血縁は紫外線より強し(再)

有る猛烈に暑い夏の日。
行った所はとあるテニスコート。

 

何?
テニスなんてしてたっけって??

ああ、その疑問はごもっともだ。
殆どしたこと無いさ。
って言うか全く出来ないさ。
そもそもこの暑い中する訳無いさ。

目的は、友人の妹ちゃんがテニスしてるから、後で一緒にお茶でもしようぜって、なんかそんな話で。
この妹ちゃんとも割と顔馴染みで、一緒にあんな事はした事無いけどこんな事はした事は有ったりして、私とは割と濃密な関係を持ってたりする。
どんな事かはさておき、割と良く知る間柄だったりするんだ。
ここ何年かは疎遠だったんだけども。
久しぶりだからちょっと楽しみ。

 

バイクを停め、テクテクと目的のテニスコートへ。
気象庁発表値で35度くらいの真夏日。
炎天下、このお日様が降り注ぐテニスコートの上では気温は何度を示すんだろうか?

あ、ちなみに
温度計に直射日光を当てて50度とかを示した所で気温は50度じゃ無いので、良い子のみんなはそんなアホは晒さないように注意しよう。

 

夏のテニスコートには不似合いの分厚いジーンズとガボガボしたゴツい靴履いて、夏のテニスコートには不似合いのゴツいジャケットを小脇に抱えた、夏のテニスコートには不似合いのご苦労な格好でテクテクと。
この暑い中テニスしてるご苦労な人たちの側をテクテクと。
私もみんなもご苦労様だ。

『あ、居た居た』
と、先に合流した友人が幾つか有る内の一つのテニスコートを指さした。

その指をさした先には、長く黒いトレパンと黒いTシャツに、黒い腕カバーと黒いフェイスマスクをしてミスターマリックみたいなサングラスした人の姿。
余りの暑さに焼け焦げたのかな?って格好の人。
アフガニスタンの方ですか?

1mmたりとも日焼けは許さない!
そんな鬼気迫る姿。
蒸されてもイイ、焼けるよりは遥かに。
そんな鬼気迫る紫外線に抗う姿。
もう全身真っ黒け。
家に居れば良いのに、と言わずには居れない。

 

でも流石は血の繋がりは侮れないな。
私は良くこんなアフガニーな格好してて自分の妹だと解る物だと思った。
ちょっと離れたら性別すら解らないこの姿を見て。
コナンの犯人のような、変わり果てた真っ黒けのこの姿を見て。
良く解るもんだと。

これが血縁って奴なんだろうね。
他人からは見分け着かないけど、血縁者だからなんとなく、でもハッキリと解るんだろう。
これが血の繋がりって奴なんなんだろうね。
こんな真っ黒けに変わり果てた妹が一発で解るなんて。
やはり血縁は強い。
夏の紫外線よりも遥かに強い。

 

そもそもこの友人は、中々に目の付け所がシャープな人。
この日にしても、たまたまバイクで国道を走ってた私を見つけたくらいにシャープな人。
それにしてもフルフェイス被った後姿の私を見て良く解ったものだと思うわ。

そう、実はこの日、国道を走ってる時にこの友人に見つけられ、クラクション鳴らして路肩に止められ、それで急遽このテニスコートへと同行したのだ。
ストリートギャングかと思ってちょっとびっくりした。

バイクの車種なんか全然知らないだろうし、勿論私の乗ってるバイクの名前も知らないだろう。
そして私のヘルメットのデザインも知らないし、普段バイクに乗ってる時のスタイルも知らない。
それで良く私の事が解り、躊躇無くクラクション鳴らせた物だと思う。
こいつはやっぱり色んな意味で凄いと思う。
私には真似出来ないスキルを持ってる。
後姿を見ただけで良く解ったもんだと思うな。
もし違う人だったらどうしてたんだろうと。

でも本人曰く、間違ってたら横向いて知らん振りするか、愛想笑いで誤魔化すつもりだったみたい。
確率は五分五分かなぁって感じだったとか。
うん、こいつはやっぱり色んな意味で凄いと思う。
私には真似出来ないスキルを持ってるわ。
五分五分でクラクション鳴らせるような根性は私は持ち合わせて居ない。
迷惑この上ない行動力は持ち合わせて居ない。
ってか、そもそもクラクションをやたらと鳴らすなって話だ。

 

私はそんな事をしみじみと思いつつ、その炎天下のテニスに打ち込む友人の妹の姿を眺めてた。
コナンの犯人のような、真っ黒けに焼け焦げた妹ちゃんの姿を。
あんな真っ黒けに変わり果てても妹の事がわかるなんて、やっぱ血縁ってのは凄いんだなと思いながら。

『あ、姉ちゃん、もう来てたの?』

と、後ろから、涼しい格好に着替えた妹ちゃんから声を掛けられる、その瞬間まで。

..........
アカンやんか
血縁、全然アテに成って無いやんか。
妹、もうとっくに着替えて後ろに居てるやんか。
あの真っ黒けは全然違う全然知らん人やんか。
どこかの名も知らない見ず知らずのアフガニスタン人やんか。

 

でも、そんな事は一切気にせず、全てを無かった事にしてスルーしてしまうこの友人は、私には到底真似出来ないスキルを持ってるなと思う。
さっきまで声を掛け手を振ってたアフガニスタン人に一瞥もせず、1ミリたりとも省みず、妹ちゃんと談笑する彼女に、私には到底真似出来ないスキルを持ってるなと思う。
と、共に、テニスしてる最中に集中を乱すような事してスマンかったと、見知らぬアフガニスタン人に心の中で謝罪する私なのだった。

正直、زه بخښنه غواړم

 

小噺

Posted by tommy