『俺の名を言ってみろ』と言われても『知らんがな』と答えてみる車検の話を再び

そろそろ車検なんだけどなぁー

そろそろ車検なんだけどなぁー

あのー、そろそろ、車検、なんだけどなぁーーー

ちょっとすみませーん、そろそろボクのバイク、車検なんですけどーーーー

 

と、なんかギャーギャー騒いでる人が居るのだけども、だからどうしたと放置してる。
保母さんじゃないんだから、私はそんな構って欲しいくせに構って下さいと言えないような人に構ってやらない。
しかも50も過ぎたオッサンに。
知らんがな。
そんなん知らんがなと。

 

ちなみにこの人、毎回車検は自分でやってる人。
整備と点検を済ませ、陸運に持って行って車検受けて手続き済ませてって、自分でやってる人。

じゃぁ何も問題無いじゃ無いか。
勝手にやりゃ。
必要以上に長生きしてきたんだから、車検くらい自分でどうにかしないさいよと。

と思うものの、最近転職したばかりで平日の休みがどうにも取れないのが大きな問題。
車検と言う、数年毎に必要有るんだか無いんだか何とも言いがたい制度をユーザーに強制しておきながら、土日はやってないから平日来いよと言う大名システム。
まぁ多くの車は民間の検査場で済ませるので、別にわざわざ車を陸運に持ち込む人向けに土日祝祭日に開ける必要は無いのだろうけど。
それにしてもなぁ。
もうちょっとどうにか成らん物なのかと多くの人は思ってる事だろう。
車検の為に有給取るってのもねぇ。

 

そろそろ車検なんだけどなぁー

わざとらしく言ってるこの人。
きっとそう言ってれば誰か助け舟を出してくれるのだろうと期待してるのだろう。
女子中学生のような邪魔臭さだ。

その気持ちを汲んで代わりに行ってあげる事に問題は無い。
実際、今まで平日休みだったこの人に私のバイクを何度も車検に出して貰ったので、平日どころかずっと休んでる私が代わりに車検に持って行ってあげても罰は当たらない。
それくらいしても全然問題は無い。
どうせ暇なんだから。

ただ根本的な大きな問題が一つ。
そのバイクがワルキューレだって事だ。
あのゴールドウイングのエンジン積んだワルキューレなんだよって事。
350kgから有るワルキューレなんか陸運に持っていけないし、あのラインに私がワルキューレを通すなんて絶対にヤダって事だ。
そんな無茶言われたら困ってしまう。
ゼファー1100でギリギリ。
Vmaxでもお断りだ。
あんな黒王号みたいなバイクは無理だ。

 

と言う訳で、素直に近所のホンダ取扱店へ持って行きなさいよ。
と言う事に。
ホンダの看板挙げてる所なら、一見さんの車検でも快く受けてくれるさ。
頑固親父の頑固バイク店じゃ有るまいし、門前払いされる事も無いだろう。

ただ、彼の住んでる所の近隣のホンダのお店とは、過去にちょっとしたトラブルが有ったらしい。
何かブツブツ言ってた。
何が有ったか良く知らないけど。
だからちょっとそこは止めておきたいと。

まぁ別にそこじゃなくても、ウイングやドリームは一杯有るから、好きな所を選べばイイさ。
きっとちゃんとやってくれる筈だよ。
きっと。

と言う訳で、誰かのお勧めの、信頼と実績が高いと言われる、特にホンダ専門ではないバイク屋さんへワルキューレを乗っていったのだ。
事前に電話を入れてバイク屋へと持って行ったのだ。

まぁ、バイクがバイクだけに、事前に電話いれるなり、事前にバイク持って行って見せておくなりした方がイイとは思う。
いきなりヒグマみたいなバイクを持ってこられたらバイク屋さんだって困ってしまうからね。
そんな邪魔なの持って来るな!って怒られる、かも知れない。

 

特に問題なくワルキューレが扱える店に預け、特に問題なく引き受けられ、そして特に問題も無く車検を受けれる事が決まったのだけども、ただ問題は、バイク屋に車検で預けても代車なんか貸してくれないって事だ。
その店のとびっきりの常連さんならまだしも、整備は済ませてオイル交換すら不要なバイクを単に車検に出しに来た名前も知らない通りすがりの人間に、代車なんか貸してくれる親切な店なんか無いって事だ。
つまり、バイクを預けたら公共交通機関で帰れって事だよ。

だがその心配はご無用。
ゴム用品ご無用マイルーラ@蛭田達也って奴だ。
抜かりは無いさ。
なんせそろそろ50歳に手が届きそうなおじさん、もはやちょっとそっとじゃ抜からない男だから何も問題ない。

大丈夫。
ちゃんと考えてるさ。
帰りの電車での帰るルートすらも考慮した店選びしてるさ。

そう必要以上に自慢気に語る抜かりの無い男。
ほう、やるじゃないか。
中々やるじゃないか。
流石はそろそろ50歳に手が届きそうなだけの事は有るね。
伊達に、無駄に、無作為に年を重ねてきただけの事は有るじゃ無いか。
やるじゃないか。

だが....
色んな経験を積み、そして大人に成った彼の事を見直す私の元に、そのワルキューレの彼から電話が入ったのだ。
どうしよう?
って電話が入ったのだ。

『どうしよう??
梅田経由で電車で帰るのに、バトルスーツと鉄板付きのブーツ履いて来たわ。
ジャギみたいな格好してきたわ!』

この人、50歳にそろそろ手が届きそうなのに常にジャギみたいな格好してバイク乗ってる人。
流石に通勤用アドレスはスーツ着てるけれど、道の駅に用事も無いのに行く際もバトルスーツを着て行く人。
何とバトルするのか知らないけれど。

なので、この日も特に何も考えずにジャギみたいな格好で行ったんだろう。
バイクでどこかへ出るときは概ねジャギなのだから。
バイク屋だろうとタコヤキ屋だろうと何処だってジャギってるのだから。
ただ、その格好で焼肉屋に行くのと、日曜日の昼間に梅田で電車乗るのとは訳が違う。
ん、ちょっと訳が違うな。

 

ん、まぁ大丈夫。
親戚の結婚式に行く訳じゃ無いんだから、それで帰ってきなさい。

と、日曜日の昼下がりに梅田で電車に乗るジャギみたいな格好したそろそろ50歳に手が届きそうなおじさんの姿を想像しながら、私は静かに電話を切ったのだった。
知らんがな。
と、思いながら。

 

と、そんな事が有った数年も前の事。
その記憶が蘇るかのように、また私はこの人から熱い視線を感じたのだ。
そろそろ車検なんだけどなぁー
って、視線を。

.....知らんがな。

MOTOR CYCLE

Posted by tommy