セカンドインパクト
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近年まれに見る衝撃的な出来事にノックアウトされ、暫く私は立ち上がる事さえ出来なかった。
アマゾンプライムビデオがその発端。
私はこの日、ガレージに置いてるテレビにノートＰＣを接続し、プライムビデオで何か無いかと探してたのだ。
何だかんだと色々とあるのだけども、私の選択したのはエヴァンゲリオン。
特に意味は無い。
なんとなく。
少なくとも、モトクロッサーを整備してる横で流すビデオとしては、ダヴィンチコードよりも正しい選択だろうと思う。
瞬きもせずに集中してみてても何時の間にか置いてけぼりにされるややこしい映画で無いのは確かだろう。
この日ガレージに居たのは、何時も居る人と、そして二十歳やそこらの若者。
まだ義務教育だった頃の少年時代からの顔馴染みの若者。
中古で探してレストアしてやった80ｃｃモトクロッサーを与え、そしてモトクロスに連れて行ってやったのは、もう随分前の事だ。
バイクの乗り方からモトクロスコースの走り方、整備から何から何まで教えてあげて、モトクロスライダーとして独り立ち出来るまでサポートしてやったのは随分前の事。
私もまだ一人では何も出来ない頃から、周囲の人たちに助けられてモトクロスをやってた身なので、一人では何も出来ない若者の助力と成る事にやぶさかではない。
勿論、人によるけれども。
まだバイクはおろか、あんな事やこんな事すらも知らない少年は次第に大きくなり、バイクの免許を取る程に大きくなり、もうすでにあんな事やこんな事すらも知る立派な青年へと成長を遂げた。
今やもう立派な大人だ。
まだ原付免許も取れないようなガキっちょだったのに、今やリッターＳＳに乗り自動車免許も持ち一人でトランポ運転してモトクロスに行くような立派な大人に。
高校を卒業して仕事して、そろそろ結婚も考えてるってんだから立派な大人に成ったもんだ。
月日の流れは早いもんだと。
『エヴァンゲリオン？それもテレビ版か？また懐かしいのを．．．』
そう言いながら入ってきた第三の男。
お菓子持って、特に用事も無いのにやって来た第三の男。
やる事無いので、用事も無いけど良くガレージにやってくる男。
モトクロッサーの整備をしてる若者を尻目に、チキンラーメンどでかいを食べながらエヴァンゲリオンを見るイイ年した人たち。
あーだこーだと言いながら。
あの頃はあれだったとこれだったとどうのこうのと。
すると、ホイールベアリングとタイヤ交換を終えてひと段落した若者が口を開いた。
『エヴァのテレビ版の頃って、ボクはまだ多分生まれて無かったんですよ』
と。
セカンドインパクト
生まれた頃には昔のCBR250RRはすでに生産終了してたと言う、これからCBR250Rに乗ろうとしてる近所の若者（１５歳）の告白に続く第二の衝撃。
CBR250が無かったと言う中学生よりも、エヴァが無かったと言うこの若者の方が有る意味衝撃的だ。
大型二輪免許も、自動車の免許も持ち、高校卒業して仕事してる、そろそろ結婚も考えてるとかってこの若者が生まれた頃はまだエヴァがやってなかったって。
…….
あれ？おかしいなぁ？？
エヴァンゲリオンって、そんなに古かったっけ？？
マジンガーＺとかライディーンならともかく、エヴァってそんなに古かったっけ？
あれ？？
一体、この長い期間私達は何してたんだろう？
未だ、エヴァを見ながらあーだのこーだの言ってる私達は一体。
近年まれに見る衝撃的な出来事にノックアウトされた私達は、立ち上がる事さえ出来なかった。
チキンラーメンどでかい（ニンニク抜き）さえも喉を通らないほどに。
おめでとう
おめでとう