E-Fuelっていいフューエルなのか?

未来のバイクや自動車は、何をエネルギーにして走るのだろうか?

一番簡単なのは電気で、世界は確実にそっちの方へと進んでいるのだが、話はそうそう簡単でも無いので皆様頭を悩ませてる訳だ。
電気電気と言っても、そう話は簡単じゃ無いよねと。

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私は、割と多くの場合に尼崎のコストコでガソリンを入れているのだが、ここ最近は割と落ち着いたものの、昨年のガソリン価格高騰期には、時に30分くらい待たされる場合も珍しく無かった。
ノズルを差して、ジョンジョロジョンジョロ入れるだけのガソリンであれだけ時間が掛かるのだから、あの避難民のようなガソリン待ちの大群が全て電気自動車だったりしたら気が遠く成ってしまう。
幾ら急速充電と言っても、一体どれだけ時間が掛かるのやら。

充電施設の問題、充電時間の問題、戸建て住宅以外の家庭での充電の問題、発電所や発電量の不足の問題、電気代の高騰の問題…
と、何かと問題が多いのが電気自動車。
たま電気自動車の頃からその辺りの問題解決に動いていたらば、流石に70年も本気で取り組んでたらすでに解決してる事だったろうとは思うけれども、この10年や20年でいきなり解決させる、ってのは中々に難しい。

 

色々と問題は有れども電気がこれからの主流では有る事に違いは無いとは思うのだが、それでも電気以外にも幾つかの選択肢が用意されている。
燃料電池だったり水素エンジンだったりのそうそう実現化するのは難しいものから、ガソリンにエタノールを混ぜると言う、超現実的なモノまで。
E5と呼ばれるガソリンに5%のエタノールを混合した燃料から始まり、現在は主流と成りつつあるE10、さらにはアメリカでは一部でE85=つまりエタノール85%の燃料も発売されている。

それとは別のアプローチとして、CO2と水素を合成して燃料を作ってやろうって計画も有る。
それがe-fuelと呼ばれる合成燃料。
CO2とH2を還元(逆シフト反応)させてCOを得て、さらにH2とFT合成させてガソリンや軽油、灯油や重油を得る技術。

技術的には特に新しい訳では無く、基本的な技術の水素と一酸化炭素から液化炭化水素燃料を得るFT合成は1920年代に開発され、実際に第二次大戦中はドイツが兵器用燃料の生産を行っていた。
同盟国の日本も一応は行ってたのだけど、残念ながら成果はいまいちだったみたい。

現在、世界各地で開発が進んでおり、日本ではエネオス、スペインはお馴染みのレプソルが頑張っている。
でもヨーロッパで一番本気で取り組んでるのはやっぱりドイツ。
Westküste100=ドイツのFH Westküste University of Applied Sciences=ウエストコースト応用科学大学が中心に、洋上風力発電会社などが組んだグループがその中の一つ。

もう一つが、ドイツのシーメンスとポルシェがアメリカのエクソンモービルと組んで、南米のチリで行うHaru Oni プロジェクト。
なんでチリか、ってのは、きっと風が強いんだろうね。
先っちょだから。
なんで?ってのは後述。
その母体、と言うのか大本はアメリカのHIF。
チリのHaru Oni プロジェクトは、その実証プラントとの位置づけ。
本格的なe-fuel生産はヒューストンで行う予定。

ちなみにHIFの生産目標は7億6,000万リットル。
経済産業省 資源エネルギー庁の資料でのエネオスのe-fuel生産量は1,700万リットルなので、正直な所アメリカ様の莫大な規模に比べると誤差程度の量に過ぎなかったりする。
経済産業省は2030年までに大規模製造プロセスの実証を目指しているらしいけれど、アメリカ様と比べるとスマンかったとしか言いようは無い規模に過ぎない。

そのコストも莫大で約60億ドル=7,800億円を投資するらしい。
原子力発電所が1機で3,000億円程度とされてるので、約2機分をちょい超える額に相当する。
もはやそれが安いのか高いのかは良く解らないレベルなのだけど、やっぱりどう考えても本気でやってんだな、って事だけは解る。
電気だけじゃない、バイオエタノールだけでも無い。
アメリカは、色んな事をかなり本気のテンションで考えてる。
未だ頑ななまでにOHVのエンジンを作り続けてるのもアメリカの姿だが、先を見据えて色んな事を考えてるのもまたアメリカの姿だ。

 

このe-fuelは技術的にはすでに基本的部分では確立しているのだが、問題の一つは水素を得る為のコストと、その際に使用するエネルギーの由来の問題。
大義名分はCO2を減らす事なので、特に水素を得るプロセスでのエネルギーの由来が問題と成る。
風力発電企業が欠かせないのはその為で有り、大陸の先っちょの風が強い所で作るのが有利なのもそれが理由。
単に政治的な問題等で液体合成燃料を得るのが目的なら釧路で掘った石炭で火力発電してやれば良いのだけど、そう言う訳にも行かないのが合成ガソリンの話の根幹。
e-fuelは環境にいいフューエルでなければ成らないので、化石燃料をガンガン燃やして作ったらコスト面以外にも意味は無いのだ。

個人のご家庭レベルでは太陽光発電が大いに普及しているが、日本では製品のライフサイクル全体を考えて産業用に再生可能エネルギーのみを使うって考え方はいまいち普及してないので、e-fuelを製造するなら風力か太陽光発電等しか使っちゃダメだよと言われたら中々に困ってしまう。
従って、既存の新たなCO2が発生するエネルギーを使用するなら、その分を何処かで相殺する必要が有る。
つまりは、余計に要らん金が掛かるって事だ。

とても良く世界の事を考えている人は、今着ているシャツは原料の綿花から紡績~製造に至るまでのエネルギーはどれくらいCO2を排出してるのか?などと考えたりするのだけど、日本では少数派なんじゃ無いかな。
考えたりするだけならまだしも抗議されたりするので中々に大変な世の中だ。

いやいや、CO2うんぬん言うんだったら用事も無いのに戦闘機飛ばすなよ、って言いたい人も居るかも知れないけれど、それはそれでこれはこれだと真顔で言い切れるのが大人なので、そんな小学6年生みたいな正論は誰も聞いちゃくれない。
スマンかったな。

この先の自動車は電気が中心なのは揺るぎないラインでは有るのだろうけど、それでもトヨタも言ってるようにそれだけじゃない、って実は皆様考えているみたい。
実際、電気自動車の普及率が80%を越えたと言われるフィンランドもこのe-fuelの研究を行っているので、実は次世代内燃機関の事もちゃんと考えている。
電気だけじゃないんだよ、って事を。
今日の都合で魂を売った人々の決定などは、明日にも崩れるものさ

 

なお、問題はコスト。
コストを考えなければ、高糖度マスクメロンからエタノールを作る夕張メロン燃料も、ベタベタしてる使用済み抱き枕を発酵させてクールジャパンフューエルを作る事も可能なのだが、コスト的に見合わないのでそんな無意味な事は誰もしない。
コストを度外視したら何だって出来るんだけど、そう言う訳にも行かないのでコストは大事。
エコノミー問題がクリアされたらエコロジー問題のクリアにも繋がるのだから、経済性ってのはとっても大事なんだ。

バイオ燃料の技術で言えば、すでに10年前に藻類のオーランチオキトリウムを使ったバイオ燃料生成実験は成功し、実際にその藻類が作った燃料を混合した自動車の走行テストもクリアしている。
のだけど、結局はコストが見合わないので中止と成った。
現在も下水処理場を使ってどうにか成らんのかと研究は続けているけれども、コストの壁は未だやはり高い。
生活排水を餌に藻からオイルを作る夢のような技術は既に確立しているが、それを経済的に行う事に高い高いカベが存在してる。
コストは、とっても、大事なんだ。
揮発油税を大幅に上げてバイオ燃料の税金を無くせばその辺は無理やりクリアする事は出来るのだろうけど、日本でそれをやるのはちょっと根性要るか。
ただ、このオイルを生成する藻を乾燥させたらそのまま火力発電のペレットに使えるらしいので、そっち方面にシフトした方が良いかもね。

 

材料調達から製造までの全てを輸入で賄えば300円/L
水素を輸入して国内で生産したら350円/L
全部日本国内で製造したら700円/L

2022年段階ではe-fuelはこんな試算に成ってる。
高い、高いよ、スレッガーさん。

最安値で調達したとしても、現在のハイオク価格の約2倍程度。
しかも出力は若干落ちるとされてるので、実燃費は現在より幾らか悪く成りそう。
世間の皆様が現在の2倍、あるいは3倍以上もの燃料費を平気な顔して負担できるなら、この素晴らしい計画の賛同者に成れるのだが、10円安いガソリンスタンドに殺到する現実を考えると中々に難しいのが正直な所なのかな。
私だってヤダ。

ええい、無い袖は振れない事が、これほど言ってもまだ解らんのか!

 

現状ではどう見ても既存のガソリンを使った普通の車、或いはハイブリッドが優れたシステムなんだけど、未来永劫地面から掘った油を燃やして走るような事はこの世界は許しちゃくれないらしいので、どう転んでもあんまり良く無さそうな未来に突入するのは避けれないみたい。
ブツブツ言ってもどうしようも無いので、より良い未来へと進んでくれる事を祈るばかりだ。

核融合が完成して、地面から給電出来るように成れば万事解決なんだけどね。
多分、そんな頃には死んでるな、我々は。
く....

MOTOR CYCLE

Posted by tommy