この道は危ないよ
『この道は危ないよ』
と教えてくれる親切なカーナビが有る。
事故が多いとか、取締りが有るとか、場合によっては車上荒らしが出没するとかって。
便利な世の中に成ったもんだ。
でも
『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危ないよ』『危険』『危険』『危険』『危険』『危険』『危険』『危険』『危険』『危険』
って、ずっと言われてたらうるさいわぁ!って言いたくなる。
線抜いたろか!って。
ガンダム00におけるハロ(コナンバージョン)に遭遇した時と同じ感情が芽生える。
オリジナルバージョンは悲しかったな。
それに比べてコナンバージョンの野郎は。
いや、まぁそりゃ危ないんだろうけどさぁ。
そんなに危ない危ない、取り締まってる取り締まってるって言われてもなぁ。
まぁ線抜かなくても、幾つかボタン押して設定変えたら良いのだけど、ともかくそんなギャーギャー騒がしいナビの付いた車に乗っていた。
お馴染みのインプレッサに。
「この道、ちょっと縁起悪いんだよねぇ」
と、横に乗る友人がぽつりと。
国道43号線を走るとやたらめったらギャーギャーうるさいナビは沈黙を続けるが、隣に座る友人はそんな事をぽつりと。
人は生きて居れば何かしらの苦い思い出の一つや二つは有る。
胸に流れ弾の一つや二つ刺さってるかどうかは知らないけれど、苦い思い出の一つや二つはきっと有るだろう。
勿論私にも有る。
「なんか、この部屋スルメ臭いよね」
と、自分の部屋に初めて連れ込んだ美少女に、スルメ臭いと言われた高校1年生のタカシ君程では無いにせよ。
ああ、あの日のタカシ君は悲しそうだった。
本当に悲しそうだった。
この度の失言、真にスマンかったと、あの日の美少女自ら謹んで謝罪申し上げる所存だよ。
それにしても、美少女だなんて。
照れるなぁ。
「この道、ちょっと縁起悪いんだよねぇ」
と、横に乗る友人がぽつりと。
どうやら、何年か前に今走ってる道で捕まったらしい。
スピード違反で。
覆面パトカーに。
『それは縁起が悪いのでは無くて自分が悪いのと違うか?』
とか思いつつ、そうなんだぁと、スロットルを緩めた。
まぁそもそも大して飛ばしても無かったけれども。
前は赤信号。
私は程よい車間距離で車を停止させた。
赤信号を待つシルバーのクラウンの後ろに。
.....
こいつは臭ぇ。
覆面の臭いがプンプンするぜ。
私が虎ハンターなら条件反射的にその覆面をひっぺがしに行く所なのだけど、残念ながら私はただの民間人。
どうなんだろう?
どうなんだろうねと思いながら、シルバーのクラウンの後ろに静かに停止させた。
イエローのセンターラインが引かれた、片側一車線の田舎道。
信号が変わり、制限速度でテレテレ走るシルバーのクラウンの後ろを追走した。
この覆面臭いクラウンは、果たして本当に覆面なのか、それともただのシルバーのクラウンなのか?
などと思いながら。
覆面の見分け方の説ってのが有って、2人乗ってるとか、後付けのアンテナが付いてるとか、車名以外のエンブラムが着いてないとか、屋根が窪んでるとか。
色々と。
でも、どれも絶対ではない。
2人乗ってるのは確実だけど、大体はスモークガラスだからちょい見にくいのが難点。
天井にパトランプ収納部分が有るのも確実だけど、バイクならまだしも自動車を運転しながらそれを確認するのは無理。
後は....必ずしも絶対は言い切れない。
エンブレムが有るから覆面じゃないよと判断するのはちょっと危険かもね。
覆面に捕まった経験が有ると言う縁起が悪い道路。
教科書に出て来そうな程に覆面臭いクラウン。
でも普段はギャースカやかましい癖に、沈黙を続けるカーナビ。
どうしたもんかと思いながら、ただただ静かにその怪しいクラウンの後ろを走るのだった。
ただそれだけの、特に気の効いたオチの一つも無いお話。
まぁ確かめる方法なんて簡単なんだけどね。
イエローのセンターラインを割ってブチ抜いてやれば簡単に確かめれるんだけど、そこまでヤケクソな人間では無いので遠慮しておくわ。