マッピング1-前編

セッティングなんてサグだけ出しときゃ十分だ

その昔、私がまだモトクロスを始めたばかりの頃に言われた台詞。
もう随分と前の事。
まだキン肉マンがおならで空を飛んでたような昔の事。

 

サグ
ロードレーサーでは-1Gって呼び方される、プリロードの基本的な考え方。
どうやるか、ってのはここでは割愛するけれど、セッティングの第一歩として、スポーツ走行するならとても重要な一つの基準。
近所のスーパーにネギ買いに行くだけならどうって事も無いんだけど、ちょっと血圧上げて走るなら重要なポイントだ。

 

実際には、足回りのセッティングはスプリングのプリロード=要するにバネだけで決まる訳では無いのだけど、昨日や今日にバイク乗り始めたばかりの人に対しては、標準セッティングで走り込めってのは非常に正しいアドバイスだとは言える。
標準セッティングで飛べない人間が、ダンパーを1クリック変えただけでいきなり3連が飛べたりしないものね。
ダンパーや油面や突き出しは重要だけど、もっと重要な事は有るんだよ、って話だ。
それを意味するのが冒頭の台詞。

セッティングなんてサグだけ出しときゃ十分だ

もっとも、この台詞を発してた人は本当に自分のバイクでもサグ出ししかしない人だったので、特に深い意味や若者を正しく導くような意図が有った訳では無くて、セッティングはあんまり気にしない雑な人だったのだと、その数年後に私はふとそんな事を思うのだった。
ああ、単に大雑把な人だったってだけか、と。

 

今やパソコンに繋いで幾つかクリックするだけで吸気と点火のセッティングが出来る時代。
マフラー変えたから特に根拠は無いけどメインジェットを2番手大きくする、なんて雑な考え方と面倒な作業は存在しない世界だ。

さらにはハンドルやメーターパネルをポチポチするだけでエンジンの特性まで簡単に変えれる時代。
その操作を覚えるだけで中々に大変だったりもするのだけど。
時に、コンフォートモードは単にスロットルバルブが全開にならないだけ、なんて場合も有るみたいだけど、その昔のキャブのジェットだけでセッティングしてた頃とは比べ物に成らないくらいに自由度と精度が高まっている。
FCRでピークパワーを出すセッティングは出せるにしても、ピークパワーはそこそこにマイルドな特性を出す、なんてのは非常に難しいからね。
単にパワーの出ないセッティングは随分と違った話として、ジェットのセッティングだけでFCRをCVKみたいな特性にさせるのは非常に難しいって話だ。
ってか、それならCVK付けとけって話だけど。

 

一方で足回り。
極一部のゴージャスなバイクはこれまたメーターパネルをポチポチしたらダンパーやイニシャル調整まで出来るのだけど、その極一部を除く多くのバイクではフックレンチを使ってのスプリングのイニシャル(プリロード)調整が今も一般的。
サグ出しは工具使うのが今も、そしてこれからも普通。
残念ながら、乗り出し価格200万円を超えるバイクでしか、これからもメーターパネルをポチポチしてセッティング出来るバイクは出ないと思うな。
少なくとも私にはあんまり縁は無さそうだ。

従って、リッタースーパースポーツのハイエンドグレードや、アフリカツインの30万円高いバージョン等を除く、電子制御されてない普通のバイクは、今もレンチ片手にセッティングしなきゃ成らない。
自分のバイクなら一度合わせておけばそんなに変更する事も無いので、買った時に合わせてやれば時々スプリングのヘタりをチェックする程度で事は足りる。
毎日触る必要なんて無い。
毎日体重が20kgも増減する人なら別だけど、まぁ滅多にそんな人は居ないだろうしね。
昔はキン肉マンもピッコロさんも良く巨大化したけど、後にはそんな事も無くなったし。

したがって、ツーリングで荷物を積むとか、タンデムするとかって場合を除いてそうそう触らない所なのだが、ちょっと他人のバイクに乗ってみる場合はその限りでは無い。
バイクを貸し借りするのは通常はあんまり好ましい事では無く、私も無闇に貸し借りはしないけれど、とは言えど非常に親密な相手とは割と無闇に貸し借りはしてる。
要するに、相手による、貸し借りするバイクにもよるって事だ。

他人のバイクで普通はそんなに気合入れまくって走ったりはしないんだけど、モトクロッサーは別。
モトクロスコースをモトクロッサーで走る以上、そこには気合入れて走る以外の選択肢なんて無い。
ゆっくりまったり、なんて選択肢は残念ながら存在しない。
ってか、コースでスロー走行してたら危ない。

だから必然的に気合入れて走る事に成るのだけど、サグも出してないモトクロッサーって本当に乗り難い。
そもそもモトクロッサーなんて乗り難いバイクで、しかもわざわざ走り難いデコボコの土の上を走るんだから乗り難い事はこの上無い。
轍だらけで真っ直ぐすら走らないし。

だからそもそもが乗り難いバイクなのだけど、基本的なセッティングさえ出てなければさらに輪を掛けて乗り難い。
かと言って、ちょっと乗るのに他人のバイクのセッティングを勝手に変えるってのも問題が有る訳だ。
ちょっと借りる他人のバイクのスプリングを調整し直すか?って言われたら、それは流石にちょっとね。
ってか面倒臭い。
すっごい面倒臭い。
中々に悩ましいもんだ。
これが四輪車ならそんな問題は無いんだろうけどね。
体重65kgの人が所有する車に体重45kgの人が乗っても、別にどうって事も無い話だから。

 

問題はその影響。
体重65kgの人に合わせたバイクを、体重45kgの人が借りて乗ると、どれくらいの影響が有るかって点。
硬いのは解ってる。
ギンギラギンにカッチカチな事くらいは承知してる。
基本的なセッティングさえ出てないバイクなんてダメな事くらい十分に理解してる。
問題は、その硬い足が、モトクロスコースを走る上でどの程度悪影響が有るかって事。
それは走ってみなきゃ解らない。

ちょっとダメなのか、すっごいダメなのか、話に成らないくらいに全然ダメなのか、それが意外と割とどうって事無いのか。
それは、走ってみなきゃ解らないのだ。
ガタガタでボコボコの道を気合入れてスロットル開けてやらなきゃ。
結局、やってみなきゃ解らない。
セッティング不明なバイクでジャンプにも挑まなきゃ成らない。
変な声出さないように注意だ。

 

そんな、モトクロスコースで他人のバイクに乗った、なんて事はここ数年とんとご無沙汰。
そもそもモトクロスコース自体、ここ何年も行ってない。
だけど、セッティングの不明なマシンに乗って、ちょっとドキドキした、って事は有る。

 

この長い長い前振りを経て、そんな本題へと続く。

 

MOTOR CYCLE

Posted by tommy