お母さんビジネス理論

お母さん理論。

古来よりいくつもが生み出されたお母さん理論。
その代表的なものの一つが、論理的な理由は一切無く、全てをダメだと切って捨てる『ダメなものはダメ』理論。
その昔、そんな超理論を威風堂々と展開した野党党首が居たらしいが、たった10文字足らずで表されるその言葉のパワーに、私はただただ圧倒されるばかりだ。
何も言い返す事なんて出来ない、出来やしない。
ダメなものはダメだなんて言われたら。

本来ならば、ダメな理由を論理的に説明するのが理性有る人間の姿なのだろう。
マンモスを狩ってた時代ならそれで十分かも知れないが、農耕が始まってコミュニティが確立した弥生時代以降の人類ならば、もうちょっと論理性が欲しい所では有る。

だが、私の書く文章のようにダラダラと長々と社員食堂の味噌汁のように薄めてしてしまうと何が言いたいんだかサッパリぼやけてしまうのも、また然りな訳で。
イタリア語で急行を意味するエスプレッソのように、早く、濃く、深く、ガツンとハートに響く、その10文字足らずのお母さん理論。
その貫通力はの前では、理屈や理合いなんて物は何ら意味を成さないのは確かな事だ。
理性有る人間としてはどうかと思うけれど、攻撃力ではお母さん理論が圧倒する。
理性有る人間としてはどうかと思うけれど、藤波辰爾の話よりもアニマル浜口の雄たけびの方が、より人のプリミティブな部分に突き刺さるのと同じ。
心臓に鋼鉄の槍を1本突き立てるのと、ピンポン玉1000個を投げつけるのはどちらが攻撃力が強いのかは、言わずもながって奴だろう。
そう、今津最中だよ。

ダメな理由を求める事、それ自体がダメなのだ。
論理性を求める事、それ自体がすでにダメなのだ。
何故なら、ダメなものはダメなのだから。
話はいたってシンプルなのだよ。
今津最中。

 

そして、全てがダメな場合も有れば、都合に合わせてその可否が取捨選択されるのもまた一つのお母さん理論。
『コレは良いけれどソレはダメ』と言う、境界があいまいな物を胸先三寸で分断する理論。
空手チョップで箸を割るかのように否応なく分断する。

ドラえもんは良いけど、ドラゴンボールはダメとか
カキフライは良いけど、エビフライはダメとか
ムーンサルトプレスは良いけれど、シューティングスタープレスはダメとか
成田山の交通安全お守りは良いけど、なんちゃら教の幸せに成る壺はダメだとか

そんな、ちょっとした違いによる可か不可かの分断。
何の世界にもその可否のラインは存在するのだけど、お母さん理論においては全てはお母さんの胸先三寸で決まってしまうのが大きなネックだ。
お母さん理論の前には砂山のパラドックなんて関係ないね。

お母さん以外にも消費者庁が不実証広告規制のガイドラインを発表してるのだけど、それとて判断は難しいよね。
金運を呼び込む黄色い財布にしても商売繁盛の熊手にしても、それを買ったからと金が儲かる根拠なんて何も無いのだから話は中々難しい。
財布や熊手を売ってる人は良く儲かってるのだろうけどさ。
良く思われる事だよ。
商売繁盛なのはお前の神社だけやろ、と。
日々苦労してるお店の方々は。

 

私がまだ学生だった頃、知り合いの一人が新しいビジネスプランを考えたと言い出した。
そのビジネスとは、クレーンゲームを使ったビジネス。
アンパンマンのぬいぐるみクレーンゲームが爆発的にヒットした頃の話だ。

そのビジネスとは、1回100円のクレーンゲームを置き、客はそのぬいぐるみをゲットすべく小銭を投入する。
ん?
それのどこが新たなビジネスなんだと思う人はちょっと待って欲しい。
彼が考えたのは、そのぬいぐるみを買い取る専門の店を別に1店作ろうって事。

1回100円のゲームでぬいぐるみをゲットすると、そのゲームセンターのすぐ裏に偶然有る小さな別の店に持ち込んだら500円で買い取ってくれるってシステム。
ぬいぐるみは、金のリボンが巻いてるとかって、ちょっとスペシャルなカスタマイズが施されてて、他所で取ったぬいぐるみは残念ながら買い取ってくれないよ。
その店のぬいぐるみしか買い取ってくれないこだわりの店だ。
まことに残念ながら、他所でゲットされたメロンパンナちゃんの買取りはお断りさせて頂いております。

その500円で買い取ったカスタマイズされたぬいぐるみは、偶然にもすぐ裏に有る先ほどのクレーンゲーム店が550円で買い取って、またクレーンゲーム機に収納されグルグルと循環する、ってシステム。
今風に言えばエスティーなんちゃらって奴だ。
店員に言えば新品に交換もしてくれるので、純粋にぬいぐるみが欲しい勢力にも安心。

あるいは昔から良く有ったコインゲームみたいな形で、上手く行けば小さなぬいぐるみを一気に大量に取れる方が良いかも知れない。
それをまたしても偶然隣合わせてる別の店に持ち込んだら1個50円で買い取ってくれるとか。
カゴ一杯取れたらウハウハですわ。
ほぼイキかけました状態。
取れたら。
ゲーム代金は今どきならスマホ決済が良いかもね。
ん、まさに外道。

 

と、そんな偶然ぬいぐるみ買取屋が裏に有るクレーンゲームビジネスを考えついたのだけど、とても大きな問題をはらんでるので結局はそんな無茶な事はせずに堅実な道を歩んでる。
アッチの三店方式は良くてもそれ以外はダメだと、そんなお母さん理論による謎の線引きがされる我が国では、きっと彼のビジネスが実現する日は来ないんだろうと思う。
どっかで有りそうだけどね。

MOTOR CYCLE

Posted by tommy