが、私は声を大にして言いたい。
なんでわざわざ白に塗ったと。
白いサニトラを買うならともかく、なんでわざわざオールペンしたのだと。
白いサニトラなんてただの工務店じゃないかと。
ともかく、何でトラックやねんと言う声と共に、なんでわざわざ白にオールペイントしたのさとの余計なお世話な声にもめげず、彼のサニトラライフは始まったのだ。
サニトラを得た代わりに失ったモノも有ったけれど、まぁそれも青春の一コマとして淡い記憶として植え付けられてるんだろうと思う。
卒業以来交流無いから知らないけどね。
その3へ．．．は続かない。
続かない、けれども．．．なんとなく続く。