セロー最大の弱点

四輪自動車で10万kmはそうガタガタ大騒ぎする距離では無いが、たかが低回転単気筒と言っても5,000rpmくらいを常用するバイクの場合、10万kmはちょっとガタガタ言うレベルかも知れない。
バイク王のお兄ちゃんとて苦笑いするレベルで。
じゅ....じゅうまんきろっすかぁ??って。

10万キロも走ると、ホイールベアリングやクラッチ~の駆動系は勿論、リヤショックやフォークのメタル、ステムベアリング、イグニッションコイルもそろそろ怪しい頃合いかな。
だが、少なくともアルミメッキシリンダーに成って以降のセローは、そう無茶苦茶な回し方をしない限り、オイル交換とオイル量のチェックさえ欠かさなければ意外なほどに頑丈だ。
それ以前の鉄スリーブの入ってた時代より遥かに。
ノーダメージとは言わないけれど、それでも鉄スリーブよりは強い。
5万も走ったら結構圧縮圧は落ちてたけれど、現代の....って表現が正しいかどうかはアレだけど、ともかくセロー225最終型の5MP=DG08J以降のエンジンは結構頑張ってくれる。
鉄よりアルミの方が柔らかいので、昔の鉄スリーブよりも現代のオールアルミシリンダーの方が弱いってイメージは有るんだけど、現代のアルミメッキシリンダーは鉄よりも遥かに耐久性は高い。
って、井上ボーリングの人も言ってる。
私に聞かれても知らんがな。

だが、幾らオイル交換を頻繁に行っても、新品エンジンを始動した瞬間から崩壊へと歩みを進める、避けようのないダメージは確実に存在する。
頑張るセローさんにも避ける事の出来ない、外から伺い知る事の出来ない、そしてそれが解った時にはエンジンは確実にブローして廃車の運命は避けれないダメージが。
セローに限った話では無く、オーバーヘッドカムシャフトエンジンの宿命とも言える深刻なダメージが。

 

これはカムチェーンガイド。
バイク用OHCエンジンは一般的に、クランクの回転をカムチェーンを介しバルブ駆動させる構造だが、そのカムチェーンはシリンダーブロックのカムチェーントンネルに干渉しないようこの樹脂製のレールに沿って回っている。
別に金属製の芯が入ってる訳では無く、ただのプラスチック。
ただの、とは言ってもエンジン内部部品に使えるエンジニアリングプラスチックなんだけど、それでもプラスチックで有る事に変わりない。
クラックが進行するといずれ崩壊する運命だ。
夫婦関係は多少のクラックなら修復可能かも知れないが、カムチェーンガイドは一度クラックが入ると不可逆的に崩壊へと進む。

エキゾースト側、インレット側それぞれに1本。
V型エンジンはそれが2セット。
インレット側は、カムチェーンテンショナーがセットされる、ってのが一般的。
CBRのカムギア、ドゥカティのデスモセディチやベベル等はその限りでは無い。
タイミングベルトや、プッシュロッドでバルブを駆動するOHVも同じくその限りでは無い。

カムチェーンテンショナーは、このチェーンガイドを押し付けてカムチェーンを張った状態を維持する部品。
従ってインレット側カムチェーンガイドは常に負担が掛かってるのでダメージを負いやすい事が想像に容易いが、意外とEX側の方が圧倒的に消耗が早かったりする。
やっぱ排気側って何においてもストレスが凄いんだろうね。

破損するとどうなるか?
実際に破損したことは無いんだけど、エキゾースト側のカムチェーンガイドが折れたら、カムチェーンがシリンダーブロックのカムチェーントンネルを叩く事に成る。
この場合はえらい騒音が出るだけで、カムチェーン交換程度で済むかな。
バルブタイミングが狂ってバルブとピストンが衝突する可能性は....どうだろう。
問題はインレット側。
ここが折れたらカムチェーンテンショナーが機能しなくなるので、カムチェーンがデロデロに緩んで外れる可能性が有る。
通常はスプロケットから外れないようにストッパーが着いてるんだけど、4,000rpmで回ってる最中なら何が起こるか分からない。
さらに高回転の15,000rpmならどうなる事やら想像すら出来ないよ。
折れたカムチェーンガイドがカムチェーンに絡まる可能性も有るし、まぁともかくエラい事に成る事は間違いない。
そらもうココが折れたら大変ですわ。

補修方法は交換しかない。
でも、IN/EXの両方で1万円程もするんだよね。
たかだかプラスチックのくせにまぁまぁ高い。

さらにIN側の交換は、ローター(フライホイール)まで外さなきゃ成らないのでこれが結構大変なのだ。
EX側だけなら、シリンダーを外したらスポって抜けるけれど、IN側はクランクケースにボルト留めされてるので、その辺りにアクセス出来るまで分解する必要が有る。
正直、まぁまぁ面倒臭い。

だが、これが折れるとほぼ確実にエンジンは破壊されるので、何かの機会に腰上を開ける機会が有れば、ちゃんと確認するのをお勧めしたい。
知らないまま乗るのはまだしも、クラックが入りまくりの状態を知った上で乗るのは、ちょっと頂けない蛮行だろう。
1万円程ケチったが為にエンジンがイってしまったら目も当てれやしないから。

ついでなので、カムチェーン~カムスプロケットまで替えてやればカム駆動系はちょっと幸せに成る。

まぁ、でも開けなきゃ解らないので、知らなきゃ知らないで意外とどうって事無いのかも知れないけどね。
過去に何台も乗ってきたセローのほぼ全てのエンジンで、かれこれ5回や6回はこの部品を交換してきたけど、実際に折れた事なんて皆無なのだから。
そりゃ、折れたらえらい事ですわ。

 

MOTOR CYCLE

Posted by tommy