突然セルが回らなくなった時のトラブルシューティング

バイクの電気系、と言ってもさまざま有るのだが、大きくは充電、点火、制御、装備の4つに分けられるかと思う。
良く〇〇は電気系が弱い、なんて適当な事を言い出す人も居るのだけど、この辺を整理しておかないと電気系って何かね?って話に成る。
ウインカーの玉が切れるのとステーターコイルやECUが壊れるのとでは、同じ電気系と言っても話は大きく異なるのだから、単に電気系とくくられても困っちゃう。

今回は、朝、バイクに乗ろうと思ったらセルが回らなくて困ってしまった、って良く有るトラブルのお話。

 

結論から書けば、スターターモーターやリレー、それらを結ぶハーネスに不具合が無い限り、要するにバッテリーが上がってるって事。
当然と言えば当然なお話なのだけども、そのバッテリー上がり=つまりは放電した状態は一時的なものなのか、それとも抱え込んでしまったトラブルなのかを見極める必要が有る。
さもなければ、充電しても、或いは新品バッテリーに交換したとしても、根本的な解決には至らない。

 

 

1.バッテリーの電圧測定

オーム(OHM) 電機(Ohm Electric) 普及型デジタルテスター TST-KJ830

新品価格
¥1,251から
(2024/2/4 08:32時点)

バッテリー単体、もしくはエンジン停止状態でのバッテリーの(+)と(-)の間の電圧を測定する。
正常値は概ね12.5V程度。
もしバッテリーが正常にも関わらずスターターモーターがぴくりとも作動しないなら、スターターリレーやケーブル、スターターモーター自体の不具合が有りえる。

なお、サービスマニュアルでは基本的にアナログテスタを推奨してるが、単に電圧を測定するだけなら丈夫で安いデジタルテスタで事足りる。
これが無いと話には成らないので、安いのでも良いので一つは持っておこう。

 

電圧が低いならとりあえず充電しよう。

デイトナ(Daytona) バイク用 バッテリー充電器 (ジェル/密閉/開放式対応) 防水 スイッチングバッテリーチャージャー 95027

新品価格
¥5,893から
(2024/2/4 08:43時点)

充電器は非常に数が多いが、良く分からないならバイク専用を使うのが吉。
自動車用に多い開放式とバイク用の制御弁式とでは充電のお作法は少々異なるので、充電器は正しく選択しよう。
良く分からんずらって人はデイトナ様を選んでおけば間違いはない。

正しく充電されたらバッテリーに不具合が無い限りはスターターモーターは動くはずだが、それで万事解決!とは必ずしも言えない。
暫く乗らなくて少し放電した場合や、エンジン始動に失敗して単にバッテリーを上げてしまった場合は、充電しただけで解決する可能性は大いに高いが、バッテリーの不具合や充電系統の不具合でバッテリーが放電した場合は、一回充電しただけでは根本的な解決には至らない。
充電して一時的に回復しただけで、明日の朝にはまた同じ事を繰り返す。
歴史は繰り返す。

 

2.エンジン稼働中のバッテリー端子間の電圧測定

バッテリーをフル充電したらエンジンの始動前にバッテリーの電圧を測定する。
12.5V程度が正常な値。
続いて、エンジンを始動させて再びバッテリーの端子間の電圧を測定する。
アイドリング状態で14V程度が正常値。
安定して14V程度を維持していたら、バッテリー自体に不具合が無い限りは正しく充電される。
それでもすぐにバッテリーが上がるなら、それはバッテリー自体の寿命を意味するので、さっさとバッテリー交換しよう。
これで話は解決だ。

もしエンジンを始動させても電圧が変化しないなら、残念ながら充電が出来ていない事を意味する。
また逆に、15Vを大きく超える電圧が測定されたら、充電の制御が正常に為されてない事を意味する。
電圧は低くても高くても問題大有りなので、この辺を解決しない限り充電したりバッテリー交換しても何の意味もなさないので注意が必要だ。

 

エンジン稼働中にバッテリー端子間の電圧が14V程度有るのにバッテリーが上がってしまった場合は、一度充電器で充電する。
それでもだめならバッテリー交換。
エンジン稼働中にバッテリー端子間の電圧が上がらない、もしくは15V以上に上がってしまうなら次へ

 

 

3.エンジン始動前後で電圧が変わらなかったとき

エンジンが動いてるのにバッテリー端子間の電圧に変化が無いなら、バッテリーに電源が供給されてない事を意味する。
つまり充電されてないので、すぐにバッテリーが上がってしまうのは至極当然だ。

まず考える事は、正しく発電できているか否か。
つまりステーターコイル=発電機の可否がまず第一。
セロー225WEの場合は、バッテリー付近の白いコードが3本束なるコネクタを外し、エンジン稼働時にメス側の端子間の交流電圧を測定する。
ここのコネクタを抜いても、充電されないだけでエンジンは普通に動くの心配は無用だ。
発電機は交流なので、自動変更されないテスターを使ってる場合は、正しく交流モードへ切り替えよう。

A-B間、B-C間、C-A間のそれぞれを測定して、アイドリング状態でそれぞれが交流20V以上で安定していたら問題は無い。
測定値に大きなばらつきが有ったり、或いは測定値が得られない場合はこのコネクタ~ステーターコイル本体までの故障と判断出来る。

だが基本的に、ステーターコイル自体に不具合が有ると通常エンジンはまともに動かないので、走りには何の問題も無いのに単にバッテリーに充電されない場合なら、仮にこの測定値で不具合が有ってもまだ復活する可能性は僅かながらも有りえる。
その昔に乗ってたセローも、崖下に落として木に突き刺さった際にダメージを負ったのか、この白いケーブルが断線して充電されなくなった事が有ったので、不良=ステーターコイルの交換とは必ずしも言えない、かも知れない、一縷の望みって奴で。

エンジンの点火自体に問題が多発してるなら、そりゃもうスマンかったとしか言いようは無い。
アキラメロン。
ステーターコイルを交換するか、さっさとセロー250に乗り換えよう。

 

A-B間、B-C間、C-A間のそれぞれを測定して、アイドリング状態でそれぞれが交流20V以上で安定しているにも関わらず、バッテリーの端子間で電圧が上がらないなら、レギュレートレクチファイヤからバッテリーに繋がる間に有るヒューズを確認。
ヒューズが切れていないならレギュレートレクチファイヤの故障と断定できる。

レギュレートレクチファイヤとは、ステーターコイルで発電した交流を直流の12V程度に制御する部品の事。
交流から直流に変換するレクチファイヤと、電圧を制御するレギュレータがワンセットと成ったレギュレートレクチファイヤが一般的。
大昔のソフトバイク以外は、通常はこの部品が付いている。

 

エンジン稼働中にコネクタ間の電圧が、交流20V以上有ればレギュレートレクチファイヤの故障。
交流20Vが得られないなら、ハーネスの断線かステーターコイルの故障。

ステーターコイル故障による交換部品は5MP-85510-00 ステータアセンブリ
37,950円もするけれど、まだパーツが出るだけ良かったと思って諦めて欲しい。
スマンかったな。

 

4.エンジン稼働中にバッテリー間の電圧が15Vを超えている場合

電圧が低いのも問題有るが、電圧が高いのもまた問題が有る。
今回このセローに起こった不具合もコレで、電圧がアイドリング状態で18V程度まで景気よく爆上げする症状を発症していた。

ここでも原因はコレ。


レギュレートレクチファイヤの不具合。
充電不良による原因としては、バッテリーの寿命かレギュレートレクチファイヤの故障のどちらかが一般的。

レギュレートレクチファイヤの不具合の検査方法は各マニュアルに大体は記載されているだろうけど、発電してるのに電圧が上昇しない場合や、電圧が余りに高すぎる場合はここの不具合と判断して間違いは無い。
少なくとも電圧が高い場合に、他に原因が有る可能性は無い。

5MP=セロー225WE交換部品は3TJ-81960-02 レクチフアイヤアンドレギユレータアセンブリ
値段は18,480円。

部品番号を見たらわかるように、そもそもこれはセローの部品ではない。
3TJ=FZR400RRの部品の流用なので、ぶっちゃけマウントとコネクタが合えば流用できる部品は多い。
昨今のセロー界隈では、台湾ヤマハのマジェ125のレギュレートレクチファイヤを流用するのが流行ってるみたい。
これなら現在価格で10,604円と、セロー純正より随分と安い。
他にもカワサキの純正部品を使ったりと、割と自由を謳歌してるのがこの部品。
もっと安く上げたいなら、社外品か中古品と成るのだけど、最近は可動状態のバイクをばら売りしてヤフオクで売りさばく業者が多いので、中古部品の選択も十分に有りえる。
まだ動くバイクをばら売りするその行為の良し悪しを蒸し暑く語る気はないが、部品の入手先としては値段次第で悪くない、かもね。
社外品は当たりも外れも外から見たら分からないので、個人的には遠慮しておきたいかもね、って感じ。
ちなみに今回は手持ちの在庫品。
過去3台ほど5MPを闇に葬った残滓が幾らか残ってたのでそこから引っ張り出してきた部品を流用しておいた。

ちなみに、電圧が高いとどうなるか?
一般的にはライトやウインカー等の灯火類が壊れたり、場合によってデジタルメーターなら不具合を起こす場合も有りえる。
そして、バッテリー自体もダメージを受けて、内部が破損する事によって充電が出来なく成ったり、時に膨張して見た目が結構ヤバい事に成る場合も。

ちょっと分かりにくいかも知れないが、電圧が高すぎたのが原因なのか、実物は結構スリリングな程に膨張している。
爆発するかどうかまでは分からないけれども、これが股下に有ると考えたらちょっと股間がスースーしちゃう。

 

 

5.まとめ

まず大前提として見るべき点は、バッテリーに適正な電力が供給されているか?
エンジン稼働中にバッテリー端子間の電圧が14V有るのにバッテリーが上がるなら、一度充電器で充電する。
それでもだめならバッテリー交換。

エンジン稼働中にバッテリー端子間の電圧が15V以上にも上がるなら、レギュレートレクチファイヤを交換する。
電圧が高い場合には他に原因は無いので、レギュレートレクチファイヤを交換したら正しく充電される。
それでもバッテリーが上がるなら、供給された電圧が高かった為にバッテリーが破損した可能性が有るのでバッテリー交換する。

エンジン稼働中にバッテリー端子間の電圧がエンジン停止時と変わらないなら、バッテリー付近のコネクタを抜いて白い3本のケーブルの交流電圧を測定する。
交流20V以上が出てるならレギュレートレクチファイヤを交換する。
交流電圧が測定されないなら、ハーネスの断線かステーターコイルの故障が考えられる。

 

以上、そんな感じで。

MOTOR CYCLE

Posted by tommy