プライドワン

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何の世界においても、一流のプロってのは凄いもんだ。

左官屋にせよ料理人にせよボクサーにせよ、何だろうとその道の一流のプロと、ちょっと腕自慢な素人とは大きな隔たりが有る。
そこには大きな差が。

バイクの世界にも一流のプロと呼ばれる人たちが居る。
メカニックや白バイ隊員など色々と居るのだが、筆頭として挙げられるのはやっぱりレーサーだろう。
ロードにせよモトクロスにせよトライアルにせよ、国際ライセンスを持つ一流と呼ばれる人たちの走りは、民間人からしたら常軌を逸した走りに写る。
ロードはその走りを間近で見る経験なんて今まで殆ど無いのだけども、モトクロスの場合は割りと珍しくも無かったりする。
と言うのも、良く一緒にコースに走りに行ってた人が、『元』の肩書きは着くけど国際なんちゃらってライダーだったりしたから。
その走りは流石に凄まじいの一言に尽きる。
同じバイク乗ってるとは到底思えない程に。

ちなみに、ロードの国際なんちゃらって人も実は我が家にも居るのだが、この所は自転車ばっかリ乗ってるので300km/hでフルブレーキングする姿を見ることは無い。
130Rを尋常じゃ無い速度で膝擦って曲がる姿も見ることも無い。
ローラーでコケて顎擦りむいた姿を見た事有るけど。

そんな『元』の肩書きは着くけどモトクロスの国際なんちゃらってライダーだった人が久しぶりに遊びにやってきた。
今もモトクロスごっこに熱中してる元気なおじさんだ。

ファクトリーライダーと言う、さらに超絶レベルな人間程では無いが、それでも流石に国際ライダー。
尋常じゃ無い走りは肩書きに偽りが無い事を如実に物語る。
2つ程曲がったらもう居ないので、余り参考には成らないのが残念なのだけど。

レースにエントリーしなくなって幾年月。
流石に今や限界ギリギリで走る事なんて無く、走る時は気持ちよく走り、譲るときは快く譲る、安全第一の大人の走りを心がけてるみたい。
安全第一、楽しいファンライドを心がけてるみたいな。
怪我も治りにくいお年頃だしね。

ただ、『元』の肩書きは着くけどモトクロスの国際なんちゃらってライダーだった人。
本気で走ったらまだそこらの兄ちゃんには負けんよ
のプライドは持ち合わせている。
普段は抑えて安全第一に走ってるけど、本気で開けたら民間人には負けんよ。
と、密かに心の奥にはそんな気持ちが蠢いてるみたいな。
『元』の肩書きは着くけどモトクロスの国際なんちゃらってライダーだったプライドは未だご健在な模様だ。
現役レーサーはともかく、そこらの兄ちゃんには負けんよ。

と言う、『元』の肩書きは着くけどモトクロスの国際なんちゃらってプライドが、無残にも打ち砕かれたのがついこの前の関西のとあるモトクロスコースでの事。
コースで顔を合わせた酒屋だか魚屋だかのやたらと速いお兄ちゃんにメッタクソにしてやられ、プライドが無残にも崩壊してしまう憂き目に。
嗚呼、なんて魚屋。

なんでも、別にレースはしてないけど子供の頃からモトクロスをやってきた魚屋らしい。
国内なんちゃらってライセンスすらも持って無い、ただの魚屋。
酒屋だったかも知れないけど、まぁどっちでもイイや。

この魚屋の兄ちゃんの事は随分前から速いのは知ってたけど、同じマシンなんだから本気で走ったら負ける事ないわと思ってたらケッチョンケチョンにしてやられたとか。
コース上で出合ったので、いっちょ揉んでやろうかと本気で走ったけどあっけなくぶっち切られたらしい。
嗚呼、なんて魚屋。
酒屋だったかも知れないが、そんな事はどっちでもイイさ。
左官屋だったっけ?
まぁイイか。

腕自慢の民間人と、超一流とは言いがたいけど一流だったライダーとでは、年食ったと言っても随分とその差は有る。
とは思うのだけど、世の中には凄い人間も居るって事なんだろう。
プロの一歩も二歩も前を行く素人ってのが。
日本語使用歴65年の天龍よりも上手に日本語が喋れるケニー・オメガみたいに、プロの一歩も二歩も先んじる素人も居ると言う事なのだろう。

まぁ、所詮は『元』なんだから、そんな事もあるさ。
現役ファクトリーライダーがそれでは余りに酷な話だけど、所詮は『元』なんだから、そんな事もあるさ。

と慰めてやろうかと思いつつも、とても邪魔臭いのでまぁイイかと思ってる。
嗚呼なんか、邪魔臭い。
色んな物をこじらせたおじさんはとても面倒臭い。

魚屋は知らない。
このややこしくも邪魔臭い感情が芽生えてしまった『元』の肩書きは着くけどモトクロスの国際なんちゃらってライダーだった人の闘志に火が着いてしまった事を。
勝負に負けたおじさんが、そして再びプライドを取り戻すべく巻き返しを決意した事を知らない。
今度は絶対に、絶対に負けないぜと心に誓った事を知らない。
魚屋は知らない。

もっとも、その日のコース上で変なおっさんに勝負挑まれた事すら、もしかしたら知らなかったかも知れないけれど。
え?僕、勝負してたんすか??
マイペースで走ってただけなんで知りませんでした
って。

それはそれで、余りに非情で残酷な現実なので黙ってて欲しいと思う。
お口閉じててください、と言う気分で一杯だ。

MOTOR CYCLE

Posted by TOMMY