孫子曰く 勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、 敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む

私が公道でバイクに乗り始めたのは16歳の事。
ご存じな方はご存じかも知れないが、懇意にしてたバイク屋の店長から1989年式のCBR250Rをタダで貰ったので、それに乗ったのが公道での初めましてバイク。
モトクロッサーにはそれより前に乗ってたので、別に初バイクって訳では無いのだけど。

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その頃の私は、家族の誰かが高速道路のSAで取って来た地図が唯一の情報源だった。
程なくツーリングマップルと言う、バイク乗りに取ってのバイブルとも言える地図に出会うのだが、そんな便利マップの存在を知らなかった頃は、タダで貰ったペラペラの地図一枚。
でも、タンクバッグにこのペラい地図一枚を入れただけの装備で、京都から山道越えて日本海に行ったり、或いは本州最南端の潮岬まで行ったりもしていた。
まぁ、潮岬なんて、紀伊半島の海沿い走れば方向さえ間違えなきゃそのうちに着くんだけど、それにしてもそんなペラ地図一枚で良く行ったもんだと思う。

そんな私は、何時の頃からかツーリングマップルを更新する事無くナビが主力と成っていた。
そしてそれと共に、カーナビが無きゃどこにも行けないダメな体に成ってしまっていた。
ああ、なんてダメな子。

 

 

この日、私はこんな車に乗っていた。
後ろの方で飛んでるバイクでは無く、トヨタのハイラックスに。

この車、意外にコストパフォーマンスは高い。
使いどころは良く分からないが、プリウスやヴォクシーの高めグレード程度の値段で、こんなにデカい顔出来るのだから、コストパフォーマンスは非常に高い。
お手頃価格でデカい顔したいなら最高の一台だろう。

フォードのF150ならさらにデカい顔して走れるんだけど、あれは日本で買うと1500万円くらいするので、特に用事も無いのにただ単にデカい顔しいがためだけで乗るのはちょっとお財布に厳しい。
F150でもアメリカ国内ならば、3.3L V6モデルの安いグレードの物なら3000ドル程度で買えるので牧場仕事にも使えるのだけど、高いグレードは本国でも7000ドルオーバーなので、牛糞を踏みしめながら牧場内を走るのはちょっと抵抗が有る。
ただ日本には安いグレードの車は入ってこないので、輸送費込みで1500万円もしてしまうのが残念なお知らせ。
用事も無いピックアップトラックを買うには、ちょっと躊躇してしまうお値段だ。

一方、このハイラックスは400万円程と、中々にお手頃なプライス。
大きさも手ごろで、アルファードと同じ幅で、30cmほど長いだけ。
F150なら、アルファードと比較して幅が30cm、長さが1mも長いので、流石に東京や大阪で日常で使うには少々持て余す。
幹線道路しか走らないのなら何ら問題無いが、一般的な用途としてはちょっと大きい。
まぁ、4tトラックのショートボディでも6mも有るので、F150でも乗って乗れない大きさでは無いんだけどね。
私は遠慮しとくが。

ともあれ、デカい車に乗ってデカい顔した人には、中々にコストパフォーマンスは高い車。
それがハイラックスだ。

 

特にデカい顔してふんぞり返って生きたい訳では無いのだけど、タマにこんなゴツい車に乗るのも結構楽しい。
個人的には旧ミニや旧チンクくらいのミニマムな車が好きなのだけど、やっぱ何だのかんだの言っても、車ってのは有る程度デカい方が何かと良いのは明白。
ミニだのセブンだのSLKだの、身動き出来ないタイトな車に乗ってきた私は力いっぱいに思う。
小さい車はすきだけど、やっぱ車はデカい方が便利だよねと。
以前乗ってたイヴォークから、止めときゃイイのにRANGE ROVER SPORTにふと乗ってしまった時にも思ったもんだよ。
やっぱ車ってデカい方がイイわと。

 

だからとハイラックスに乗り換えた訳では無く、単にこの日は車を移動させる為にちょっとだけ乗ってただけの事。
友人の一人が買った車を移動させる為。
訳は、まぁ面倒だから割愛しておく。
ただ言える事は、私の車では無い、まだオーナーの元に届く前の車と言う事。
そして、まだこれからもうちょい手を入れるって事。

別に色を塗り変えたりマフラー替えたり、荷台に巨大なスピーカーやロケットランチャーを積んだりはしないけど、純正のオーディオからそこそこ高級なナビに替えてやろう、ってのがそれ。
その為、毎日暇してる私が、このハイラックスを運転して友人宅へと向かってたのだ。
組み込む為の高級ナビを持ってて、そこそこのノウハウを持ってるその友人宅へと。
自分の車なら自分でやるけど、他人の車だからノウハウ持って場数踏んでる人にお任せする。
内装の爪を折ったりしたら面倒な事に成るので、ノータッチが吉だろうと私は判断した。

 

車自体は何の問題も無く快適に走り、ディーゼル特有のガラガラ音や振動もあまり気に成らない、流石は現代のディーゼルだと思った。
大昔に乗った事の有るガラクタディーゼルハイエースとはやっぱ違うわと。

だが一つ、少し困った事が有る。
それは、今はまだナビが無いって事。
これから友人宅で付けるのだから、今はまだナビは無んだって事。
昨今ではやたらめったら巨大なディスプレイが最初から組み込まれてるのだが、このハイラックスはオーディオしか組まれてない。
純正ではどうなのかは良く知らないんだけど、ともかくこの日私の乗ってた中古のハイラックスにはオーディオしか無かった。
ナビも無ければネットにも繋がらない。
プライムビデオもSpotifyにも繋がらない。
ただのカーステ。

でも大丈夫。
私にはスマホナビと言う強い味方が居る。
IIJ Mioフォンで数百円で買った中華ドロイドだけど、ちゃんと道案内してくれるから何ら問題なんて無いさ。
スマホホルダーさえ無いのが困った点では有るのだけど。

あ、ちなみに現在、IIJ MIOフォンの850円(キャンペーン中は550円)ってのに入ってるんだけど、これが思いの外具合が良い。
データ量をカウントされない低速モードでも、スマホナビとSpotifyを使える。
低速モードでもテザリングが出来るので、データ転送量を気にせずタブレットでマップ表示させる事だって出来てしまう。
中々にイイ感じ。
私のような超ライトユーザーには。

 

『もうちょい先を右に曲がれよ』
と、助手席にポンっと置かれたスマホナビは私にそう告げた。
そんな言い方かどうかはさておき。

道一筋かと聞かれたら、そらそうよと答える元プロ野球選手も居るのだが、道は無限に有るのもまた実際。
私の人生も多くの分かれ道を右や左に折れ曲がって現在に至っているし、ここをご覧の皆様もきっとそうだと思う。
流石に中学校の先生からウエスタン・ラリアットの使い手に成るような人はそうそう居ないとは思うけれど、誰しもいくつかの道を通って現在が有る。
そして今現在が同じ立ち位置の人とて、それぞれが違う道を歩んできた、って場合も多い事だろう。

政治家にせよ野球選手にせよ、メインストリーム=つまり王道は確かに存在するものの、だからと全員がその道を進んできた訳では無い。
これはMotoGPライダーでも同じく、誰しもがスペイン選手権からMoto3→Moto2と進んでMotoGPに上がった訳では無い。
第2の道ながら最近は途絶えつつ有るSBKから移籍する道。
さらに過去には全日本GP500、或いはJSBからMotoGP参戦へと進んだ道。
はたまたイケル・レクオナのように、同じスペイン選手権でもスーパーモタードのスペイン選手権からMoto2を経てMotoGPに参戦したヘンテコ経歴を持つライダーも居る。

一つの道を突き進んで目標にたどり着くのは素晴らしい事では有るけれど、その目標地点にたどり着くのは決して一つしか道が無い訳では無い。
エベレスト山頂しかり、MotoGPしかり、人生しかり、そして友人宅への道もまた然り。
ルートは幾つも存在するのだ。
真っすぐに進むルートも有れば、右に曲がるルートもまた。

 

『もうちょい先を右に曲がれよ』
と、助手席にポンっと置かれたスマホナビは私にそう告げた。
そんな言い方かどうかはさておき。

その時走っていたのは、とても快適な幹線道路。
ハイラックスは勿論、ハマーH2だろうとH1だろうと、何なら16式機動戦闘車ですら快適に走れる道。
超快適ロード。
ハイラックスが5m超えてようと何ら問題に成らない。

だが、そんな快適ロードを走る私の耳に飛び込んだのは、スマホからのもうちょい先を右に曲がれやのアドバイス。
私は思った。
いやいや、この道、まっすぐじゃ無いの?
始めて通る道だけど、なんとなくのうろ覚えではこの道をまだ真っすぐ進むのがベストじゃ無いのさと。

『そこ、そこの交差点右やで』
と、またしてもナビからのアドバイス。
こんな言い方かどうかは重ねてアレとして。

私はここで選択を迫られたのだ。
なんとなくうろ覚えな自分を信じて真っすぐ行くか、それともナビを信じて右に曲がるか。
スマホの画面を見りゃイイんだけど、無情にも助手席の上。
見るに見れない、もどかしい状況。

最も正しい選択は、コンビニにでも入って地図を確認する事。
きっとこれが最も正しい選択だろう。
きっとこれが。
だが人は、必ずしも正しい選択を取れるとは限らないんだよ。
愚かだって?
そうさ、それが人って奴なのさ。

 

道の選択。

人生には幾つもの道を選択する機会が訪れる。
進学にせよ、人間関係やクラブ活動にせよ、就職や結婚にせよ。
全てを正しい選択を取るのは難しいのだが、それでもより正しい選択を取る方法は存在する。
それは、事前に準備をしておくことだ。
念入りに事前の準備をしておけば、より正しい選択を取れる可能性は高まる。
その場その場の直感で右か左かを選ぶよりは、遥かに正しい選択が取れる可能性は高まるだろう。
そんな事、2600年も前に孫 武が言ってる事だ。

 

コンビニに止まって道を確認する事なく、幹線道路から逸れて右折した私。
ハイラックスでもスイスイ走れる道から逸れて右折した私。
この選択が合っていたのか間違っていたのかはここでは触れたりはしないが、ただこれだけは言いたい。
念入りに事前の準備をしておけば、より正しい選択を取れる可能性は高まった事だろう、と言う事。
地図を確認し、道を確認し、そして使用するナビをGoogleナビじゃ無くてYahooナビにしておく、と言う事前の正しい準備をしておけば、より正しい選択を取れる可能性は高まった事だろう、と言う事。
セローでもキツい獣道だろうが田んぼのあぜ道だろうが平気な顔して連れて行くスパルタンなGoogleナビじゃ無くて、常識的な道を案内してくれるYahooナビにしておく、と言う事前の正しい準備をしておけば、より正しい選択を取れる可能性は高まった事だろう、と言う事だ。

 

右折した私の選択が合ってたのか間違ってのかはここでは言及しないけれど、まだ納車されてない車を用水路に落とさなくて本当に良かったと、それだけは言っておく。
中古車とは言えども、オーナーはまだ1mmも走ってないハイラックスをザリガニの住処に落とさなくて本当に良かったわ。
ただそれだけ。

CAR

Posted by tommy